介護保険制度は65歳以上の高齢者が介護が必要になった際に、必要なサービスを受けられる制度です。
少子高齢化が進み、介護保険の財源は不足しているのが現状です。
この記事では、介護保険の財源構成がどのようになっているのか、詳しく解説します。
介護保険制度はどのようにして成り立っているか
介護保険制度は、2000年に施行された、介護が必要になった高齢者を社会全体で支える仕組みです。
介護が必要となった方が、介護給付を受けられる保険です。
介護保険には40歳になった月から全ての人が加入することになり、支払い義務が生じます。
加入者は年齢によって2種類に分類され、65歳以上の人は、「第1号被保険者」、40歳以上65歳未満の人は、「第2号被保険者」となります。
第1号被保険者は、介護が必要であると認定を受けると介護給付を受けることができますが、第2号被保険者の場合、16種類の特定疾病のいずれかに該当し、要介護認定を受けた人のみ、介護給付を受けることができます。
介護保険制度は、40歳以上の加入者(被保険者)と、加入者が住んでいる自治体(保険者)、そして介護保険サービスを提供する事業者の3者で成り立っています。
介護保険の財政構成
介護保険制度は、介護保険料と公費(税金)で運営されています。
要支援・要介護の認定を受けた方が利用する介護保険サービスの費用(介護給付費)は、原則としてかかった費用の1割をサービス利用者が負担します。
ただし、一定以上の所得者は自己負担割合が2割もしくは3割となります。
介護保険料の財源は、40歳以上の人の保険料と国・県・市の公費(税金)がそれぞれ2分の1ずつで構成されています。
保険料が50%、税金が50%の割合です。
その① 公費負担
介護給付費に必要な費用は、被保険者の保険料の負担が過大なものとならないよう、全体の約50%が国・県・市の公費(税金)から負担されています。
その② 保険料負担
介護保険のサービスに必要な費用のうち、公費負担を除く残り50%は、40歳以上の方が納める介護保険料で賄われています。
40歳以上65歳未満で会社の健康保険や国民健康保険に加入されている方(第2号被保険者)は、健康保険料と合わせて介護保険料を健康保険の保険者に納付します。
65歳以上の方(第1号被保険者)は、健康保険料とは別に介護保険料を市町村(介護保険者)に納めます。
公費負担の割合について
公費負担の割合は、施設等給付費(都道府県知事が指定権限を有する介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院、介護療養型医療施設、特定施設に係る給付費)の場合と、居宅給付費(施設等給付費以外の給付費)の場合で異なります。
居宅給付費の場合は、国の公費が約25%、県の公費が12.5%、市の公費が12.5%です。
施設等給付費の場合は、国の公費が約20%、県の公費が17.5%、市の公費が12.5%です。
保険料負担の割合について
保険料負担の割合は、第1号被保険者、第2号被保険者によって異なります。
第1号被保険者の保険料負担割合は全体の23%、第2号被保険者の保険料負担割合は全体の27%です。
この負担割合は、日本全国の人口比率にもとづいています。
保険料について
第1号被保険者の保険料は、その方の所得に応じて市町村が決めます。
そのため保険料は全国一律ではなく、自治体により差があります。
第2号被保険者の保険料は、加入している医療保険の算定方法に基づいて決まります。
介護保険料はずっと同じ料金ではなく、3年に1回見直しが行われます。
見直しの度に介護保険料は上がり続けています。
その① 最も高い自治体・最も安い自治体
全国で最も介護保険料が高い自治体は福島県葛尾村であり、月9800円です。震災の影響から、高齢の単身者の需要が増えているためと言われています。
高齢者の多い過疎地では、保険料が高くなる傾向にあり、介護保険料の格差は、以前から問題になっています。
一方、全国で最も介護保険料が低い自治体は北海道威子府村であり、月3000円です。
これは、全国最高の福島県葛尾村と比較すると、3倍以上の差があります。
しかし、介護施設がなく給付が抑えられているという面もあり、安い保険料が一概に良いとは言えません。
その② 今後保険料はどうなる?
介護保険料の見直しは3年に一回行われています。
近年は高齢化が進んでいるとはいえ、3年毎見直される度に65歳以上の方の介護保険料は上がり続けています。
20年前の介護保険制度開始当初は第1号被保険者の介護保険料は全国平均で2911円でしたが、2018年からの3年間の全国平均は5869円であり、20年間で約2倍の保険料となっています。
直近の3年前と比較しても、全国平均は6.4%値上がりしています。
今後も介護保険料は上昇していくと予想されます。
まとめ
この記事では、介護保険の財源構成について、詳しく解説しました。
以下にこの記事の内容について、まとめます。
- 介護保険制度は、40歳以上の加入者(被保険者)と、加入者が住んでいる自治体(保険者)、そして介護保険サービスを提供する事業者の3者で成り立っています。介護保険料の財源は、40歳以上の人の保険料と国・県・市の公費(税金)がそれぞれ2分の1ずつで構成されています。
- 公費負担の割合について、居宅給付費の場合は、国25%、県12.5%、市12.5%です。施設等給付費の場合は、国20%、県17.5%、市12.5%です。保険料負担の割合について、第1号被保険者は23%、第2号被保険者は全体の27%です。
- 第1号被保険者の保険料は全国一律ではなく、自治体により差があり、その差は約3倍です。見直される度に65歳以上の方の介護保険料は上がり続けており、20年間で約2倍担っています。今後も介護保険料は上昇していくと予想されます。
少子高齢化は今後さらに進むことが予想され、介護保険の財源の不足は避けることのできない問題です。
介護保険料も見直しの度に上がっており、自己負担の引き上げや、軽度者向けのサービスを保険から外すなどの審議も取りざたされています。
それでも財源が足りない場合は、被保険者を若年世代へ拡大することも考えられます。
これからの時代は、介護保険制度は高齢者だけのものではなく、若者も支えていく制度となるかもしれません。
若年世代も、介護保険制度についての知識をつけていく必要があります。