介護保険の総合事業は、2015年の介護保険改正によって定められました。
2015年の介護保険改正前に行われていた介護予防給付の一部と、介護予防事業をあわせた制度が、介護保険の総合事業です。
今回は介護保険の総合事業サービスとは、どのような制度なのかや、従来の介護サービスとの違いをご紹介していきます。
介護保険の総合事業に関して興味がある方はご参考になさってください。
総合事業サービスとは
総合事業サービスは2015年の介護保険改正にて創設され、従来の介護予防給付と、介護予防事業をあわせた制度となっています。
はじめに介護事業サービスとはどのような制度なのかを確認していきましょう。
その① 総合事業サービスの内容
総合事業サービスの内容は2種類にわけられます。
1つ目が介護予防・生活支援サービス事業です。
介護予防・生活支援サービス事業については、後ほど詳しくご紹介していきます。
2つ目が一般介護予防事業です。
市区町村が住民の互助(ごじょ)や民間サービスと連携しながら、サービスの提供を行います。
高齢者の生活機能の改善や、生きがいづくりを重視した介護予防に役立つ事業が、一般介護予防事業のあらましです。
総合事業サービスが創設される前は、介護予防事業を利用するには要介護認定を申請したのちに、非該当(自立)という認定を受ける必要がありました。
しかし総合事業サービスは要件を満たせば、65歳以上のすべての方が利用できます。
次の項目からは、総合事業サービスの1つである介護予防・生活支援サービス事業にスポットを当てて、解説していきます。
その② 介護予防・生活支援サービス事業の対象者
介護予防・生活支援サービス事業の対象者は、要支援者または基本チェックリストの該当者です。
要支援者は要介護認定の申請を行い、要支援1もしくは要支援2の認定が下りた方となっています。
基本チェックリストは、日常生活の様子や身体機能・栄養、外出頻度などを確認する項目で構成されています。
要介護認定の申請を行っていなくとも、基本チェックリストは利用することが可能です。
基本チェックリストの結果が判明するには、即日から3日程度の時間が必要になります。
その③ 介護予防・生活支援サービス事業の内容
介護予防・生活支援サービス事業の内容は、介護予防や生活支援を必要とする高齢者のための訪問型と通所型のサービスです。
これには総合事業サービスが創設される前に行われていた、要支援者を対象とする訪問介護とデイサービスも含まれます。
またその他の生活支援サービスや介護予防マネジメントも、介護予防・生活支援サービスの内容です。
それでは具体的なサービスの種類と内容について、次の項目にて確認していきましょう。
その④ サービスの類型
サービスの類型は4つに大別されます。
市区町村によって異なりますが、次にご紹介するサイトにある構成が、介護予防・生活支援サービスの体系となっています。
参考サイト:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000088276.pdf
各サービスの内容をまとめたのが、以下の表です。
上記で紹介した総合事業サービスの体系やサービス内容は、市区町村によって異なる場合があります。
総合事業サービスを利用する方が住んでいる、市区町村の役所や地域包括支援センターにて、具体的にどのようなサービスが利用できるか確認することをおすすめします。
総合事業のサービスは従来のものとどう違う?
つづいて総合事業のサービスは従来のものと、どう違うかを解説していきます。
その① 市町村による事業の運営
1つ目が市町村による事業の運営です。
総合事業サービスが創設される前は、国の介護保険制度によって施設基準や介護報酬が定められており、全国一律でした。
そのため市町村によっては、実態に即していない基準や報酬で介護サービスの提供が行われていました。
総合事業サービスでは市町村が事業の運営を行います。
市町村が運営することにより、自治体が自由に施設基準や報酬を設定でき、地域の実態に応じたサービスの提供が可能になります。
一方で地域ごとに施設基準や介護報酬が異なるため、サービスの質や量の格差が起きるのではと懸念されています。
その② 地域の人的資源・社会資源の活用
2つ目が地域の人的資源・社会資源の活用です。
従来の介護予防サービスでは介護事業所が主となり、サービスの提供を行っていました。
総合事業サービスではNPOやボランティア団体、民間企業、地域住民によるサービスの提供が可能となります。
地域の人的資源や社会資源を利用できるようになり、地域活力の向上につながることが期待されています。
その③ 利用者のニーズに添った柔軟な対応ができる
3つ目が利用者のニーズに添った柔軟な対応ができる点です。
総合事業サービスでは要介護認定の非該当(自立)の方をはじめとして、引きこもりや栄養状態が悪い方などもサービスを利用できます。
このことは総合事業サービスが創設される前は、サービスの利用に結びつかなかった高齢者も、サービスの利用が可能になったことを意味してます。
またチェックリストを活用することにより、結果が出るまでの時間が短縮でき、短時間でサービスの利用開始が可能となることも、従来の介護予防サービスとは異なる点です。
その④ リハビリ専門職等の関与
4つ目がリハビリ専門職等の関与です。
地域リハビリテーション活動支援事業が総合事業サービスに追加となり、地域の介護予防に取り組むことが可能となりました。
リハビリ専門職と地域包括支援センターが連携し、地域の高齢者を支援できることも、総合事業サービス創設前と比較して違う点となっています。
サービスを利用するまでの流れ
さいごにサービスを利用するまでの流れをご紹介します。
サービス利用までの流れの一例は、以下の通りです。
- 市区町村の相談窓口や地域包括支援センターで、総合事業サービス利用または要介護認定の相談をする
- 基本チェックリストで心身の状態を確認する。結果次第で、要介護認定の申請を検討する
- 手順3の結果、対象者になった場合、地域包括支援センターでケアプランの作成をしてもらう
- 利用開始
具体的な利用までの流れは、市区町村によって異なるケースがあります。
まずは市区町村の役場内にある介護保険を担当している課や、地域包括支援センターへおもむき、総合事業サービスの利用について相談するとよいでしょう。
まとめ
総合事業サービスの内容や従来のサービスとの違い、総合事業サービスを利用するまでの流れに関して解説してきました。
総合事業サービスについて、理解が深められたのではないでしょうか。
介護保険の総合事業をまとめると
- 総合事業サービスは、介護保険から切り離された要支援の介護予防給付の一部(訪問介護と通所介護)に、従来の市区町村で行われていた介護予防事業をあわせた制度である
- 総合事業サービスは訪問型サービス、通所型サービス、その他の生活支援サービス、そして介護予防マネジメントにわけられる
- 総合事業サービスを利用するには、市区町村の介護保険を担当する課や地域包括支援センターに相談へおもむき、基本チェックリストで心身の状態を確認する必要がある
ということがあります。
総合事業サービスは、要介護認定の非該当に該当した方でも利用することが可能です。
総合事業サービスについて気になる方は、市区町村の介護保険を担当している課や、地域包括支援センターにおもむき、相談することからはじめましょう。