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介護施設で虐待・不適切ケアの疑いへの対応策は?通報はどこにすればいい?

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介護施設で虐待・不適切ケアの疑いへの対応策は?通報はどこにすればいい?
虐待を行っている本人にその意思がなくとも高齢者の、人としての尊厳を奪う行為をすれば、それは高齢者虐待にあたります。

そして高齢者虐待が疑われる場合、通報義務が生じます。

現在介護が必要な方が身の回りにいなくとも、高齢者虐待は他人事ではありません。

今回は高齢者虐待の種類や、高齢者に対する不適切ケア、高齢者虐待が疑われるときの通報先などについて解説していきます。

高齢者虐待に関する知識を深めたい方は、ご参考になさってください。

そもそも高齢者虐待とはなにか

そもそも高齢者虐待とはなにか
はじめにそもそも高齢者虐待とは何かを、確認するところからはじめましょう。

私たちは本人の意思を尊重し、人としての尊厳を持ち、その人なりの人生を歩むことが求められています。

高齢者虐待とは、高齢者本人の意思が尊重されず、尊厳を持った人生が送れない状態に陥るような行為を指します。

暴力や暴言だけでなく、必要と思われる介護をしないことや、本人の意思に反し不当に財産を処分することなども、高齢者虐待にあたります。

また介護施設で安易な考えのもと、行われる身体拘束も高齢者虐待に該当します。

高齢者虐待は、虐待を行っている本人の意思とは関係ありません。

その意図がなくとも、高齢者の意思を尊重せず、尊厳を持った人生を送ることを妨げているのであれば、それは高齢者虐待となるのです。

高齢者虐待は5種類に分けられます。

次の項目では高齢者虐待の種類について、確認していきましょう。

高齢者虐待の種類


高齢者虐待の種類は5つに分かれます。

高齢者虐待に当たる行為がどのようなものなのか、1つずつ解説していきます。

その① 身体的虐待

1つ目が身体的虐待です。

高齢者の体に外傷が生じる、もしくは外傷が生じる恐れがある暴力を加えることが、身体的虐待です。

具体的には暴力的な行為で痛みを与えたり、体にあざや外傷を生じさせたりする行為です。

また体をベッドに縛り付ける行為や、ベッドを柵で囲い、外部との接触を意図的・断続的に遮る行為も身体的虐待となります。

その② 心理的虐待

2つ目が心理的虐待です。

度を超えた暴言や拒絶的な態度、その他高齢者に対し心理的外傷を与える行為が、心理的虐待となります。

脅しや侮辱、威圧的な態度だけでなく、高齢者をひどく叱りつける行為や、高齢者の言い分を無視すれば、心理的虐待を行っていることになるのです。

その③ 性的虐待

3つ目が性的虐待です。

高齢者にわいせつな行為をすること、もしくはわいせつな行為をさせることが、性的虐待です。

排せつに失敗したことを理由に、下半身に衣服を着させないまま放置する行為や、人前で排せつさせる行為、人前でのおむつ交換が性的虐待の具体例となっています。

その④ 経済的虐待

4つ目が経済的虐待です。

経済的虐待とは、高齢者の財産を不当に処分すること、または不当に財産上の利益を得ることを指します。

具体的には日常生活に必要な金銭を渡さないこと・使わせないことや、本人の意思に関係なく自宅を売却することです。

それら以外にも、年金や預貯金を本人に無断で使用すれば、経済的虐待を行っていることとなります。

その⑤ ネグレクト

5つ目がネグレクト(介護・世話の放棄、放任)です。

ネグレクトは介護や生活の世話を放棄し、高齢者自身の身体・精神状態を悪化させる行為を指します。

また高齢者を衰弱させるような減食または長期間の放置だけでなく、高齢者の世話をする家族や親族、同居人等からの虐待を放置したケースも、ネグレクトになります。

その行為を行う本人の意思があるかないかに関わらず、介護・生活の世話を放棄すれば、ネグレクトを行っていることになるのです。

介護施設に勤務している介護従事者であれば、職務上の義務を著しく怠った場合、ネグレクトに該当します。

以上が高齢者虐待の種類についてです。

次の項目では高齢者虐待へ発展する可能性がある、不適切ケアについて解説していきます。

高齢者に対する不適切ケアとは

高齢者に対する不適切ケアとは
高齢者に対する不適切ケアとは、高齢者本人の意思に反した強引な介護や、強い口調での対応を指します。

仕事でのストレスや家庭環境の悪化により、不適切ケアが行われる恐れがあります。

不適切ケアは長期間続くと、高齢者虐待へと発展する可能性があり、可能な限り不適切ケアを取りやめるための改善が必要です。

不適切ケアと思われる場合の対応策

家庭内で不適切ケアが行われていると思われる場合は、介護サービスの利用について、考え直すとよいでしょう。

介護サービスの利用頻度や利用するサービスの種類について、再検討することをおすすめします。

在宅で介護を行っている方であれば、短期入所生活介護(ショートステイ)や短期入所療養介護(医療型ショートステイ)を活用し、気分のリフレッシュを図るのも選択肢の1つです。

いずれにしろ思い当たる節がある方は、担当ケアマネージャーに介護サービスの利用について、相談することを強くおすすめします。

介護施設であれば、不適切ケアと思われる場合の対応策として、人権研修の開催が挙げられます。

人権研修を行うことにより、利用者の人格を尊重することを再確認することが可能です。

人権研修以外にも、不適切ケアを行わないためにはどうすればよいか、話し合いの機会を持つことも対策の1つとして挙げられます。

介護スタッフだけでなく、介護施設を運営している事業所は、研修や会議を開きやすくするための環境づくりが求められます。

業務が膨大であり、研修や会議の時間を持てないのであれば、業務整理を行い、日頃からのケアを見つめなおすとよいでしょう。

虐待の疑いがある場合の対応や通報先

虐待の疑いがある場合の対応や通報先
さいごに虐待の疑いがある場合の対応や、通報先に関して解説していきます。

高齢者虐待が疑われる場合には、速やかに関係機関に連絡する必要があります。

現在介護に縁遠い方であっても、高齢者虐待は他人事ではありません。

高齢者虐待を目の当たりにしたときに、適切な対応が取れるよう、事前に対応方法を確認しておきましょう。

その① 介護施設の家族が虐待を疑った場合

はじめに介護施設を利用している高齢者の虐待を、家族が疑った場合の対応についてです。

施設利用者の高齢者虐待が疑われる場合、原則的に市区町村へ通報を行います。

インターネットで「〇〇市 高齢者虐待 通報先」等のキーワードで検索を行うと、連絡先を確認することが可能です。

通報を受けた市区町村は都道府県に報告を行い、介護施設や介護従事者に対し、様々な監督処分を行います。

都道府県が行う監督処分には、報告徴収や立入検査、業務改善などがあります。

なお高齢者虐待について通報を行った場合、市区町村は通報者に関して情報開示をしてはならないと、高齢者虐待防止法によって定められています。

【参考サイト:e-Gov(イーガブ)、高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律 第17条3項および第23条】

その② 介護施設の職員が施設内での虐待を疑った場合

勤務している介護施設において、施設内で高齢者虐待が行われているのではないかと疑った場合も、同様に通報先は市区町村です。

その後の対応も家族が通報を行ったときと同じく、市区町村から都道府県へ報告がなされ、都道府県によって必要な監督処分が行われます。

また介護従事者は、高齢者の生命や身体に危機が迫ってなくとも、高齢者虐待に関する通報義務が生じますので注意しましょう。

その③ デイサービスなどの職員が家族に対して虐待を疑った場合

デイサービスなどの職員が、高齢者本人に対して家族が虐待を行っているのではないかと疑った場合、通報先は市区町村です。

介護施設での虐待とは異なり、連絡を受けた市区町村は事実確認を行った後、地域包括支援センターやその他連携協力機関と対応を協議します。

当該高齢者の生命や身体に、重大な危機が生じる恐れがあるケースでは、保護のために必要な措置を講じることがあります。

まとめ

まとめ
高齢者虐待の種類や、不適切ケアとはどのようなものなのか、高齢者虐待が疑われる場合の対応方法などに関して解説してきました。

高齢者虐待について、理解が深められたのではないでしょうか。

介護施設で虐待・不適切ケアの疑いへの対応策をまとめると

  • 高齢者虐待とは、虐待を行った人の意思に関わりなく、家族や親族、介護従事者によって、高齢者の人権を侵害する行為を指す
  • 利用者の意思に反した強引なケアや、強い口調での対応は不適切ケアであり、不適切ケアが継続されると、高齢者虐待へとつながる可能性がある
  • 高齢者虐待が疑われる場合には、市区町村へ通報を行う。なお介護従事者は、高齢者の生命や身体に重大な危機がせまっていなくとも、通報義務が生じる

ということがあります。

介護の必要性に関係なく、自分らしく尊厳ある人生を送ることを、私たちは守らなければなりません。

高齢者虐待は人としての尊厳を損なう行為であり、身の回りに介護が必要な方がいなくとも、無関係ではないことを胸に留めておきましょう。

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