要介護度を左右する要素にADLとIADLが挙げられます。
ともにその人がどの程度介護が必要なのかを、確かめる助けとなります。
ADL・IADLとは何かや、それぞれの具体例に関して解説していきます。
ADLとIADLについて興味がある方は参考になさってください。
『ADL』を簡単に説明
ADLを簡単に説明すると、毎日の生活の中で行っている動作を指す言葉です。
まずはADLについて、理解を深めることからはじめましょう。
その① ADL(日常生活動作)
日常生活動作とも呼ばれるADLは、「Activities of Daily Living」の略語であり、直訳すると「日常生活の活動群」となります。
介護の必要性に関わらず、私たちは日常生活を送る上で様々な動作を行います。
会社員の方を一例に挙げると、朝目が覚めたのちに身だしなみを整え、朝食を取り、トイレへ行き、その後仕事に向かいます。
仕事の合間には昼食を取り、就業時間を過ぎれば、家に帰り部屋着に着替え、夕食を取ったのちにお風呂に入り、就寝し一日を終えるでしょう。
これらの日常生活を送る上で必要な動作は、年を重ねるごとにスムーズに行うことが難しくなり、最終的には自分だけで行うことが不可能になってしまいます。
そして日常生活を送る上での各動作が難しくなれば、それに比例して介護の必要性が増加するのです。
なお介護施設やリハビリテーションの現場では、日常動作が出来なくなってしまった状態を、「ADLが低下した」と表現します。
冒頭で紹介したようにADLは、日常生活を送る上で必要になる、基本的な動作を指す言葉です。
ADLを評価すれば、どの程度自立して生活を送れるか、また介護がどの程度必要なのかを確認することが可能となっています。
その② ADLの評価方法
ADLの評価方法はいくつか存在します。
今回は多くの施設で用いられている、Barthel Index(バーセルインデックス)とFIMにスポットをあてて、解説していきます。
【参考サイト:厚生労働省、介護保険制度におけるサービスの質と評価に関する調査研究事業 8ページ】
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000613241.pdf#search='ADL+%E8%A9%95%E4%BE%A1%E6%96%B9%E6%B3%95+%E5%8E%9A%E7%94%9F%E5%8A%B4%E5%83%8D%E7%9C%81'
1つ目はBarthel Index(バーセルインデックス)です。
移乗や移動、食事などの10つの項目を評価し、ADLの確認を行います。
バーセルインデックスで評価する項目は以下の通りです。
【Barthel Indexの評価項目】
【参考サイト:一般財団法人 日本老年医学会、Barthel Index(基本的ADL)】
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tool/pdf/tool_09.pdf#search='Barthel+Index'
それぞれの項目ごと、介護の必要性が少ないと判断されるほど、点数が高くなります。
逆を言えば、バーセルインデックスの評価結果が低い点数であればあるほど、介護が必要であると考えることが可能です。
2つ目がFIM(Functional Independence Measure)です。
FIMは機能的自立度評価法とも呼ばれ、運動項目と認知項目の2つを設けてある特徴があります。
バーセルインデックスと同様に、FIMにおいても総合点数が低いほど、介護の必要性が高いことを意味しています。
FIMの評価項目は以下の通りです。
【FIMの評価項目】
【参考サイト:厚生労働省、日常生活動作(ADL)の指標 FIMの概要】
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000184198.pdf#search='%EF%BC%A6%EF%BC%A9%EF%BC%AD+%E8%A9%95%E4%BE%A1%E6%96%B9%E6%B3%95'
ADLについては以上です。
次の項目ではIADLに関して解説していきます。
『IADL』は判断を必要とする動作
IADLは判断を必要とする動作を指す言葉です。
その① IADL(手段的日常生活動作)
IADLは「Instrumental Activities of Daily Living」の略語であり、「日常生活の機器を用いた活動群」と直訳することが可能です。
IADLに該当する動作は判断を要求されることから、基本的な日常動作を評価するADLに、含まれるものも一部該当します。
IADLの具体的な動作については後ほど紹介しますが、例えば外出はIADLに含まれる動作の1つです。
そして外出するには移動が必要不可欠であり、IADLの中にADLの要素があることを確認できます。
家事や仕事などの理由によって、要介護度者が1人で自宅にいなければならないケースでは、ADLだけでなくIADLを評価し、事前に確認しておくことが重要です。
IADLが低下しているため起こりうる、火の不始末や契約トラブルを未然に防ぐ助けとなるためです。
その② IADLの評価方法
IADLの評価方法はLawton(ロートン)の尺度や、老研式活動能力指標が挙げられます。
はじめにロートンの尺度について解説していきます。
ロートンの尺度の評価項目は電話対応や買い物、家事などからなり、最大で8つです。
対象が男性か女性かで、評価項目の数が異なることがロートンの尺度の特徴になります。
ロートンの尺度の評価項目は以下の通りです。
【ロートンの評価項目】
【参考サイト:一般社団法人 日本老年医学会、手動的日常動作(IADL)尺度】
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tool/pdf/tool_13.pdf
ロートンの尺度によりIADLを評価した結果、点数が高ければ高いほど自立しており、介護の必要性が低いことを意味しています。
次は老研式活動能力指標についてです。
ロートンの尺度における評価項目だけでなく、書類を書くことや新聞を読むことなどの知的能動性、友人への訪問に代表される社会的役割を評価します。
ロートンの尺度と同じく、老研式活動能力指標の評価結果、点数が高ければ自立していると考えられます。
【参考サイト:一般社団法人 日本老年医学会、老研式活動能力指標】
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/tool/pdf/tool_08.pdf
IADLについての解説は以上です。
ADLとIADLに関して理解が深められたところで、次の項目ではADL・IADLに該当する動作が、どのようなものなのかを確認していきましょう。
『ADL』と『IADL』の具体例
ADL・IADLの具体例に関して解説していきます。
まずはADLについてです。
その① ADL(日常生活動作)
ADLの具体例として、決まった時間の起床や着替え、整髪・洗顔が挙げられます。
それら以外にも食事、排せつ、そして入浴なども、ADLに該当する動作です。
私たちが朝起きてから行う動作をイメージすれば、ADLをより理解しやすいです。
その② IADL(手段的日常生活動作)
IADLの具体例は、買い物や服薬管理、電話対応などです。
また金銭管理、家事、そして外出もIADLに含まれます。
必要な状況に遭遇したときに行う動作が、IADLであると認識していれば問題ないでしょう。
まとめ
ADLやIADLの概要や評価方法、各動作の具体例を解説してきました。
ADL・IADLに関して理解が深められたのではないでしょうか。
介護度を左右する『ADL』と『IADL』についてまとめると
- ADLは食事や排せつ、入浴をはじめとした日常生活を送る上で必要となる、基本的な動作である
- IADLは家事や電話対応、買い物など、判断を必要とする動作を指す言葉である
- ADLの評価にはバーセルインデックスやFIMが、IADLの評価にはロートンの尺度や老研式活動能力指標が用いられる
ということがあります。
高齢者の調子は日によって変わり、ADL・IADLの評価内容も変化します。
また年を重ねれば、ADL・IADLが抵抗していく傾向にあります。
重要なことはADLやIADLの評価内容にこだわらず、その人なりの生活が送れるようサポートを行うことです。
ADL・IADLだけでなく、生活の質(QOL)を意識し、必要な介護サービスを利用していきたいところです。