40歳を迎えると、介護保険料の徴収が開始されます。
介護を必要になるのが先のことなのに、なぜ介護保険料を支払わなければならないのかと、疑問に感じる方もいることでしょう。
今回は介護保険の仕組みやサービスを受けるための条件、介護保険の財源等について解説していきます。
なぜ介護保険料を支払わなければならないのか、疑問がある方は参考になさってください。
介護保険の仕組み
介護保険の施行前から、社会全体で高齢化が進行することによって、介護が必要となる人が増加することが予想されていました。
また少子化や核家族化などの要因により、家族だけで介護を担うことが、難しい状況が浮き彫りになってきます。
そこで社会全体で、介護を必要な高齢者を支える仕組みが必要になり、2000年4月から施行されたのが介護保険制度です。
介護保険の仕組みを理解するにあたり、まずは実施主体から確認してきましょう。
その① 実施主体
介護保険の実施主体は市区町村です。
市区町村が保険者となり、介護保険料と公費を財源として、介護保険の運営が行われています。
その② 加入者
介護保険の加入者は、市区町村に住所を有する40歳以上の方です。
介護保険の加入者は被保険者とも言い換えることができ、年齢によって第1号被保険者と第2号被保険者にわかれます。
第1号被保険者は65歳以上の方が、第2号被保険者は40歳以上64歳以下の方が該当します。
その③ 保険料
第1号被保険者であれば、年金からの天引きや納付書、口座振替により、介護保険料を納めることになります。
それに対して第2号被保険者は健康保険料に上乗せし、介護保険料が納付されます。
健康保険料の納付は、国民健康保険に加入している方であれば納付書や口座振替で、協会けんぽや組合健保に加入している方は、給与からの天引きにより行われます。
なお市区町村によって介護保険料は異なります。
これは市区町村における要支援・要介護認定者の数や、介護サービスの利用状況によって、介護保険料が定められるためです。
加入者(被保険者)によってサービスを受けられる条件が違う
被保険者の種類によって、介護サービスを受けられる条件が違うため注意が必要です。
それぞれの被保険者ごとに、介護サービスを利用するための条件を確認していきましょう。
その① 第1号被保険者
65歳以上の第1号被保険者は、要支援・要介護認定を受けることが、介護サービスを利用するための条件です。
市区町村の介護保険を担当する課に、要介護認定の申請を行うことにより、要支援・要介護認定を受けることができます。
もし要支援・要介護認定について疑問に思うことがあれば、地域包括支援センターに相談へおもむくとよいでしょう。
地域包括支援センターは自治体に住む高齢者をサポートするために、設置されている施設です。
地域包括支援センターの所在地は、インターネットや市区町村の役場にて確認することができます。
その② 第2号被保険者
第2号被保険者は要支援・要介護認定を受けるほかに、介護保険の特定疾病に該当することが、サービスを受けるための条件です。
介護保険の特定疾病とは心身の病的加齢現象と、医学的に関係があると考えられる疾病を指します。
具体的には以下の疾病が、介護保険の特定疾病にあたります。
【介護保険の特定疾病】
【参考サイト:厚生労働省、特定疾病の選定基準の考え方】
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo3.html
第2号被保険者が介護サービスを利用するには、医師の診断が必要不可欠です。
介護保険の特定疾病について確認したいことがある場合は、かかりつけ医をはじめとした、医療機関に問い合わせることをおすすめします。
第2号被保険者が介護サービスを利用するための、もう1つの条件である要支援・要介護認定は、市区町村の介護保険を担当する課へ申請を行います。
要支援・要介護認定の申請に不安がある方は、自治体に設置されている地域包括支援センターへ、相談におもむくのも選択肢の1つです。
介護保険の財源構成について
介護保険の財源は公費50%、介護保険料50%の構成です。
公費の内訳ですが、以下の通りとなっています。
【介護保険 財源:公費の内訳】
介護保険の財源における、公費の半分を国が負担していることが確認できます。
そして、公費の残りを都道府県と市区町村が半分ずつ、負担することになります。
つづいて介護保険の財源における、保険料の割合についてです。
保険料の割合は以下の通りとなっています。
【介護保険 財源:保険料の内訳】
40歳以上64歳以下の第2号被保険者が、介護保険の財源における、保険料の半分以上を占めていることが確認できます。
保険料に占める割合ではなく、介護保険の財源全体に占める割合では3割ほどが、第2号被保険者の保険料によってまかなわれています。
対して第1号被保険者の保険料は、介護保険の財源全体の2割弱です。
介護保険の財源が公費だけでなく、保険料によってまかなわれていることを、胸に留めておかなければなりません。
将来保険料の支払い年齢が引き下げられる!?
将来、介護保険料の支払い年齢が、現在の40歳から引き下げられる可能性があります。
2016年には介護保険料の支払い年齢を下げるよう、社会保障審議会の介護保険部会に提案されました。
この時には時期尚早との声が多く、介護保険料の支払い年齢の引き下げが見送られた経緯があります。
【参考サイト:日本経済新聞、介護保険料負担 年齢引き下げ反対が大勢】
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS31H2T_R30C16A8PP8000/
なぜ介護保険料の支払い年齢を引き下げるよう提案されたかというと、介護費用の増大が背景にあります。
介護保険制度が開始された2000年度に3.6兆円だった介護費用は、2018年度で11.1兆円まで膨れ上がりました。
2000年度と比較し、2018年度の介護費用は約3倍です。
【参考サイト:厚生労働省、介護保険制度をめぐる状況について 19ページ】
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000482328.pdf#search='%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E4%BF%9D%E9%99%BA+%E8%B2%A1%E6%BA%90+%E6%8E%A8%E7%A7%BB%E3%80%8D'
さらに少子高齢化が加速し、2055年では全人口に占める65歳以上の割合が、38%まで増加すると予想されています。
【参考サイト:厚生労働省、介護保険制度をめぐる状況について 4ページ】
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000482328.pdf#search='%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E4%BF%9D%E9%99%BA+%E8%B2%A1%E6%BA%90+%E6%8E%A8%E7%A7%BB%E3%80%8D'
少子高齢化が進行し、介護保険制度の財源が増加傾向にあることから、介護保険の財源が厳しい状況へおちいると懸念されています。
先ほど紹介したように財源の約3割は、第2号被保険者の保険料によってまかなわれています。
第2号被保険者の保険料が減少すれば、介護保険の財源はより差し迫ったものになるでしょう。
そもそも介護保険制度は、社会全体で介護が必要な高齢者を支えていく仕組みです。
介護を必要とするのがまだまだ先である40歳の方であっても、介護保険制度を支えていくために、介護保険料の納付が必要となるのです。
まとめ
介護保険の仕組みや、サービスを利用するために必要な条件、介護保険の財源に関して解説してきました。
介護保険料について、理解が深められたのではないでしょうか。
40歳でも介護保険料を支払うのはなぜかをまとめると
- 介護保険の実施主体は市区町村であり、加入者は40歳以上の市区町村に住所を有する方である。
- 介護保険の財源のうち、第2号被保険者(40歳以上64歳以下)の保険料は、約3割を占める
- 介護保険の財源が増加傾向にあり、少子高齢化が進行する背景の中で、40歳を迎えた方でも、介護保険料を支払わなければならない
ということがあります。
40歳を迎えた方は、原則的に介護保険料を納付する必要があります。
将来、介護サービスの利用予定がない方も同様です。
健康状態や経済状況により、介護保険料の納付が難しい方は、市区町村の役場に相談し、可能な限り介護保険料を納めるようにしましょう。