ショートステイと言えば、数ある介護保険サービスの中でも屈指の人気を誇るサービスの一つです。
一定期間施設に入所し生活全般における介護や機能訓練等を受けることができます。
その目的は急激に増悪した要介護者を自宅に迎え入れるための準備や家族の負担軽減・家事・休息、自宅リフォーム工事や修理・介護者の病気による緊急避難など多岐に渡ります。
非常に頼れて使い勝手のいいサービスである一方、その人気さ故になかなかな予約が取りづらいというデメリットがあり、いざ使いたいというときに受け入れてもらえるところがない…という事態も生じています。
そこで今回は、いざという時に困らないように今からできるショートステイの効率的な選定方法について解説していきたいと思います。
実際にショートステイの事業所で介護支援専門員兼介護員として勤務している筆者の目線で、生の私見による傾向なども踏まえてお伝えしていきます。
選び方の基本
まずショートステイの事業所を探すときに有効なのは、厚生労働省が提供している「介護サービス情報公表システム」(http://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/)というサイトです。
ここでは全国のサービス事業所の情報がサービス種別ごとに網羅されていて、様々な条件で検索することができます。
その掲載されている情報は、定められた調査項目に対し各サービス事業所が回答し、それを厚生労働省が指定する調査機関が確認調査することによってその正確性が担保されています。
そこで目星を付け、そのうえで担当のケアマネジャーさんや地域包括支援センターに相談して詳しく情報収集するのがよいでしょう。
万人向けの情報だけでなく、ローカライズされた評判や口コミも伝わってくるかもしれませんね。
選び方のPOINT① 【予約の入れやすさで選ぶ】
まず何よりも大切なのは、実際に利用できるかどうかです。
利用したいときに利用できるかどうか、いざという時に利用できる安心感がショートステイの魅力ですよね。
チェックポイントは、定員の数や利用者数の実績です。
情報の公表システムでは、「設備の状況」の項目で定員の数が、「利用者情報」で登録している利用者が何人くらいいるのか、や一回のサービス利用当たり平均何泊しているのかが分かるので、予約の入れやすさの目安となるでしょう。
また、これはあくまで私が勤務している事業所や在宅ケアマネをしていた時の経験上の話になりますが、要介護度が低い方は短い期間を定期的に、要介護度が高い方は中長期の利用だったりベッドが空いているところに滑り込むように利用したりすることが多い傾向があります。
そこも考慮すると、利用者情報の中の“要介護度別利用者数”も予約の取りやすさを予測する上でチェックポイントと言えます。
また、定員の数に対して登録者数があまりに多いからと言って絶望する必要はありません。
中には保険のために複数のショートステイに登録していたり、お盆や正月・夏休み期間等と言った限られた時だけ利用したいということで登録している人も少なくありません。
選び方のPOINT② 【送迎時間の柔軟性で選ぶ】
ショートステイは、自宅と事業所間の送迎を行っています。
この送迎サービスは加算(オプション)のため、中には家族が送迎する場合もありますが、基本的には施設から送迎に出ることが多いです。
事業所によっては送迎時間が細かく決まっており、「この時間に送迎に行きます」「帰りは〇〇時になります」というスタンスで調整するところが多いでしょう。
これは介護職員が送迎業務を行っていることが多いため、あまり利用者の要望に応えていると他の業務に支障が出て介護サービスの質の低下に繋がってしまうためです。
特別養護老人ホーム等に併設している事業所場合はこの傾向が強いように感じています。
逆に単独型の事業所の場合は、定員が多いこともあって送迎専門の職員を配置している場合があります。
そうすると柔軟な送迎ができる場合もあるでしょう。
送迎時間の打ち合わせの際に本人や家族の事情を考慮して検討してくれる事業所は、利用者側の事情に寄り添う姿勢を表しています。
信頼感の持てる事業所と言えそうです。
選び方のPOINT③ 【一日の生活リズムで選ぶ】
殆どの施設で、ホームページ上やパンフレットなどで一日の生活リズムを紹介しています。
実際にショートステイを利用するとなると、集団での生活になります。
特に併設型の事業所では母体の特別養護老人ホーム等とスペースや職員を共有している場合もあり、その生活リズムに合わせて効率的な活動内容の組み立てを行っています。そのため自宅での生活リズムに合わないということもあるでしょう。
現在は介護施設においても“個別ケア”が原則になっていますので、基本的な生活リズムは決まっていつつも、その方の自宅での生活状況に配慮した対応をしてくれる場合が多いです。
この辺りは見学の際に事業所の相談員に質問すると、その対応によって施設の対応方針を感じ取ることができるでしょう。
私が勤務している施設でも、ある程度の起床時間や食事の提供時間は定めていますが、中には「目が覚めた時が起床時間!」「腹が減った時が食事時間!!」という方もいます。その方のリズムに合わせて対応するようにしていますよ。
そのため、一度見学して日々の流れについて確認するとよいです。「ウチは〇〇時に起きて〇〇時にご飯、〇〇時に消灯です」とマニュアルのような対応をして個別的な配慮を感じられないところは考え方や対応が古い事業所です。
利用者本人のことを考えるのであれば、おススメできません。
選び方のPOINT④ 【費用面を配慮して選ぶ】
サービスを利用する上で重要なのが、費用面です。中には有料老人ホーム等で介護保険制度対象外の独自ショートステイサービスを提供している所があるので、混同しないように注意して下さい。
総じて介護保険のショートステイに比べると高額になりがちです。
負担限度額認定制度が活用できる、介護保険制度のショートステイであることを確認しましょう。
負担限度額認定制度は、資産状況に応じてショートステイ利用時に発生する費用のうち食費や居住費の減免を受けることができる制度です。
他に費用を左右する点に、居室タイプがあります。
居室タイプには多床室・従来型個室・ユニット型及びユニット型準個室(ユニット型的多床室)があり、費用に差があります(下記参照)。
多床室に比べて従来型個室やユニット型は設備面でのプライバシー保護対策が取られています。
予算に応じて検討するとよいでしょう。なお、詳しい金額は情報が古くなっている場合もあるので必ず施設に直接問い合わせて確認してください。
【例:(介護予防)短期入所生活介護 併設型の介護サービス費】
多床室 | 従来型個室 | ユニット型個室 ユニット型準個室 | |
---|---|---|---|
要支援1 | 437円/日 | 437円/日 | 512円/日 |
要支援2 | 543円/日 | 543円/日 | 636円/日 |
要介護1 | 584円/日 | 584円/日 | 682円/日 |
要介護2 | 652円/日 | 652円/日 | 749円/日 |
要介護3 | 722円/日 | 722円/日 | 822円/日 |
要介護4 | 790円/日 | 790円/日 | 889円/日 |
要介護5 | 856円/日 | 856円/日 | 956円/日 |
さらには、加算と呼ばれる各種オプションサービスがあります。
個別機能訓練のように希望に応じて一回あたり金額が発生するものと、サービス提供体制加算や介護職員処遇改善加算のように利用者全員に一律加算されるものがあります。
一つ一つは少額ですが、積み重なるとそれなりに纏まった金額になります。
施設によって提供している加算内容にも差があります。この点も注意すべきポイントですが、自身で試算するのは複雑で難しいので、担当のケアマネジャーさんや検討している施設の生活相談員に確認するとよいでしょう。
選び方のPOINT⑤ 【医療行為の受け入れ体制で選ぶ】
通常のショートステイでも、経管栄養や喀痰吸引に対応した施設がないわけではありません。
しかし数としては少ないですし、仮に対応を謳っていても人員体制によっては実施できない時間帯がある場合もあります。
それでは継続的日常的に医療行為が必要な利用者を預けるのには不安があるでしょう。
そこで選択肢に挙がるのが医療型ショートステイ(短期入所療養介護)です。
一般的なショートステイ(短期入所生活介護)はある程度体調が安定している方の利用を基本としているのに対し、医療型ショートステイは日常的な医療行為を必要としている方でも利用することができます。
サービス内容は、通常のショートステイと同様に食事、入浴、排泄などの日常生活上必要な身体介護はもちろん、それにプラスしてリハビリテーションや医療的な処置や管理などのサービスが受けることができます。
通常のショートステイは特別養護老人ホームに併設されていたり、単独型で運営されているのに対し、医療型ショートステイはより医療スタッフの配置が手厚い介護老人保健施設や、介護療養型医療施設に併設されていることが多いです。
但しデメリットとしては、通常のショートステイと比較して料金が高めであることと、絶対数が少ないために選択肢が限られたり、必要な時に満床で入れない可能性があるという点です。
また、医療面のケアが充実しているとはいっても、病院に入院するように病気や怪我を治療する目的で利用するのではありません。
あくまで急性期治療を終えて自宅療養期に入っている方に対して看護・医学的管理のもとで日常生活上必要なケアを提供するのが目的のサービスです。
誤解の無きようご注意ください。
まとめ
このように、ショートステイは様々な視点で選ぶことが重要です。
施設の数も多いですが、その分利用者数も多く人気が高いので、それぞれの利用者が複数の事業所と契約している傾向が強いです。
また、お盆や正月、夏休み期間、多世代家族が多い地域では受験シーズンやインフルエンザ・感染性胃腸炎等の感染症が増える冬季間や春先にかけてもニーズが高まります。
事業所選定のポイントを抑えるとともに、これらの繁忙期は特に早めの予約が重要になりますので覚えておきましょう。
また、豆知識ですが担当のケアマネジャーさんの事業所に同系列のショートステイがあれば迷わず契約しておくことをおススメします。
予約だけでは費用は発生しません。
母体が同じですので事業所間の連携も円滑ですし、いざという時に融通を効かせて滑り込ませてもらえることもありますよ。