住宅改修が必要になった時に一番初めに考えるのは、手すりの設置です。
同じ手すりでも場所や用途によって、設置する位置や材質は様々です。
この記事では、住宅改修の手すり設置について解説します。
手すりはこんなに便利!
日常生活における高齢者の事故の約8割は転ぶ事故と言われています。
高齢になると筋力が低下し、歩く、立ち上がる、階段を昇るといったちょっとした動作も徐々に不安定になっていきます。
それまで何ともなかった日常的な動作のなかでも、バランスを崩して転倒してしまう危険が高まります。
また、骨粗鬆症などにより骨ももろくなっているため、転倒で骨折し、長期入院を余儀なくされ、認知症や廃用症候群などの二次障害を引き起こす可能性もあります。
ただ、日常生活での転倒事故は、手すりを設置するなどの対策を行うことで、ある程度予防することが可能です。
手すりは自宅の色々な場面で私たちの身を守ってくれます。
その① 廊下などで転倒を防ぐ
廊下を移動中に、足元が滑って転倒しそうになったときでも、手すりがあればしっかりと身体を支えてくれ、転倒事故を防ぐことができます。
その② 段差などで転落を防ぐ
高齢になると足が上がりにくくなり、少しの段差でもつまずきやすくなります。
また、階段では転落事故が多くとても危険です。
段差や階段では、しっかりと身体を支えることができる手すりがあると、安心です。
その③ トイレや浴室で動作が快適になる
トイレでの便器の立ち座り動作や、浴室での浴槽のまたぎ動作は、高齢者には辛い動作であり、また滑りやすいため転倒事故も多く起こります。
このような動作も手すりがあれば、安全で楽に行え、動作が快適になります。
その④ 身体のバランスを補助してくれる
低いところから立ち上がったり、靴を脱ぎ履きしたり、また中腰で行う動作などは、身体のバランスを崩しやすいです。
足腰の筋力がしっかりとあれば、バランスを保つことができますが、高齢者は足腰から筋力が弱っていくため、身体のバランスを失い転倒の危険性があります。
このような時に手すりが身体を支えてくれることで、バランスを保ちやすくなり、安全です。
その⑤ 暗いところで誘導役になる
高齢になると視力の低下や視野の狭窄などが起こり、暗い場所では危険が増します。
夜間トイレへ行く際など、手すりがあることで、それを伝って歩いていくことで、誘導役になってくれます。
足元灯などで明るくしてあるとなお良いでしょう。
住宅改修で手すりを設置する費用の目安
住宅改修で手すりを設置する場合の費用ですが、手すりの大きさや壁への補強の有無などによっても異なります。
玄関へ1m以内の長さの手すりを設置する場合、0.8〜2.5万円が相場です。
1階〜2階間の階段へ手すりを設置する場合、壁側への設置は5万円程度、切り欠き側に支柱や手すり子のある飾り手すりを設置する場合、約30万円〜が相場です。
廊下は家によって長さがまちまちですが、1mあたり1〜3万円ほどが相場で、平均的には8万円ほどです。浴室の手すり設置は、壁面の補強を含めて3万円ほど、トイレの場合も4万円ほどが相場です。
ただしトイレ用手すりにおいて、跳ね上げ式など複雑なものは10万円を超える場合があります。
手すりの設置は自治体によるバリアフリーリフォーム補助金制度や、介護保険の住宅改修制度が適用されます。
バリアフリーリフォーム補助金制度は合計50万円以上のリフォームであることが要件となりますので、手すりの取り付け以外にもバリアフリーに関するリフォームをセットで行う場合におすすめの制度です。
介護保険の住宅改修制度は、要介護・要支援認定を受けた方が、自宅で指定のバリアフリーリフォームを行うと、かかった費用のうち20万円を上限として9割(自己負担割合が2〜3割の方は7〜8割)が助成される制度です。
事前に役所への申請の届け出が必要であるため、担当のケアマネージャーに相談しましょう。
これら以外にもお住いの自治体によっては、高齢者・障害者の自立支援を促すため、バリアフリーリフォームに独自の助成制度を設けている場合があります。
手すりの高さや位置について
- 手すりの高さは80cm前後(750〜850mm)を目安に本人の使いやすい位置に、握りやすい太さと形状を考えて取り付けます。
- 手すりをつける位置・形状を考えて、壁の補強をしておく必要があります。
その① トイレ
トイレは狭い空間で複雑な動作を行うため、身体を安定させ、転倒予防のために手すりが必要不可欠です。
トイレの手すりに関しては、出入り口の動作安定のために縦手すり、便器の立ち座りと座位の安定のためにL型手すり、身体の向きを変える・車椅子から便器に移乗するために横手すりなどが適切です。
また、L字型手すりの取り付け位置は、縦手すりは便器先端から200~300mm、横手すりは便器上端から220~250mmが適当です。
その② 浴室
浴室は水で濡れているため足元は滑りやすく、浴槽をまたぐ際によろけて転倒の危険性があります。
浴室の手すりに関しては、出入り口ドア・段差に縦手すり、浴槽をまたぐために縦手すり、浴槽内の立ち座りのためにL型手すり、浴槽内の移動のために横手すりなどが適切です。
また、浴室の手すりは水濡れに耐える材質を選び、手すりの取り付け位置は、浴室の配置や動作に合わせた位置に付けましょう。
その③ 洗面所や脱衣所
洗面所や脱衣所では、顔を洗ったり、歯を磨いたり、服を着替えたりなどの、中腰の動作が多く、身体のバランスを崩しやすいため、身体を支える手すりがあると安全です。
洗面所や脱衣所の手すりに関しては、出入り口ドアの安定のために縦手すり、前屈み・中腰を安定させるために横手すり、立ち座りを楽にするためにL型手すりなどが適切です。
その④ 寝室や居室
寝室や居室は、ベッドやソファーなど、低いところから立ち上がる動作があり、この動作は高齢者には辛く、身体のバランスを支える手すりがあると安全に動作が行えます。
寝室や居室の手すりに関しては、出入り口ドアの安定のためにドアの近くの壁に縦手すり、移動の安定のために壁に横手すり、ベッドの縦手すり、ベッドの移動バーなどがが適切です。
その⑤ 階段
階段の手すりは、上下移動の連続であり、転落事故が多い場所でもあるため、しっかりと握れる太さと手すりの高さにする必要があります。
階段の手すりは両側設置が望ましいですが、片側のみの場合は下る時の利き腕側です。
手すりの端部は水平に200mm以上伸ばします。高さは750〜850mmが標準ですが、その方に合った昇り降りのしやすい高さに取り付けましょう。
新築住宅においても階段手すり設置が義務付けられました。
その⑥ 廊下
廊下の手すりは、水平移動の安定のために連続した移動用横手すりです。
床からの高さは750~850mmが標準ですが、その方に合った伝い歩きしやすい高さに取り付けましょう。
手すりの支持金具は下から受けるものが良いです。
端部にはエンドブラケットをつけましょう。
その⑦ 玄関
玄関は履物を脱ぎかえるときに、体の上下移動で体のバランスを失いやすく、転倒しやすいです。
玄関の手すりに関しては、ふらつきを安定するために縦手すり、立ち座りを楽にするために横手すり、縦手すりなどが適切です。
土間と上がりかまちとの段差が大きい場合は、土間にベンチを置く、段差解消のステップを置くなどすると良いです。
その⑧ 屋外
屋外の手すりに関しては、スロープの移動は斜面に沿った手すりを、階段には階段勾配に合わせた手すりを取り付けましょう。
スロープの手すりは統一した高さで連続して設置します。
手すりの高さは750〜850mmが標準ですが、その方に合った昇り降りのしやすい高さに取り付けましょう。
屋外の手すりはステンレスなど対候性の高い材質であることが必要です。
しかし、屋外は日光や気温の影響を受けやすく、夏は熱く冬は冷たくなりがちです。
樹脂で被覆された手すりを選ぶと良いでしょう。
まとめ
この記事では、住宅改修の手すり設置について、詳しく解説しました。
以下にこの記事の内容についてまとめます。
- 手すりを設置することで、廊下での転倒、階段での転落を防ぐことができ、トイレや浴室での複雑な動作が快適に行えるようになり、身体のバランスを補助してくれます。また、暗いところでの誘導役にもなり安全です。
- 住宅改修で手すりを設置する場合の費用は、玄関など小さい手すりでは0.8〜2.5万円、階段壁側は5万円、階段切り欠き側は30万円、廊下は平均8万円、浴室・トイレは3〜4万円ほどが相場です。自治体や介護保険の制度により助成を受けることができます。
- 手すりの高さは80cm前後(750〜850mm)を目安に本人の使いやすい位置に、握りやすい太さと形状を考えて取り付けます。また、手すりをつける位置・形状を考えて、壁の補強をしておく必要があります。
業者に手すりの設置を依頼すると高額になるため、自分で設置しようと考えている方もいると思いますが、自治体のリフォームの制度や介護保険の住宅改修の制度なども利用でき、自己負担は思っているよりも安く済みます。
手すりは業者に工事を行ってもらうのが、安全で安心です。
一度業者に見積もりを取り、検討してみることをオススメします。