皆さんは普段の仕事でどのようなレクリエーションを行っているでしょうか?
グループホームにおけるレクリエーションの場合、重要なのが認知症に対するアプローチも考慮した内容を行う必要があるという点です。
理解力が低下している方でもルールが分かりやすく、なおかつ脳や体を動かすことによって刺激を与える活動をすることが大切です。
その一方で、身体的に衰えている方も少なくありません。
そこで今回は、認知症で車椅子の方でもできるレクリエーションについてご紹介していきます。
レクリエーションが高齢者に与える効果
レクリエーションは、
- 気分転換を図り、生活に楽しみやはりあいを与える
- 心身の機能維持、向上、回復を図る
- 他者と一緒に活動することによって、コミュニケーションの機会となる
通常このような効果があると言われています。
また、認知症を抱える方に対しても効果があると言われています。
認知症の人は自信の症状を自覚し、不安な思いを常日頃から抱いています。
また、出来ないことが徐々に増えていくことによって悲しい気持ちになり、自身を失っている方も少なくありません。
レクリエーションはそうした否定的な感情に働きかけることで、自分にはまだまだできることがいっぱいあるんだという気持ちを思い出してもらい、自信を取り戻すことができます。
さらに言えば、よくある機能訓練やトレーニングだと、テストや気分の乗らない運動をさせられているというマイナスな気持ちにより参加を拒否される場合があります。
それとは違い、ゲーム感覚で行うことによって楽しい気持ちで取り組むことができます。
認知症の人は自身の症状を知られたくない、迷惑をかけたくないという気持ちから、人付き合いも徐々に希薄になりがちです。
そんな時でも、周囲の方と一緒にゲーム等に取り組むことによって、自然と人間関係を築くきっかけとなるのです。
手先を使うレクリエーション
それでは、3つのテーマに沿ってレクリエーションを紹介していきましょう。
まずは手先を使うレクリエーションです。手先を使ったレクリーションは、脳が活性化して認知症の要望や進行を抑える効果があると言われています。
折り紙
折り紙は、昔ながらの遊びで高齢者にとってはなじみ深いものです。
例えば、鶴の折り方であれば認知症の方でも自然と出来る方が多いでしょう。
指先や指の腹・親指の付け根などを器用に使う必要があるため、脳にとってはかなりの刺激になります。
角や辺を重ね合わせる注意力や、平面と立体の空間認識能力も鍛えられ、
脳に良い刺激を与えることに繋がり、認知症にも効果があるとされています。
折り紙を折りながら昔の思い出に花が咲くなどし、回想療法的な効果も期待されます。
また、短い時間で成果物が明らかであるため、モチベーションを維持しやすいという特徴もあります。
貼り絵
個人的に行うのもよいですが、お勧めは大きい作品を複数の参加者で一緒に行うことです。
下絵に対しどの色の紙をどのくらい使うか、ちぎる大きさはどうしたら効率的か?
という計画から始まり、紙をちぎり、のりを塗り、貼り付ける…という複雑な動作を、他の参加者と相談し協調を維持しつつ実行します。
よく考えると、非常に複雑で高度な動作を行っていることが分かりますよね。
手先の運動による脳の刺激だけでなく、他者とのコミュニケーションをとることができるのも強みになるレクリエーションです。
塗り絵
塗り絵は、まず図柄を見たときにどんな絵なのかを脳にインプット、自分の記憶にある形や色と照らし合わせて完成図をアウトプットします。
そのイメージを脳内に短期記憶として維持しつつ、使用する色を選んで塗っていくという動作になります。
また、集中して作業することによって雑念から解放され、ストレス解消にもつながる効果があると言われています。
集中して無心で取り組むことは瞑想のような状態になるため、自然と呼吸が整うことによって自律神経のバランスを整えるという効果も期待されています。
本屋に行けばいろいろな本が売られていますし、ネットで検索すると、無料の素材もたくさん出てきます。
それらを活用するのもよいでしょう。
頭を使い脳を刺激するレクリエーション
次は、特に脳に働きかけて活性化させ、認知症の進行を予防するレクリエーションを3つご紹介します。
パズル
パズルには、脳が色の判別・図形の認識・記憶・知覚統合力・空間把握力など活発に脳が動く効果があると言われています。
また、パズルを行うと脳に刺激や負荷がかかることにより疲労感を感じます。
これが心理的にプラスに働き、脳の体操が出来ていると実感することによって充実感を得ることにもつながります。
利用者さんの状況によってピース数が違うものを用意して難易度を調整するとよいでしょう。
ネット上には画像を提示することによってオリジナルパズルを作ってくれるサービスもありました。
お金をかけたくない場合は、写真を厚紙に印刷して細かく切ることによってピースを作るという手作りパズルもあります。
こういったアイディアを上手に活用しましょう。
しりとり
誰でもルールを知っている定番の言葉遊びゲーム。
前に言った人の言葉を覚え、その語尾から次の言葉に繋がる単語を自身の記憶から思い起こして言葉にする。
この動作が脳の刺激になります。認知症が軽度の方が多ければ、「動物は禁止」「ある単語は入れてはいけない」などの縛りルールがあれば盛り上がります。
但し、過度なルールは逆に難易度が上がりすぎてしまって面白くなくなるので注意です。
基本的には既出の単語を言ったり名詞でないものはNGですが、そこのルール設定や判定は職員側で加減しましょう。
ルールは大きな紙に書いて見えるようにし、確認しながらできるとよいです。
ダレないよう時間を区切って行いましょう。
くもん療法
脳のトレーニングとして漢字ドリルや計算ドリルが一時期流行しましたよね。
それと同様、「くもん」が提唱しているくもん療法があります。
簡単な計算(足し算、引き算)を素早く繰り返し解いたり、文章を音読することによって脳細胞が刺激され、脳全体が活性化した状態になります。
また、採点をして褒められるという承認動作により、気分が向上し、他者とのコミュニケーションによって脳の活性化にも効果があると言われています。
ただ計算や音読を単調に行うのではなく、このような科学的根拠を認知症予防の訓練に取り入れて一連のプログラムとしてシステマチックに組み合わせたのが「くもん療法・脳の健康教室」です。
コストはかかりますが、公式サイト(https://www.kumon-lt.co.jp/)から導入の相談ができますので、興味がある方は検討してみてください。
リラックスできるレクリエーション
最後に、リラックス効果を主な目的として取り入れるレクリエーションを3つご紹介します。
音楽
昔の歌を思い出す・音楽を聴く・歌う・楽器を鳴らすことによって、脳や体が動き、発声が促されます。
認知症状によって感情の乏しい方や自発性の低い方であっても、自然と笑顔になります。
音楽は誰もが生活に根付いていて、各々の思い出が当時の音楽と共に思い起こされるという方も多いでしょう。そういった回想療法的な効果もあります。
認知症の進行の予防としては、歌いながら楽器を鳴らすなど、2つの動作を同時に行うとさらに効果的と言われています。
フットケア
足の爪を切ったり、保湿クリームを塗ったり、マッサージをしたりすることを言います。
足浴もよいでしょう。
これによって足の清潔を保ち、皮膚トラブルの予防やリラックス効果をもたらします。
足の色や浮腫み具合、皮膚・爪の状態を確認しながら行うことが大切です。
普段あまり利用者さんの足を見ることはないと思いますので、異常発見の機会にもなります。
巻き爪や白癬爪を切ることは医療行為になるため介護員はできません。無理のないようにしましょう。
アロママッサージ
アロマオイルを活用して行われるマッサージです。
香りの情報は嗅覚をつかさどる「嗅神経」を通って脳の一部に伝えられます。
香りの情報が伝わる箇所には、記憶をつかさどる「海馬」という部位があり、嗅覚を刺激することで間接的に海馬が刺激され、記憶力が活性化すると言われています。
また、いい匂いの中でゆったりとした音楽を聴きながらマッサージを受けることは、リラックス効果が非常に大きいです。
ただ、経験のない介護員が行うには難易度が高く、また様々な道具を用意しなければならず大がかりなものになる場合もあります。
地域の社会資源として高齢者施設を訪問しアロママッサージを行う団体がないか、ボランティアセンターや社会福祉協議会・地域包括支援センター等に問い合わせて見るとよいでしょう。
まとめ
グループホームに入居する高齢者に対するレクリエーションのポイントは、身体機能の衰えと認知機能の衰え両面に配慮した活動を考える必要があるという点です。
あまり楽しくなると急に車椅子から立ち上がろうとしたり、上手くいかずに怒りだして突発的な行動をとったりすることもあるかもしれません。
そういったトラブルに対する危険予測も行いつつ、一緒に楽しむという姿勢でレクリエーションを提供すると、充実した活動になるでしょう。