原則的に介護サービスを利用したときの料金は、全額負担(10割負担)になりません。
個人ごとに定められた負担割合に従い、利用料金を支払うためです。
利用者が負担しなかった残りの料金は、介護給付から支払われる仕組みになっています。
今回は介護保険の概要や、介護サービスを受けるまでの流れ、介護給付の種類について解説していきます。
介護サービスの利用を考えている方は参考になさってください。
介護保険の概要
介護保険は、社会全体で介護を必要とする方を支えるための制度です。
高齢化の進展に伴い、介護サービスを必要とする人の増加や介護の長期化など、様々な介護ニーズが増大しました。
また核家族化の進行や、介護をする家族の高齢化など、介護を担っていた人々を支えてきた環境も時代と共に移り変わりました。
そういった社会背景を受けて、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みが必要になり、介護保険制度が成立したのです。
介護保険の対象者は65歳以上の方、もしくは40歳以上65歳未満の方で介護保険の特定疾病に該当する方です。
介護保険の特定疾病は以下の通りとなっています。
【介護保険の特定疾病】
さて次の項目では、介護保険サービスを受けるまでの、具体的な流れについて解説していきます。
介護保険サービスを受けるまでの流れ
介護保険サービスを受けるまでには、要介護認定の申請からはじまり、認定結果の通知、そしてサービス計画書の作成を行う必要があります。
介護サービスを受けるまでに必要な手続きを、1つずつ確認していきましょう。
その① 要介護認定の申請
最初に行うのが要介護認定の申請です。
要介護認定の申請は介護サービスを受ける方が住んでいる、市区町村の介護保険を担当する窓口で行います。
本人の代行として、家族でも要介護認定の申請を行うことが可能です。
要介護認定の申請には、申請書や介護保険被保険者証などの書類が必要になり、ホームページから申請書をダウンロードできる市区町村があります。
市区町村によって、申請書の様式や必要となる書類が異なりますので、事前にインターネットや電話で確認しておくことをおすすめします。
また次の項目で解説する認定調査の日取りを、要介護認定の申請書を提出したときに決める市区町村があります。
要介護認定の申請を行うときには、事前にスケジュールの調整をしておくとよいでしょう。
その② 認定調査と主治医意見書
要介護認定の申請が完了したら、市区町村の担当者が認定調査を行います。
認定調査は介護サービスを受ける方が住んでる自宅や施設で行い、心身の状態を確認することが目的です。
施設で認定調査を希望する場合には、あらかじめ施設の担当者に認定調査を施設で行いたい旨を伝えておくと、スムーズに認定調査を受けることができます。
要介護認定の審査を行うためには、主治医意見書と呼ばれる書類が必要になりますが、市区町村が主治医へ意見書の手配を行います。
本人や家族は主治医意見書を取り寄せる手続きを行う必要はありませんが、もし主治医がいない場合は、市区町村が指定する医療機関への受診が必要になります。
その③ 審査判定
審査判定は一次判定と二次判定にわかれます。
一次判定は認定調査の結果や主治医意見書の一部の項目をコンピュータへ入力し、全国一律の判定方法で審査されます。
二次判定では一次判定の結果と主治医意見書を基に、介護認定審査会によって、要支援・要介護度の判定が行われるのです。
その④ 認定
市区町村は介護認定審査会の審査判定に基づき、要支援・要介護認定を行い、申請結果を申請者へ通知します。
原則的に認定結果の通知は、要介護認定を申請してから30日以内で行われます。
要介護認定の申請を行ってから31日以上経過しても、認定結果の通知がない場合は市区町村へ問い合わせることを強くおすすめします。
要支援・要介護度は7段階で構成されており、要支援1・2と要介護1~5のいずれかです。
これらの要支援・要介護度以外に、要介護認定が非該当である自立と判定されるケースがあります。
要支援1・2の認定が下りた場合には介護予防サービスを、認定結果が要介護1~5のいずれかであれば、介護サービスを利用できます。
その⑤ サービス計画書の作成
認定結果の通知が届いたら、次はサービス計画書(ケアプラン)の作成を行います。
サービス計画書は、介護サービス(または介護予防サービス)を利用するために必要となる書類で、本人・家族の希望や利用する介護サービスが記載されています。
サービス計画書は介護予防サービスか、介護サービスかによって、作成を依頼する事業所が異なります。
要支援1・2の認定結果が下り、介護予防サービスを利用する方は地域包括支援センターに、サービス計画書について相談するとよいでしょう。
地域包括支援センターは、地域に住む介護を必要とする方をサポートするために設置されている施設です。
市区町村の介護保険を担当する窓口やインターネットで、地域包括支援センターの所在地を確認できます。
要介護1~5の介護サービスを利用する方は、県知事の指定を受けた居宅介護支援事業所(ケアプラン作成事業者)へ相談することになります。
居宅介護支援事業所では、介護支援専門員(ケアマネージャー)がサービス計画書を作成します。
認定結果が要支援または要介護で、サービス計画書について相談する事業所が異なりますので注意しましょう。
その⑥ サービス開始
サービス計画書の作成が完了したら、サービスの開始です。
サービスを開始するにあたり、サービスを提供する事業所と利用契約を結ぶ必要があります。
急を要する場合を除き、サービスの開始までには一定の時間が必要になりますので、余裕を持って手続きを行いましょう。
介護給付について
介護給付は、介護が必要であると認められた方に行われる介護保険の保険給付です。
保険給付はサービスを提供する現物給付と、費用を負担する現金給付にわかれますが、介護給付は現物給付になります。
介護給付とは利用できる介護サービスという認識で問題ないでしょう。
介護給付の種類
介護給付は以下の3種類にわけられます。
- 在宅系サービス
- 施設系サービス
- 地域密着型サービス
種類ごとの代表的な介護サービスをまとめたものが、次の表です。
在宅系サービスは自宅から施設へ通ったり、また自宅へ介護スタッフが来訪したりして、サービスの提供を受けられます。
それに対し施設系サービスは、生活拠点を施設へ移し介護サービスを受けることになります。
さいごに地域密着型サービスは住み慣れた地域で生活が送れるよう、小規模な施設や滞在時間が少ないかわりに数多く利用できるなど、利用者の状態にあわせた柔軟なサービスが特徴的です。
まとめ
介護サービスを受けるまでの流れや介護給付について解説してきました。
介護サービスを利用するにはどのような手続きが必要になるか、介護給付の種類はどのようなものがあるかなど、介護保険について理解を深められたのではないでしょうか。
介護給付の対象者や、サービスを受けるために必要な申請方法についてまとめると
- 介護保険は社会全体で介護が必要な方を支えるための制度である。
- 介護サービスを受けるためには要介護認定の申請を行い、認定調査を経て、サービス計画書を作成する必要がある。
- 介護給付には在宅系サービス、施設系サービス、そして地域密着型サービスの3種類に分かれる。
ということがあります。
介護サービスを利用するまでにはいくつかの手続きを行う必要がありますので、1つずつ着実にこなしていきましょう。
また介護給付の種類は多岐にわたりますので、利用したい具体的に介護給付が思いつかないのであれば、介護をする上で困っていることを担当ケアマネージャーに伝えるのも、選択肢の一つです。
本人や家族の要望をくみ取り、ケアマネージャーから適切な介護サービスを紹介してもらえます。