介護保険と医療保険の自己負担分を合算した金額が高額になった場合、負担額の一部が払い戻しになる制度をご存知でしょうか。
今回はそれぞれの保険を利用したとき、自己負担額が高額になったときに利用したい、高額医療合算介護サービス費について解説していきます。
介護保険と医療保険の自己負担分でお悩みの方は、ご参考になさってください。
高額医療合算介護サービス費とは
高額医療合算介護サービス費とは、介護保険と医療保険の自己負担分を合算した金額が、著しく高額になってしまったときに、負担額の一部が返還される制度です。
介護と医療の両方が関わり合う制度であり、高額医療合算介護サービス費とは介護における名称となっています。
医療における名称は高額介護合算療養費制度です。
当記事では、当該制度を高額医療合算介護サービス費と呼称することにします。
高額医療合算介護サービス費の適用を受けるには、各保険の自己負担額や期限に制限があります。
はじめに高額医療合算介護サービス費の対象となる人から確認していきましょう。
その① 対象となる人
対象となる人は国民健康保険や被用者保険、後期高齢者医療制度など、各医療保険における世帯内で、「医療保険と介護保険の自己負担額を合算した金額」-「世帯の負担限度額(年額)」=501円以上である場合です。
被用者保険とは、企業や個人事業主に雇われた人々である被用者を対象とする保険を指します。
具体的には組合健保や協会けんぽ、特定被用者保険などです。
医療保険と介護保険の自己負担額を合算した金額は、世帯単位で計算を行います。
ただし同じ世帯内であったとしても、加入している医療保険が異なる場合には合算の対象とはなりません。
世帯の負担限度額については次の項目で詳しく解説していきますので、そちらをあわせて参考になさってください。
参考までに高額医療合算介護サービス費の対象となるモデルケースを紹介しておきます。
【高額医療合算介護サービス費のモデルケース】
- 本人(被保険者):21万円の自己負担額(医療保険)
- 父親(被扶養者):11万2,000円の自己負担額(介護保険)
- 世帯の負担限度額:31万円
(21万円+11万2,000円)-31万円=2,000円≧501円
上記のモデルケースであれば、自己負担額の差額が501円を超えるため、高額医療合算介護サービス費の対象となります。
その② 対象となる期間
対象となる期間は8月1日から翌年の7月31日までです。
7月から8月をまたいで、介護保険と医療保険の自己負担額が高額になる場合には注意が必要です。
また基準日の翌日を起算日として2年以上経過すると、高額医療合算介護サービス費の請求権が時効になってしまいます。
可能な限り早急に、高額医療合算介護サービス費の申請を行うようにしましょう。
その③ 申請方法や必要品について
つづいて申請方法と必要品について解説してきます。
高額医療合算介護サービス費の申請は、申請の基準日の時点で加入している医療保険者の窓口に行います。
また当該制度の申請には、介護保険の負担額証明書が必要です。
介護保険の負担額証明書は、市区町村の介護保険を担当している課に申請することにより、手に入れることができます。
詳しい申請手順は次の項目で解説していきます。
その④ 支給までの流れ
次は高額医療合算介護サービス費が支給されるまでの流れについてです。
以下の図は、高額医療合算介護サービス費の支払いを図式化したものとなっています。
【高額医療合算介護サービス費の支給い】
高額医療合算介護サービス費の支給までの大まかな流れは、市区町村へ介護保険の自己負担額証明書を申請し、交付された自己負担額証明書を添付し、医療保険の被保険者が支給申請を行います。
その後、医療保険者が申請内容を精査し、支給額を介護保険者へ連絡します。
医療保険と介護保険の制度別に支給額を計算し、医療保険からは高額介護合算療養費として、介護保険からは高額医療合算サービス費として支給されます。
高額医療合算介護サービス費の対象となる部分
高額医療合算介護サービス費の対象となる部分における負担限度額は、所得状況や加入している医療保険、年齢によって異なります。
その① 70歳以上の人・後期高齢者医療の人
70歳以上の人・後期高齢者医療の方は、平成30年8月から負担限度額が細分化されました。
70歳以上の人、後期高齢者医療の方は、申請する高額医療合算介護サービス費の期間に注意しましょう。
その② 70歳未満の人
70歳未満の人の負担限度額は以下の通りです。
介護保険と医療保険、どちらかの自己負担額が0円のとき
介護保険と医療保険、どちらかの自己負担額が0円のときは、高額医療合算介護サービス費は利用できません。
高額医療合算介護サービス費の該当になるには、介護保険と医療保険の両方で自己負担が発生している必要があります。
介護保険と医療保険のどちらかで、自己負担額が高額になってしまった場合には、高額合算介護サービス費とは異なる制度を利用することが可能です。
その① 介護保険の自己負担額が高額であるケース
介護保険の自己負担額が高額であるケースでは、高額介護サービス費制度が利用できます。
所得状況や同一世帯における市区町村民税の課税状況によって、自己負担の限度額が異なります。
ショートステイを含む介護施設での食費や居住費、特定福祉用具販売にかかった費用は高額介護サービス費制度の対象にはなりません。
高額介護サービス費制度の対象となる方は、通知と申請書が後日郵送されてきますので、必要事項を記入の上、市区町村の介護保険を担当する課へ申請しましょう。
その② 医療保険の自己負担額が高額であるケース
医療保険の自己負担額が高額であるケースでは、高額療養費制度を利用することが可能です。
自己負担額は世帯内で合算することができ、自己負担額は所得状況や年齢によって定められています。
高額療養費制度の申請方法は、加入している医療保険によって異なりますので、保険証に記載されている保険者へ問い合わせるとよいでしょう。
まとめ
高額医療合算介護サービス費の対象となる人や期間、負担限度額の詳細について解説してきました。
高額医療合算介護サービス費について理解が深められたのではないでしょうか。
高額医療合算介護サービス費の活用についてまとめると
- 介護保険と医療保険の自己負担分を合算した金額と、世帯の負担限度額の差が一定以上であれば、高額医療合算介護サービスの該当になる。
- 高額医療合算介護サービスの申請には介護保険の負担額証明書が必要になる。負担額証明書は市区町村の介護保険を担当している課へ交付申請を行う。
- 世帯の負担限度額は年齢や加入している保険、収入状況によって異なる。
ということがあります。
介護保険と医療保険の自己負担分を一定額、減額できる高額医療合算介護サービス費は可能な限り利用することをおすすめします。
当該制度の申請には介護保険と医療保険の両分野が関係しているため、わかりにくくはありますが、先ほど紹介した申請手順に従い、1つずつ必要な手続きを行うとよいでしょう。