日本の高齢化はますます進み、高齢化率が21%を超える「超高齢社会」に突入しています。
このまま高齢化が進んでいくと、今後日本の介護福祉はどうなってしまうのでしょうか?
この記事では、日本の介護福祉の現状、今後について詳しく解説します。
少子高齢から見る日本の介護問題
我が国は、人口に占める高齢者の割合が増加する「高齢化」と、出生率の低下により若年者人口が減少する「少子化」が同時に進行する少子高齢化社会となっています。
我が国の65歳以上の高齢者人口は、昭和25(1950)年には総人口の5%に満たなかったのですが、45(1970)年に7%を超え、さらに、平成6(1994)年には14%を超えました。高齢化率はその後も上昇を続け、現在は27.3%に達しています。
また、生産年齢人口(15~64 歳) は、平成7(1995)年に8,716万人でピークを迎え、その後減少に転じ、25(2013)年には7,901万人と8,000万人を下回っています。
このような我が国の深刻な少子高齢化は介護問題にも繋がっています。
その① 社会保障費の財源問題
介護保険制度では、サービスを利用する要介護認定を受けた人が料金の1割(一定所得以上の方の場合は2~3割)を負担し、残りは公費(税金)と40歳以上の人が支払う介護保険料で半分ずつ賄われています。
日本の社会保障制度は、現役世代が高齢者を支える形となっていますが、少子高齢化が進むと、社会を支える現役世代の人口が減り、高齢者の人口が増え、1人の高齢者を支えるための生産年齢人口(15~64歳)が年々減っていくことが予想されます。
少子高齢化が進み、現役世代の人口が減ることで、介護保険制度の財源となっている税金の収入が減り、介護保険の財源が不足していき、すべてに対応するには、財政面で厳しい状況となります。
その② 核家族問題
ひと昔前は、長男が家を継ぎ、三世代同居が当たり前で、専業主婦の方も多くいました。
親の介護が必要になった場合、専業主婦のお嫁さんや娘さんが、親や親や義理の親の介護をするというケースが多かったです。
しかし、現在では核家族化により、親世代は一人暮らしや老夫婦での暮らしが多くなり、子世代も共働きの家庭が多いです。
遠方に住んでいる場合も多く、親の介護を子供が行うというケースは少なくなっています。
その③ 老老介護・認認介護
高齢化が進み、我が国の平均寿命も年々伸びています。
親の介護をする子供の世代も65歳以上の高齢者という場合があります。
また、老夫婦二人暮らしの場合、高齢の妻が高齢の夫を介護する形になります。
このように高齢者が高齢者を介護する「老老介護」が増えています。
また、高齢になると認知症のリスクも高まり、認知症の人が認知症の人を介護する「認認介護」という場合もあります。
現在の介護施設での現状
核家族化や老老介護・認認介護などにより、自宅で介護を行うことが難しく、介護施設へ入所を考える方も多くいます。
しかし、現在の介護施設では、現状以下のような問題があります。
その① 費用が高すぎる
比較的費用の安い特別養護老人ホームなどの介護保険施設は、人気であり待機者も多くいるため、入所することは簡単ではありません。
近年、介護保険外の有料老人ホームが増加傾向にあり、競争が激化するなか他ホームとの差別化をはかっています。
「費用の安さを売りにするところ」、「手厚いサービスを売りにするところ」、「食事へのこだわりを売りにするところ」など様々です。
当然、こういったサービスが充実するほど月額費用が上昇します。
その② 希望するサービスが受けられない
介護の人手不足が深刻化しており、事業者の側もサービスを提供したくてもできない、利用者が必要なサービスを受けられないという問題があります。
人手不足の影響により、部屋が空いていても入所を断っている施設や、ショートステイの受け入れ人数を減らす施設、サービスを止める施設などもあります。
その③ 万年人材不足
今年4月の介護の仕事の有効求人倍率は2.69倍であり、これは仕事を求めている人が7万人あまりいたことに対し、その2.69倍の19万人以上の介護の求人があったことを示しています。
この介護の人材不足は今後さらに深刻になる見通しです。
団塊の世代が、すべて75歳を超える2025年には介護が必要になる人が一気に増え、厚生労働省は38万人の介護職員が不足すると推計しています。
政府は家族の介護の負担を減らすため、老人ホームなどを増やして50万人分の受け皿を作るとしています。
しかし、この38万人の人手不足をなんとかしなければサービスを十分に提供することはできません。
これからの日本の介護福祉は大丈夫?
我が国は少子高齢化により、介護福祉さまざまな問題があります。
このまま少子高齢化が進めば、我が国の介護福祉は成り立たなくなってしまいます。
介護保険の財源不足に対しては、被保険者の介護保険料の引き上げや一定所得以上の方の負担割合の増大などがなされてきました。
75歳以上の介護保険の自己負担を2割に引き上げたり、要介護度の軽い人向けのサービスを保険からはずすなどの審議が取りざたされていますが、それでも財源が足りなくなると、40歳よりも若いうちから介護保険料を支払わないといけなくなる日が来るかもしれません。また、介護保険だけでは賄いきれない部分は、近所の人たちの協力やボランティアなどを活用していくことも考えていかなければなりません。
介護施設の人手不足に対しては、外国人労働者の受け入れが進んでいます。
しかし、日本語の問題や介護の技術を学んで現場で働けるようになるには時間がかかります。
人手不足を解消するには国内での人材確保にも、より力を入れる必要があります。
まとめ
この記事では、日本の介護福祉の現状、今後について、詳しく解説しました。以下にこの記事の内容についてまとめます。
- 我が国には少子高齢化社会により、社会保障費の財源問題、核家族問題、老老介護・認認介護などの介護問題があります。
- 介護施設においては、費用が高すぎる、希望するサービスが受けられない、人材不足などの問題があり、介護が必要な人に十分な介護が行き渡っていない現状です。
- 介護保険の財源不足に対して、今後は介護保険料の支払いを若年層から行うなどの対応が必要になる日もくるかもしれません。介護施設の人手不足に対しては、外国人労働者の受け入れが進んでいます。
日本は超高齢社会へ突入し、2025年には全人口の30%、2055年には38%が65歳以上の高齢者になる予想です。
介護保険制度も今のままの制度を進めていくことは難しく、時代の流れに合わせて改正が必要です。
若い世代や外国人など、今まで以上に幅広い人たちの協力が必要となり、社会全体で高齢者を支えていく必要があるでしょう。