大勢の高齢者を預かる介護施設。安全で快適な暮しを提供するために、環境管理は重要な課題です。
この記事では、エアコンの温度設定に始まり、環境管理とはどんなことに気を付けるべきなのかをご説明します。
高齢者と温度調整の重要性
年齢を重ねると、体の様々な機能が衰えてくるものですが、体温調節もその一つです。
一般的に、暑い・寒いを感じにくくなりがちで、若い人に比べて熱中症や低体温症になる確率が高いです。
これはどういうことでしょうか?
簡単に説明しましょう。
若い時には、外気温の高い、低いに関係なく、「快適だ」と感じる温度は一定しています。
外気温35度の真夏日にエアコンをかけて快適と感じる温度と、外気温5度の冬の日に暖房をかけて快適と感じる温度が、ほぼ一致しているということです。
ところが、高齢者の場合は、暑い・寒いと感じる感覚が弱っています。
そのため、真夏日に快適と感じる温度はやや高め、真冬日に快適と感じる温度はやや低めであったりするのです。
また、その逆もあります。
夏の暑い日、冷房をキンキンに効かせる、冬の寒い日には暑くてのぼせるくらい暖房を効かせるなどです。
また、体温調節だけでなく、汗をかきにくい、体内の水分量が少ない、喉が渇いても気づかないなど、いろいろな機能が低下しているものです。
このようなことにより、知らず知らずのうちに、熱中症、低体温症にかかりやすくなってしまうのです。
高齢者の健康を守る一つの条件として、介護施設における適切な温度調節はとても重要な要素です。
介護施設で大切な環境管理のポイント
その① 温度
介護施設の環境管理のための第一要素は温度管理です。
上記でも触れたように、高齢者は暑い・寒いという感覚が弱くなる傾向にあります。
そのため、知らず知らずのうちに、体が冷え切ってしまったり、逆に暑さを訴えることなく熱中症にかかってしまうこともあります。
室内温度が常に適正であることは、高齢者の健康のために必要不可欠です。
また、温度調整機能も弱っていますので、大きな温度差はヒートショックの原因となります。
寝室、トイレ、廊下など施設全体の温度にも気を配り、各場所の温度差を5度以内に保つとよいでしょう
その② 湿度
人が快適に過ごすためには、湿度が大きく関与しています
。
真夏の暑い日は無理に温度を下げるという前に、湿度を調整するだけで快適さがグッと上がります。
特に日本の夏は湿気が高くジメジメとしていますので、この湿気を取り除くだけでもずいぶんと過ごしやすくなります。
逆に、真冬の乾燥している日には、適切な湿度に上げることで暖かく感じやすくなります。
介護施設内では温度計だけでなく湿度計も設置し、エアコンのドライ機能、加湿器などをフル回転させ、温度と湿度のバランスをみながら調整していきましょう。
その③ 明るさ
人は、本来、朝日と共に目覚め、日の入りと共に眠るものです。
朝、太陽が昇り徐々に明るくなり、夕方は日が落ちてだんだん暗くなっていく、この太陽に導かれた自然界のサイクルは、人間の体に大きな影響を与えています。
太陽の光を浴びることで体が目覚めます。そしいて太陽が沈み薄暗くなると、不思議な事に眠気を感じてくるのです。
介護施設での生活でもこの自然なサイクルに反しない生活ができるよう、朝はまず、「気持ちよく陽の光を感じる」環境を作りましょう。朝はカーテンを開けて、気持ちよい声掛けをしてあげましょう。
日当たりのよい寝室、朝食会場などは、入所者の健康的な一日の始まりのために欠かせない設備の一つかもしれません。
介護施設で適したエアコンの温度・湿度 | 温度 | 湿度 |
---|---|---|
冬 | 20~22度 | 45~55% |
春・秋 | 18~20度 | 55~70% |
夏 | 24~28度 | 45~55% |
明るさにひと工夫~健康的な生活を送るために
高齢者の中には、時間に拘束がないため朝はゆっくり寝ていたい、昼間も昼寝をしていたいという人も少なくありません。
朝も昼もカーテンを閉めたままにする人もいます。
しかし、朝や昼間にしっかりと太陽の光を感じられる環境が、その日の良い睡眠を導いてくれます。
その点からいうと、真っ暗になる遮光カーテンよりも、うっすらと光が通るカーテンの方がおすすめです。
また、慣れない介護施設で夜真っ暗にすることに抵抗があり、一晩中電気をつけておくという人もいます。
しかし、夜中に電気がついていると熟睡することができません。
寝る前に強い光を浴びるだけでも睡眠の妨げになります。
足元灯やダウンライトの設置、本を読みたい人には読書灯を用意するなど、安心してよい睡眠をとれる環境を整えてあげましょう。
まとめ
高齢になるとだれでも様々な機能が弱ってくるものです。
介護施設で生活する高齢者の方々が、安心安全に暮すためには、弱った機能を補うための万全な環境管理が必要です。
その一つが「温度・湿度・明るさ」。
体温調節機能が弱っている高齢者にとって、快適な温度と湿度は、健康を守るために欠かせない条件です。
また、太陽の光や明るさの調整も、健康的で人間らしい毎日を送るための大切な要素なのです。