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民間介護保険の加入率は?

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民間介護保険の加入率は?

民間介護保険の加入率は?

民間の介護保険と聞いて、皆さまはどのような事を思い浮かべるでしょうか。

公的介護保険制度とは違い、実は民間介護保険については、意外とご存じない方が多いのではないでしょうか。それは、実際の加入率からも推し量ることができます。

そこで今回は、実は知らない民間の介護保険について、詳しくご紹介して参りましょう。

民間介護保険の特徴と役割

民間介護保険の特徴と役割

公的介護保険制度は、利用者の要介護度に応じて訪問介護や通所介護、通所リハビリ、福祉用具貸与、特別養護老人ホーム入居等といった公的介護サービスを利用できる保険制度です。

それに対して民間の介護保険とは、一定の要介護状態になった場合に年金(分割支給)あるいは一時金(一括支給)として給付金がもらえる保険のことを言います。

民間の保険会社が展開している生命保険や医療保険、自動車保険、火災保険などと同じような保険と思ってもらえれば分かりやすいかもしれませんね。

そのなかでも、商品によっては年金と一時金の両方が支給される物や死亡保障などがついたものもあり、その内容は千差万別です。

また、給付要件についてもその商品によって違いがあり、公的介護保険に連動するタイプ(要介護認定が指定のレベル以上の認定となった場合に支給される)保険会社が設定する独自の基準を満たす状態になったときに給付されるタイプの大きく2つに分けられます。

なお、これ以外でも認知症の症状を中心とした一部の状態について公的介護保険に連動するタイプ等もあり、その商品毎に特色が出る部分にもなっています。

特に後者の独自基準を元にした民間介護保険の場合には、公的介護保険対象外の方でも受給できる可能性があるというのが最大のメリットとなっています。
 
意外と知られていませんが、介護保険料が徴収される40歳~64歳の方の場合は、保険料を払っているにもかかわらず、16の特定疾病(末期がんやアルツハイマー病、筋委縮性側索硬化症等を代表する難病等)によって生じる要介護状態でないと、介護保険の対象外なのです。

つまり、例えば大きな事故によって後遺症が生じて要介護状態となった場合、64歳以下の方は介護保険料を支払っているのに公的介護保険の介護サービスが使えないという困った事態が生じるのです。

そんなときでも、独自基準型の民間介護保険であれば、保証金を受け取ることができるのです。
 

民間介護保険の加入率

民間介護保険の加入率

私は以前、とある100人規模の法人で介護現場の管理者をする傍ら、総務もこなしており、年末調整も携わっていたことがあります。

その際、控除欄に民間介護保険を計上してくる人は毎年1~3名程度でした。

このことからも、世間一般的には普及が進んでいないといるかもしれません。

具体的データをもとに考えてみましょう。

その① 加入率は低いのが現状

生命保険文化センターが公開している「生活保障に関する調査」(平成28年度)によると、民間の介護保険や介護特約を契約している方の割合は、全体の9.9%に過ぎないというデータが公表されています。
少子高齢化社会を超越し、いわば人口減少社会ともなっている現状ですが、記憶に新しい老後2000万円不足問題に端を発した将来への備えへの不安感を感じている人は多い一方、実際には介護に対して準備をしていない方が多いとも言える結果ではないでしょうか。

その② 加入率が低い理由

同じ保険商品であっても、例えば生命保険や自動車の任意保険は多数の人が加入してますよね。なぜ、このような差が生まれるのでしょうか。

介護に対するイメージがつきにくい

介護が必要になると、いったいどのくらいの費用が必要になるのか?

そのようなことを具体的に考える方は少ないのではないでしょうか。

介護離職もしくは短時間勤務への転換によって生じる収入減や、自宅で介護する場合に必要なリフォームの費用、オムツ代、施設入居をするときの一時金、高齢になればなるほど増える医療費…これらまで考慮すると、必要な介護費用を計算することは確かに難しいでしょう。

生命保険文化センターが行った「生命保険に関する実態調査」(平成27年度)によるデータから計算してみると、平均額は546.8万円という計算になります。

その内訳は、一時的な費用80万円+毎月の費用7.9万円×介護期間の平均59.1ヵ月という計算です。

ただし、実際には、介護をする場が自宅なのか施設なのか、要介護度はどのくらかによっても大きな違いになります。

消耗品であるオムツ代や、デイサービスなどを利用した時の食費もバカになりません。更にいえば、一人でこの金額です。

仮に両親がそれぞれ要介護状態になってしまったら、それは本当にかなりの金額になってしまいます。

でも、逆に言えば、今から自分の親が、もしくは自分が要介護状態になるなんて想像したくありませんし、想像できないですよね。

このように先が見通せない部分が、民間介護保険の加入率に影響していると言えそうです。

優先順位が低いから

実際に皆さんが加入しているであろう民間の保険商品について考えてみましょう。

これはあくまで印象ですが、私が総務をしていたときに最も多かったのは生命保険、次に医療保険、火災保険です。当然ながら、自動車の任意保険には社員全員加入していました。

それに対して民間介護保険に加入していたのは毎年多くても3名程度。

つまり、優先順位が低いんですよね。

生命保険や自動車保険は、もちろん万が一の時に大きな保障を得ることができ、生活の足にも直結する問題ですので最も優先順位は高いです。

医療保険や火災保険については、保障が必要となった時の費用がイメージ付きやすいために、加入しようと考える人が多いのです。

民間介護保険の認知度が低い

民間介護保険のイメージのつかみにくさや認知度の低さも、加入率が伸びない原因として考えられています。

第一生命研究所の調査によると、介護についての知識の中で最も低いのが「民間介護保険について」だったというデータがあります(よく知っている2.1%+ある程度知っている12.6%)。

介護事業を行っている法人でさえ、3/100程度の加入率だったのですから、その認知度の低さはよく分かりますよね。

それに対して、生命保険は被保険者が死んだら保証してもらえる、自動車保険は事故を起こしたら保証してもらえる…この分かりやすさが加入率の高さを生んでいます。

民間介護保険の必要性について

民間介護保険の必要性について

ここで疑問に思うのが、公的な介護保険制度があって強制的に加入させられるのだから、わざわざ民間の介護保険に加入する必要があるのかという点です。

それを判断するためには、公的介護保険の関連サービスでどの程度要介護状態をカバーできるのかというところを確認しておく必要があります。

その① 公的介護保険でカバーできるのか

公的介護保険制度で保障されるのは、介護サービスを利用した時に、所得に応じて設定される自己負担割合(1~3割)に応じて利用料が割り引かれるという内容です。

ただし、利用上限額を超えた分の金額については全額自己負担(10割負担)となります。

また、要介護度に応じて給付対象外となるサービスも存在します。

☆介護サービスの利用上限額及び自己負担額(月額)☆

gg0532 表①

次に挙げられるのが、高額介護サービス費制度です。

これは、たとえ上限額内の負担であっても利用料が高額になってしまう場合に、特定の条件に当てはまると規定された金額以上支払った分のサービス利用料が戻ってくる制度です。

ここで注意が必要なのは、それ以上の額を払わなくてもよいのではなく、一旦払った金額が後日戻ってくる仕組みのため、もともと毎月のキャッシュフロー的に厳しい方にとっては、誤解しないように注意が必要な制度です。世帯や個人の収入によって、その区分が決定されます。

☆高額介護サービス費の自己負担上限額(月額)☆
gg0532 表②

さらに、同じ世帯で公的医療保険や公的介護保険の給付を受けた際の1年間の医療費と介護に要した費用の自己負担額合計が高額になったときは、高額介護合算療養費制度を利用することが可能になります。

高額介護サービス費制度と同様、規定する上限額を超えた場合に超過分が帰ってくる制度です。

☆高額介護合算療養費制度の負担上限額☆

gg0532 表③

その② もしもの時に家族に頼れるか

これらに対して、介護サービス費用以外の費用(例えば食費、オムツ代、レクリエーション代、住宅改修費の補助を超えた部分、入居施設の介護サービス費以外の部分の費用等)については、公的介護保険でカバーすることはできません。

要介護者のみの収入で全てを賄うのは難しく、現役世代の家族からも協力を得なければならない場合も多いでしょう。

また、受診や行政手続き等で外出しなければならない場合、バスや電車などの歩行を伴う公共交通機関の利用が難しければタクシーを利用しなければなりません。

車を出してくれる家族がいれば良いのですが、現役世代の家族にはなかなか頼みづらいものです。これも家計を圧迫する原因となるでしょう。

その③ 若くして介護状態になっても対応できるか

65歳以上で介護が必要な状態であれば、その原因を問わず利用できる公的介護保険ですが、64歳以下の方の場合、その原因によっては公的介護サービスを利用できない場合があります。

厚生労働省が介護保険で規定する16の特定疾病を原因とする要介護状態であれば、第2号被保険者となり、公的介護保険制度を利用することが出来るのですが、例えば事故による怪我の後遺症で半身不随となった場合や、特定疾病以外の病気で要介護状態となった場合には公的介護保険制度を利用することはできません。

このような時も、独自基準型の民間介護保険であれば保険金が支払われるので、高額になる費用を賄うことができます。

まとめ

まとめ
以上のことをまとめると、

  • 現状の収入や預貯金だけでは介護費用をカバーしきれない人
  • 介護状態になったときに頼れる家族が近くにいない人
  • 家族に負担をかけたくない人
  • 64歳以下で要介護状態になったときの備えが出来ていない人

この条件に当てはまる人は、民間の介護保険を活用する意義があると言えます。

これって、大多数の人が当てはまるんじゃないかと感じる人も多いのではないでしょうか。

いつ介護が必要な状態になるのかなんて、誰にもわかりません。

公的な介護保険制度があるとはいえ、それは基本的に介護サービスを安価で利用できる権利を得られるだけとも言えますので、やはり先立つものがないと安心できる介護サービスを利用することは困難です。

ある試算では、介護が必要になったときの費用は平均で425万程とも言われています。

民間の介護保険は、まさに“転ばぬ先の杖”と言えそうですね。

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