どこよりも分かりやすく説明!介護保険のショートステイの内容や費用・特徴について
介護保険サービスの中で筆頭ともいえる人気のサービス、それがショートステイ(短期入所)です。
介護のことを知りたい読者の皆様は、一度は聞いたことのあるサービスかと思います。
一時的に施設に入所し介護を受けることができるサービスですが、実は出来ることと出来ないことがあり、それをしっかり把握しておかないと思わぬトラブルや予定変更に見舞われることがあります。
そこで今回は、このショートステイの仕組みについて詳しくご紹介して行きたいと思います。
介護保険におけるショートステイの概要
ショートステイとは、正式名称を「短期入所生活介護」と言います。
介護施設に一定期間の間入所して、入浴・食事・排泄といった介護や機能訓練・レクリエーション等を受けるサービスで、利用できる期間は1カ月で最長30日となっています。
また、トータルで利用日数の制限があり、要介護認定期間内の日数の半分まで(つまり、要介護認定期間が6か月の場合は、半数の90日まで)という決まりもあります。
短期入所専用の施設もありますが、特別養護老人ホーム等の施設に併設されている場合も多いです。
似たようなサービスに「短期入所療養介護」という看護や病状管理に重点をおいたものがあります。
費用は短期入所生活介護より高く、こちらもショートステイと呼ばれることがあるため間違わないように注意が必要です。
対象となる利用者
要支援1以上の認定を受けていれば利用可能です。
ただし、要支援1・2の方が利用するのは「“介護予防”短期入所生活介護」という名称で、細かく言えば別のサービスになるため、事業所によっては対応していないところもあります。
その対象となるのは、例えば要介護者が施設入所を考えていて施設に慣れたいと思っている場合や、病院からの退院後施設入所するまでのつなぎの場合です。
また、介護者が入院や出張・私的理由などにより数日間家を空けなくてはならなくなった場合、介護者がインフルエンザなどの感染性疾患にかかって要介護者にも伝染する恐れが生じた場合、介護疲れのリフレッシュを目的としている場合、ストレスがたまっているので少し介護から離れたいと考えている場合等が対象となります。
サービスの内容
通常の入所施設と同様、入浴・食事・排泄などの日常生活上必要な支援、機能訓練、レクリエーションなどのサービスを総合的に受けることができます。
利用のための通退所に関しては、必要に応じて送迎してもらうことができます。
デイサービスはサービス基本料内に送迎料金が含まれていますが、ショートステイの場合は送迎“加算”という仕組みですので、家族が送迎できる場合はその分費用を抑えることができます。
連続した利用は30日までとなっているため、それを超えると全額10割負担となるか一旦自宅に帰ることになります。
また、利用期間中に定期受診の予定等がある場合は施設側は対応しないので、家族から受診に連れて行ってもらうことになります。
体調が急に悪くなったり、利用中に転倒したりして予定外の受診が必要になった場合は施設によって対応が違います。
あくまですべて受診はご家族対応である場合・施設側に過失がある場合の受診のみ施設で対応する場合等ありますので契約の時に確認が必要です。
費用
ショートステイにかかる費用は、主にサービス基本料金+各種加算サービス+居室代+食費です。
居室代や食費については施設ごとに違いますが、負担限度額認定制度により所得等に応じた減免を受けることができます。
主となるサービス基本料金は下記表の通りです。
(例 併設型の場合)
従来型個室 | 従来型多床室 | ユニット型個室 ユニット型的多床室 | |
---|---|---|---|
要支援1 | 437円 | 437円 | 512円 |
要支援2 | 543円 | 543円 | 636円 |
要介護1 | 584円 | 584円 | 682円 |
要介護2 | 652円 | 652円 | 749円 |
要介護3 | 722円 | 722円 | 822円 |
要介護4 | 790円 | 790円 | 889円 |
要介護5 | 856円 | 856円 | 956円 |
※金額の単位は自己負担割合1割の場合の1日当たりの費用
また、施設によってサービス提供体制や追加サービスを利用する場合の加算があります。
(例)
- サービス提供体制強化加算 18円/日
- 認知症専門ケア加算 4円/日
- 個別機能訓練加算 56円/日
- 送迎加算 184円/回
- 若年性認知症利用者受入加算 120円/日
- 看護体制加算 23円/日
- 医療連携強化加算 58円/日
- 介護職員処遇改善加算 所定単位数×0.083% 等
介護保険におけるショートステイのメリット&デメリット
続いて、ショートステイのメリットやデメリットを確認していきましょう。
施設に一時的に入居して介護を受けるという観点から、利用中は完全にお任せと思うかもしれませんが、実は思いがけないデメリットもあります。
ショートステイのメリット
いくら普段介護をしてくれるのは家族とはいえ、24時間365日一緒にいれば当然息も詰まるというものです。
たまには自宅を離れて気分を変えてみるのもよいでしょう。
ショートステイでは、ただ身体介護を受けるだけではありません。
各種アクティビティプログラムや季節の行事なども定期的に開催されます。
筆者が勤務している施設は併設型ですが、海沿いの温泉地にあるため、入浴は温泉が出ます。
湯治に来る感覚で利用している方も少なくありません。
要介護者もストレスがたまるでしょうが、介護している家族も当然ながらストレスがたまります。
たまには自分の時間を持ちたいと考える方も多いでしょう。
定期的に介護から離れ、心身共に疲労回復やリフレッシュを図るということも長い介護生活を支える上では非常に重要なポイントです。
ショートステイは特別養護老人ホームに併設されている場合も多いです。介護依存度が上がり、ゆくゆくは施設入所を…と考えている場合はその施設の短期入所を利用すると事前に生活のイメージをつかむことができます。
また、定期的に当該施設のショートステイを利用することで施設側としても介護環境の理解が深まり、入所者を決める入所判定会議にかかったときに有利に働くという側面もあります。
介護者だって人間です。
今は大丈夫でも、ある日突然ギックリ腰になって動けなくなったり、インフルエンザや感染性胃腸炎などによって介護が困難になることもあるでしょう。
そんな時のために事前に契約し、一泊二日から利用して少し慣れておけば、いざ何かあったときに非常に頼りになります。
ショートステイのデメリット
ショートステイは非常に人気が高いサービスです。
また、単独型の場合はベッド数も多いですが、併設型の場合は受け入れ可能なベッド数も限られるため、先々を見越した予約を取ることが大切です。
私が勤務している併設型のショートステイは、田舎の施設ですが常時キャンセル待ちが発生している状態です。
特に利用して間もない場合や、利用者本人があまり自宅から離れたくないと考えていることもあります。
認知症の方の場合は、不慣れな環境に戸惑って混乱し、不眠になったり帰宅願望から徘徊に繋がったり、介護員や他利用者に対し暴力行為をするなど自宅にいるときとは異なる症状が出たり、増悪してしまうこともあるでしょう。
介護者側の事情によりショートステイを利用する場合も、利用者本人の負担感には十分に配慮する必要があります。
“ロングショート”、“ミドルショート”と俗称する変な日本語が発生するのがこのショートステイです。
冒頭の概要説明で触れたとおり、“ショート”ステイですので長期の利用はできません。月30日以内の決まりだけでなく、要介護認定期間のうち半分以下という決まりもあります。
後々になって利用可能日数が足りなくなった…とならないよう、担当のケアマネジャーに相談しながら綿密な計画立てが必要になります。
ショートステイを利用している間、本人の自立した生活をおこなう上で必要な福祉用具(車椅子や電動ベッド等)は、施設側で用意するのが基本的な決まりになっています。
そのため、自治体によってはまとまった期間ショートステイを利用する際はレンタルしている福祉用具を一時返却するように指導している所もあります。
特に車椅子は、自分の足の代わりになるモノ。日頃使い慣れた車椅子ではなく、施設の車椅子に乗らなければならない場合もあるかもしれません。
利用中の急変により受診が必要になったり、救急搬送しなければならないという事態に陥ることもあるでしょう。
ショートステイは体調が安定している要介護者が対象ですので、それに耐えられなくなった場合は受診や帰宅を求められる場合があります。
仮にショートステイに預けて旅行に行っている場合であってもその対応は変わりません。
インフルエンザ等により伝染する病気になってしまったら尚更です。
そのことは利用開始前に想定しておきましょう。
ショートステイの上手な選び方
百聞は一見に如かず。ショートステイの利用を検討している場合は、何よりも利用者本人と一緒に当該施設を見学するとよいでしょう。
施設の雰囲気や他利用者の表情を見ることで、自分に合うかどうか肌で感じることができるでしょう。
見学する上でのチェックポイントは、介護職員がどのように利用者とコミュニケーションを取っているか、言葉遣いはどうか、食事やレクリエーションはどのようなものが提供されているか、嗜好品の持ち込みは可能か等です。
これはプロの観点になりますが、各種加算の中には算定のために人員配置の要件を満たす必要がある加算があります。
例えばサービス提供体制強化加算や看護体制加算、医療連携強化加算等です。
これらを算定している事業所は法定上の最低限基準+αの配置をしていることになるので、より充実したサービスを受けることができるともいえるでしょう。
また、介護職員処遇改善加算はⅠ~Ⅳまでありますが、数字が少ないほど、より介護職員の育成に力を入れている事業所になります。
介護サービスの質の指標として多少参考になるでしょう。
ショートステイを利用するまでの流れ
すでに要介護認定を受けている方の場合は、まず担当のケアマネジャーさんにその理由を説明・相談しましょう。
それを元に、担当のケアマネジャーさんは居宅サービス計画を作成します。
その流れの中で、ケアマネジャーさんに助言を求めつつ、利用したい事業所を選定します。
居宅サービス計画の原案ができ、利用したい事業所も決まった時点でサービス担当者会議が開かれます。
そこで居宅サービス計画が完成となり、ショートステイの利用がOKという段取りになります。
その後、選定した施設との利用契約を結びます。
それが終わると、当該施設から利用者の心身の状況に関する聞き取りや面談を行い、ケアマネジャーさんも含めた利用スケジュールの相談が行われます。
それを元にショートステイの利用計画書を作成し、それに同意することで実際に利用開始となります。
※ただし、ショートステイの利用計画作成が事業所に義務付けられているのは概ね4日以上連続して利用する場合です。
例えば一泊二日の利用の場合は利用計画書を作成せず、直ちに利用が開始となる場合もあります。
まとめ
ショートステイは、利用者や介護者の気分転換・介護負担軽減(レスパイト)のために主に利用されるサービスです。
非常に人気があり、予約が取りづらくなっている反面、利用可能日数に制限があったり、ショートステイの利用回数が増えることにより単位数を圧迫することがあります。
それにより自宅にいる際のヘルパーや福祉用具レンタルなどの他サービス利用に影響を与える場合もあるため、ケアマネジャーさんによく相談して計画的に利用することがポイントです。
また、利用に当たっては利用者自身の心理的負担感にも配慮する必要があり、緊急時や利用中に体調が悪くなった時は利用を中止したり受診させたりと対応を求められる場合も少なくないので、それを念頭に置くことが重要です。
様々注意点はありますが、ゴールの見えない介護生活を過ごすうえで、非常に頼りになるのは間違いありません。
ぜひ、有効に活用していきたいですね。