在宅サービスの中で、介護施設に通ってサービスを受けるものの中に『ショートステイ』と『デイサービス』があります。
どちらも人気のサービスで、事業所数も多く地域での競争も激しいため、サービスの質が高い事業所が増えてきています。
どちらも有名なサービスなので、なんとなく概要はご存知の方が多いでしょう。
しかし、実際にどこがどう違うのかと聞かれると、一般の方でお話しできる方はそう多くないのではないでしょうか。
近頃は『お泊まりデイサービス』なるものも登場し、その区別が素人目には分かりづらいものになってきています。
そこで今回は、この2つのサービスの違いについて詳しく説明していきたいと思います。
ショートステイの概要
ショートステイとは、短期間介護施設に入所して入浴・食事・排泄・機能訓練などの生活支援サービスを総合的に受けることができるサービスです。
単独で運営している単独型と、特別養護老人ホームなどに併設されている併設型があり、それによって利用単価も変わります。
宿泊を伴うサービスとなっており、家族の介護負担軽減や休息目的以外にも、自宅のリフォームや介護者の急病・冠婚葬祭などの事情により自宅介護が困難となった時に緊急避難的な目的で利用することもできます。
1回の利用で最大30日まで連続して宿泊することができますが、利用回数の合計が要介護認定期間内の日数の半分以下でなければならないという決まりがあります。
その①送迎について
ショートステイの送迎は、「利用者の心身の状態、家族等の事情等から見て送迎を行う事が必要と認められる利用者に対して、その居宅と事業所との間の送迎を行う場合」に行うことができます。
ショートステイの送迎は、この条件のために送迎加算という仕組みを取っています。
自宅とショートステイ事業所間以外の送迎はできませんし、途中で買い物などの目的で寄り道をすることもできません。
基本的には、玄関から玄関までの送迎が原則ですが、上記の決まりごとから解釈すると、介護できる家族がいない等の理由があれば事前の取り決めや契約内容次第でベッドに寝てもらうところまで送迎担当職員が関わることが可能になっています。
このあたりは保険者(事業所が所在する市区町村)によっても解釈が違うので注意が必要です。
その②一日の流れについて
ショートステイの日々の流れの特徴は、介護に重点を置いている点です。
また、特別養護老人ホーム等に併設されている事業所の場合はスペースを共有している場合もあり、生活リズムや日々のスケジュールも特養部分に準ずる形でやっているケースもあります。
下記の例は、実際に私が勤務しているショートステイ(特別養護老人ホーム併設型)の一日の流れです。
その③最大の特徴は『自室』がある
ショートステイとデイサービス最も大きな違いは、宿泊を伴うという点です。
そのため、事業所は利用者に対し自室を用意して提供します。
ところが、勿論ショートステイは施設サービスとは違いますので利用者は日々代わります。
そのため、利用するたびに割り当てられる自室が違うということが多いです。
中にはそれが嫌で「同じ部屋でなければ困る」(多床室の場合)「あの人と同じ部屋は嫌だ」などといった要望も多々あり、担当職員は日々部屋の割り振りに苦慮しているという実態もあります。
認知症の方の場合、利用するたびに部屋が違うと混乱する原因にもなりますので、そのような配慮をしてもらえるのかどうかは事前に確認しておくとよいでしょう。
デイサービスの概要
デイサービスは、日帰りで介護施設に通って入浴・食事・排泄・機能訓練などのケアを受ける事ができるサービスです。
ショートステイとは違い、あくまで日帰りというところがポイントです。
ョートステイとは違って利用日数の制限はありませんので、自身の要介護度に応じて単位数が足りる分だけ利用することができます。
デイサービスも単独で運営されている場合や、特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの施設に併設されている場合があります。
なお、今回はこのデイサービスを介護保険上「通所介護」と呼ばれているサービスに限定して説明しますが、通所介護以外にも「認知症対応型通所介護」や「小規模多機能型居宅介護」の通いサービスのように、これに類似するサービスがあるので混同しないように注意しましょう。
近頃は『お泊まりデイサービス』といって通常のデイサービスと独自の宿泊サービスを組み合わせた事業形態も出て来ています。これについては後述を一読下さい。
その①送迎について
デイサービスにも、送迎があります。
ショートステイの送迎との大きな違いは、ショートステイの送迎は加算(オプション)サービスであるのに対し、デイサービスの送迎費用はサービス単価に含まれているという点です。
つまり、送迎が標準のサービスとして組み込まれているのです。
もう一点は、近年の介護報酬改定によって条件付きですが自宅内での身体介護等のサービス提供が可能となった点です。
それまでは、利用者がデイサービスに出かけるための着替えや車椅子等への移乗動作、戸締り等を迎えに来たデイサービスの介護職員が行うことは認められておらず、これらの介助が必要な場合は家族が行うかホームヘルパーを利用するかしかありませんでした。
このため、仕事をしている家族はデイサービスの送迎時間に合わせて仕事に遅刻するか休日をとらなければならないという本来の目的に矛盾する状態が生じていました。その弊害をなくすための改正です。
「送迎加算」の名称で、30分以内に済む内容であれば本来のサービス提供時間数に含めてよいこととなったのです。
これにより利用者やその家族は訪問介護と契約して利用したり、仕事を休む・遅刻早退し対応したりする等のことをしなくてよくなったため、大幅に負担軽減に繋がるようになったと言えるでしょう。
ただし、施設側からすれば今までは複数人を同時に送迎できていたのに、このようなサービスを提供する契約になっている利用者を送迎する場合は、安全確保の観点から実質的に1人ずつ送迎せざるを得ないことになりました。
そのため事業所によっては対応に限りが生じる場合もあるでしょう。
利用契約の前に対応の可否について事前に確認した方がよさそうです。
その②一日の流れについて
デイサービスは、日帰りの介護サービスです。
それ以外、日中の活動スケジュールについてはショートステイと大差ありません。ただし、事業所の規模によってこじんまりとしたデイサービスがあったり40人以上いるような大規模なデイサービスがあったりしますので、利用者の認知症の状態や性格、希望にあった事業所を選定する必要があります。
ショートステイと同様、特別養護老人ホーム等の施設に併設されている事業所の場合は生活スケジュールも共有している場合があります。
以下は、私が以前勤務していた、高齢者住宅にテナントとして入っていたデイサービスの一日の流れです。
その③最大の特徴は『レクリエーション』が充実している
デイサービスは運営されている事業所数も多く、同一地域に複数ある場合も多いため、口コミや営業による利用者獲得競争が盛んです。
つまり、サービスの質の向上や営業努力が特に重要な施設であり、客商売の側面が強い事業所とも言えます。
その中で各施設が力を入れているのが、「レクリエーション活動」です。
利用者からすれば、デイサービスは介護を受けに行くというより入浴やその事業所で行われる様々な余暇活動を通して他者と交流したり、リハビリをしたり、新たな人間関係の出会いを求めて通うという目的を持っている方が多いです。
レクリエーションを通してリハビリをしたり一緒に楽しむことによって、デイサービスが楽しかったと感じてもらって次回利用への意欲となる効果があります。
それが浸透すれば地域に口コミとして広がり、ケアマネの間でも「あそこのデイサービスは活気がある」と評判になり新規利用者獲得にも繋がるのです。
そのため、各事業所が特色を打ち出し様々に工夫したレクリエーション活動を展開しています。
それぞれのデイサービスのホームページを見てみると、この部分を一番に紹介している所が非常に多くなっています。
ショートステイとデイサービスの料金について
ショートステイに必要な主な費用は、サービス基本料金、各種加算、居住費・食費があります。オムツの費用は事業所負担となります。
なお、居住費・食費は事業所によって金額設定が異なりますが、負担限度額認定制度を活用することで世帯収入に応じた減免を受けることができます。
それに対して、デイサービスに必要な費用はサービス基本料金、各種加算、食費です。事業所によってはそれ以外に施設利用料等を徴収していることもあるようです。
オムツの費用は個人負担となります。
利用時に必要数を自宅から持参してもらうケースが多いでしょう。
デイサービスの場合は、負担限度額認定制度の対象外ですので対象者の要件を満たしていても食費の減免を受けることはできません。
要介護3の場合の料金概要の比較を、以下にまとめました。あくまで参考としてお読みください。
※介護保険自己負担割合1割の場合
※ショートステイの基本料は要介護度別・居室タイプ別に設定されているため、要介護3・従来型個室の場合で算定
※デイサービスの基本料は要介護度別・事業所規模別・サービス利用時間別に細かく料金が設定されているので、要介護3・通常規模事業所・6~7時間利用の場合で算定
※各種加算は事業所ごとに大差あるためこの表では算定に含めていない
デイサービスの『お泊まりデイサービス』とは
近ごろは、介護保険制度上のデイサービスと抱き合わせで利用する「お泊りデイサービス」という任意サービスを提供する事業所も増えてきています。
特別養護老人ホームなどへの施設入所は慢性的に待機者が多く、また短期入所の利用も希望者が多くベッドの確保が困難となりつつある現状があります。
そんな中で、介護保険上の短期入所と比較すると料金は高いですがその分利用予約が取りやすい「お泊りデイサービス」のニーズが現在高まっています。
ただし、介護保険外の任意サービスであるが故に費用の高さやサービスの質の担保が課題となっていました。2015年4月に厚生労働省からようやくガイドラインが発表され、ある程度安心してお泊りサービスを利用できる環境が整いつつあります。
お泊りデイサービスのメリット
介護保険のショートステイのような感覚で利用し、介護者の心身の負担軽減や疲労回復、リフレッシュを図ることができる。日頃できない家事もできる。
利用者自身も家から離れることで気分転換ができる
お泊りデイサービスのデメリット
- ある程度のガイドラインはあるものの、プライバシーへの配慮が充分でない場合もある
- 介護保険施設と比較して設備基準が厳しくないため、防火対策や災害対策、避難経路に留意が必要
- 人員配置や緊急時対応に劣る場合がある
- 介護保険適応外のため、費用が高額になる場合も
- 日中にデイサービスを利用することが前提のため、お泊りサービスのみ利用するのは不可能な場合も
- サービス提供主体毎に独自のルールを定めている場合がある
まとめ
ショートステイは社会福祉法人などしっかりした経営母体が運営しているサービスのため、施設数は少なく利用難易度も高めですが、安定したサービスを受けることができます。
短期間宿泊することによって利用者・介護者双方が気分転換や心身の疲労回復・リフレッシュを図ることができるサービスです。
その一方、デイサービスは株式会社・NPO法人なども設置しているため、多種多様なサービス内容や事業所規模があり、選択肢の幅が非常に広いのが特徴です。
レクリエーションが非常に充実しており、「遊びに行く」感覚で気軽に楽しく利用できるのもメリットのひとつです。
ただし、その分利用者獲得競争が激しく、淘汰され倒産したり事業所を閉鎖する所も近年増えてきています。
さらには、お泊りデイサービスというデイサービスに夜間のお泊りサービスを組み合わせてショートステイのような感覚で利用できる複合的サービスを展開する事業所が増えてきています。
選択肢が幅広い分、サービスの質や料金も多岐に渡る事業所から選定する必要がある点には留意が必要です。
どちらのサービスも、非常に人気のあるサービスには違いありません。
その特徴やメリット・デメリットを理解し、有効に活用していきましょう。