グループホームは、正式名称を「認知症対応型共同生活介護」といい、認知症の方が少人数のユニットで暮らす地域密着型サービスに分類される入所系のサービスです。
この概要については浸透してきたように思いますが、まだまだその詳細についてはご存知ない方が多いでしょう。
他の入所系の施設との違いを説明できる方も、そう多くはいないかもしれません。
そこで今回は、このグループホームの特徴やメリットデメリット、費用などについて解説していきます。
グループホームの特徴や入所の条件
まずは、グループホームの特徴や入所要件について確認しましょう。
認知症対応に特化した施設である点や、地域密着型サービス共通の特徴である地域に根ざしたケアが根底にあるサービスです。
グループホームの特徴
グループホームは、その名の通り認知症専門の入所系施設です。
認知症を患っている高齢者は、環境変化への適応や他者とのコミュニケーションがうまくできない場合が多く、顔なじみの関係性を構築できるユニット型での生活環境が適していると言われています。
他サービスは都道府県の管理監督に置かれていますが、グループホームは市区町村が管理指導を行っており、地域ごとの実情に応じサービス提供ができることも特徴です。
また、一口に認知症と言っても様々な原因や症状があります。
その方の常況に応じた認知症ケアを受けることで、安心・安全に生活できることを目的としています。
入浴・食事・排泄などの基本的な身体介護勿論、機能訓練や看取りケアなどを受けることができます。
他施設と大きく違う点の一つとして、入居者と職員が協力して自炊しながら生活している事業所が多いという点も挙げられるでしょう。
グループホームの入所の条件
グループホームに入居できる条件は、下記の4つです。
- 要支援2または要介護1以上の要介護認定を受けている方
- 医師により、認知症の診断を受けている方
- 入居する施設と同じ市区町村に住民票がある方
- その他集団生活に支障のない方(身の回りの世話ができる、感染症にかかっていない、共同生活に適応できるなどの要件を施設毎に設定)
このうち4の条件がクセモノで、認知症専門の入所系施設とは言っても申請時点で寝たきり状態であったり、強い精神症状があるために著しく集団生活にそぐわないと判断される方は条件に該当せず入居に適さないと判断される場合があります。
グループホームのメリット&デメリット
次に、グループホームのメリットやデメリットについてご紹介します。
その性質上、せっかく入居できても「イメージと違った」「追い出されるなんて思わなかった」等といったトラブルにならないよう、検討段階でしっかり把握しておくことが重要です。
グループホームのメリット
認知症高齢者のみを対象とした施設なので、在籍する介護員の認知症対応技術は各種介護サービスの中では相対的にトップクラスと言えるでしょう。
その家庭的な雰囲気とも相まって、認知症の方にとっては適した環境と言えます。
また、9人1ユニットと少人数であり、介護員も含めて顔なじみの関係性を容易に築くことができます。
居室は個室または準個室(部屋の中を壁などで間仕切りしたもの)であるため、プライバシーを守り、自分だけの空間を作って落ち着いて過ごすことができます。
グループホームのデメリット
一番のデメリットは、医療ケアが苦手という点です。
グループホームは、厚生労働省が定める人員配置基準では医師や看護師の配置が義務付けられていないためです。
経営者はどうしても法定基準に合っていればいいやと考えている場合も少なくないため、その場合は何かあったときの医療行為を受けることは困難になります。
この点は入居前に体調悪化時の体制について詳しく確認する必要があるでしょう。
また、なかなか空床が出ず入居待ちの期間が発生しやすいという点があります。
9人1ユニットという特性上入居定員が極めて少なく、比較的体調が安定している方が入居しており、看取りまで行う施設が多いためベッドの回転が非常にゆっくりです。
更には上記の入居要件とも関連しますが、心身の体調悪化によって要介護度が上がったり、経管栄養や痰吸引などの日常的な医療行為が必要となった場合は退去を求められる場合もあります。
近ごろは判断能力が衰えた方に対する権利擁護を図る考え方が浸透してきています。
グループホームは認知症の方が入る施設であり、判断能力があると認められないケースが殆どです。
入居契約は基本的には本人と行います。
その際に法定代理人となれるのが後見人制度です。
権利擁護の意識が高い施設であれば入居契約時に後見人の立ち合いを求められる場合があるので、現在後見制度を利用していない方の場合は入居自体が難しくなる場合も出てくる可能性があります。
グループホームの一日の流れ
基本的な一日の流れは、下記表のようになっています。
しかし、特別養護老人ホーム等とは違って、その方の状況や生活歴に合わせた柔軟な対応が可能となります。
その人の今までの生活リズムを崩さず過ごすことができるのです。
グループホームの費用
グループホームにかかる費用には、初期費用と月額費用があります。
初期費用はその地域性や施設によって違いますが、保証金や入居金といった名目で請求される場合があります。
0~100万円程度までが相場のようです。
毎月の費用は要介護度によっても違いがありますが、介護サービス費や居住費、水道光熱費、食費等を合算すると月15~20万円程度になります。
それ以外にも、医療費や娯楽費やオムツ代、居室内に設置する家具などは個人負担となりますので要注意です。
総じて特別養護老人ホームや介護老人保健施設と比較すると高額になります。
要介護度が上がっていくと月額費用だけでなく、特にオムツ代がかさんでいくことになりますが、特別養護老人ホームや介護老人保健施設の場合はオムツが施設負担となっています。
さらにこれらの施設は負担限度額認定制度により居住費と食費に減免を受けられるので、この点が費用の差を生んでいることになります。
グループホームのスタッフ
法定基準の人員配置は、管理者 1名
提供するサービスの質の担保や経営管理、職員の管理、設備の維持補修、現場の支援、職員に対する指導や研修等が主な役割となります。
他施設の管理者とは違い、管理者本人も現場に入って入居者の直接支援に当たるケースが多くなります。そのため介護に関する技術や知識という点でも他の介護員の模範とならなければなりません。
計画作成担当者 1名以上
入居者の状態を把握して支援計画を作成・実行・介護職員への落とし込み等を行うケアマネジャーのような業務です。管理者と兼務することができます。
介護職員 常勤換算で3:1(24時間常駐で、夜間は常時1名以上)
日常的な入浴・食事・排泄・レクリエーション等に係る直接介護を行います。
認知症への高い対応能力が求められる特徴があります。
このように、配置が義務付けられているのは上記3職種のみです。
そこに必要性に応じて事務員や調理員等が配置されている場合があります。
看護職員や機能訓練指導員の配置は義務ではありませんが、近頃はそのニーズが高まっていることから配置している施設が増えてきています。
まとめ
グループホームは、高齢者にとって俗に第二の家とも言われています。
よく、親と離れて暮らしている子ども夫婦が“認知症になった親を呼び寄せた”という話を聞いたことがないでしょうか。
よかれと思って行った親孝行ですが、実は認知症の患者にとってはその環境変化がストレスを与え、認知症の増悪に繋がってしまうという事実もあります。
そんな時の真の親孝行とは、住み慣れた地域にあるグループホームへの入居を検討するということになるのかもしれません。