高齢になると、噛む力が弱くなる、消化吸収能力が下がるなどの理由から、栄養状態が低下しがちです。
しかし高齢者の場合はとくに、栄養を十分とれないことが即健康面に影響を及ぼし、介護度を押し上げるという結果になりかねません。
高齢者や要介護者が健やかな生活を続けるために、良好な栄養状態を保つことができるよう、予防法や改善方法を学びましょう。
高齢者は低栄養状態になりやすい
高齢になると、様々な要因から栄養摂取量が減りやすく、低栄養状態になる確率が高くなります。
国立長寿医療研究センターによれば、在宅療養患者である高齢者990名のうち、36%が低栄養、33.8%が低栄養の恐れがあるとされています。
また、80歳以上の年齢が高くなるほど栄養状態が悪い、要介護度があがるほど低栄養の割合が高いと報告されています。
介護が必要になった原因が低栄養状態という高齢者も増えており、高齢による衰弱、認知症は、低栄養と深く関わりがあるとされています。
高齢者の低栄養は要介護度を押し上げ、命の危険性をも脅かすことを忘れてはならないのです。
低栄養状態になると起こりうる危険性とは?
低栄養状態になると、様々な面で健康に支障をきたします。
考えられる危険性は以下です。
その① 運動機能や筋力低下
栄養が不十分な状態が続くと、生活するためのエネルギーが不足します。
こうなると、疲れやすく、筋肉が痩せおとろえ、転倒や骨折の原因となります。
運動機能の低下、虚弱体質、筋力の低下は、寝たきりの状態を引き起こしやすいです。
その② 骨格筋が少なくなる
栄養が不十分だと、骨や筋肉を作ることができません。
そのため体を動かすために必要な筋肉(骨格筋)が減っていきます。
体を動かすためには筋肉の力が必要で、これが減ることで、様々な部分が機能しにくくなります。
呼吸筋が疲労して咳をする力が減り、気道内の異物や分泌物を取り除くことが難しくなります。
そのため、肺炎などを起こしやすいです。
また、食べ物をかむ、飲み込むという力も弱くなり、誤嚥(ごえん)が多くなります。
その③ 床ずれが出来やすく治りにくい
充分な栄養を取らないと、傷ができやすく、かつ治りにくくなります。
タンパク質、亜鉛不足が主な原因です。
低栄養の原因と症状
その① 低栄養の要因
高齢者の低栄養の要因は、主に以下の3つが考えられます。
1. からだの衰えや食事に関する要因
- 視覚、味覚、嗅覚などの感覚機能の衰えにより、食欲、食事量が低下する
- かむ力や飲み込む力が弱くなる
- 生活習慣病などの疾病によるもの
- 栄養バランスが偏る
- 活動量が低下する
2. 精神的な要因
- ストレスや不安に襲われたり、うつ状態になる
- 認知機能が低下する
3. 環境的・経済的な要因
- 一人暮らしのために孤食となる
- 貧困である
その② 低栄養の症状
低栄養になると、以下のような症状がみられます。
食事に関する機能低下により、味覚が鈍くなり、濃い味付けを好むようになる。
食欲低下により摂取量が減少する。
栄養バランスの偏りにより、免疫力が低下する。
皮膚や消化管への抵抗力が低下し、感染症にかかりやすくなる。
そしゃく・嚥下機能低下により、かむ力や飲み込む力が弱くなり、むせやすくなる。
誤嚥性肺炎を引き起こす。
活動量低下により、腸の運動が弱まり便秘になりやすい。
おなかがすきにくく、食事量が減る。
筋肉量・筋力の低下により、転倒・骨折しやすくなる。
低栄養の予防と改善方法
高齢者にとって、毎日の生活の中で小さな変化が健康に大きな影響を及ぼすことがあります。
今日はいつもより食べないな?など、小さなことにも気を止めることが大切です。
高齢者の低栄養を予防するためには、早めの対策が必要。
そのために、日頃から小さな変化に気を付け、気になった時にはすぐ主治医に相談するとよいでしょう。
状況が深刻な場合には、医師により身体計測、血液検査など低栄養の診断を受けます。
その後必要に応じて管理栄養士とも連携し、栄養バランスを整える、食習慣を変えるなど、個々に適した改善方法が提案されます。
日頃から食事状況を把握しておき、いつもより食事量が減った、食習慣が変わったなどの変化に即気がつくようにしておくとよいですね。
まとめ
高齢者は、低栄養になりやすいです。
体の様々な機能の低下から、精神的問題、環境的問題までいろいろな要因がありますが、大切なことは早期発見です。
高齢者の低栄養は、要介護度を押し上げ命を短くする原因になりますので、早く気づき、適切に対応できるよう日頃から心がけましょう。