どの程度介護が必要なのかを確認する指標は、いくつか存在します。
それは認知症高齢者の日常生活自立度や、ADL・IADLの評価結果です。
今回は要介護認定の基準となる指標の中でも、認知症高齢者の日常生活自立度にスポットをあてて解説していきます。
認知症高齢者の日常生活自立度について、興味がある方はご参考になさってください。
認知症高齢者の日常生活自立度とは?
認知症高齢者の日常生活自立度とは、認知症を患った方を対象とした、介護の必要性を表した指標です。
日常生活自立度は認知症高齢者を対象としたもの以外にも、障害高齢者を評価する指標も存在します。
認知症高齢者の日常生活自立度と、障害高齢者を対象としたそれは、評価項目が異なるため、まったくの別物であることに注意が必要です。
その① 使用される場所
認知症高齢者の日常生活自立度が使用される場所は、要介護認定の際に実施される訪問調査です。
訪問調査は市区町村の担当者が、要介護認定の申請者の心身状況を評価するために行われます。
訪問調査以外にも、認知症高齢者の日常生活自立度が使用される場所が存在します。
それは主治医の意見書です。
この書類は、要介護認定の申請を行った際に必要になります。
主治医の意見書は市区町村が医療機関へ作成の依頼を行うため、要介護認定の申請者や家族が、書類の手配をする必要はありません。
どの医療機関を主治医としているのかは、要介護認定の申請を行ったときに、市区町村へ伝えることになるでしょう。
仮に主治医がいない場合は、市区町村が指定する医療機関への受診が必要になります。
日頃から健康状態を確認するためにも、主治医を見つけておくことをおすすめします。
その② 判定する人
認知症高齢者の日常生活自立度を判定する人は、市区町村の担当者や医師です。
先ほど紹介したように、市区町村の担当者は訪問調査時に、医師は主治医の意見書を作成する際に、認知症高齢者の日常生活自立度を判断します。
いずれの場合も厚生労働省によって、認知症高齢者の日常生活自立度を判断するときの、留意点や記入方法が示されています。
【参考サイト:厚生労働省、要介護認定における「認定調査票記入の手引き」、「主治医意見書記入の手引き」及び「特定疾病にかかる診断基準」について】
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb6469&dataType=1&pageNo=1
認知症高齢者の日常生活自立度の一覧
つづいて認知症高齢者の日常生活自立度の、一覧をご紹介していきます。
認知症高齢者の日常生活自立度は7段階に分かれており、最も介護の必要性が低いとされているのは「Ⅰ」です。
対して介護の必要性が非常に高い方は、「M」という評価がなされます。
なお認知症を患っていない方は、認知症高齢者の日常生活自立度に該当しない、自立という評価になります。
【参考サイト:厚生労働省、認知症高齢者の日常生活自立度】
https://www.mhlw.go.jp/topics/2013/02/dl/tp0215-11-11d.pdf#search='%E7%97%B4%E5%91%86%E6%80%A7%E8%80%81%E4%BA%BA%E3%81%AE%E7%94%9F%E6%B4%BB%E8%87%AA%E7%AB%8B%E5%BA%A6%E5%88%A4%E5%AE%9A%E5%9F%BA%E6%BA%96'
その① Ⅰ
Ⅰに該当するのは認知症を有するものの、日常生活で家庭内・社会的にほぼ自立している方です。
その② Ⅱa
ⅡはⅡaとⅡbに大別されます。
いずれの場合も日常生活に支障を来すような行動や、意思疎通の困難さが見られたとしても、誰かが注意していれば自立できる方を対象とします。
ⅡaとⅡbの違いは家庭内もしくは家庭外で、誰かが注意していれば自立した生活を送れるかどうかです。
Ⅱaに該当する方は、家庭外において他の方の力を借りれば、自立した生活ができる方です。
具体的にはたびたび道に迷ったり、買い物や金銭管理などの、以前は出来ていたことにミスが目立ち始めたりする症状・行動が見られます。
その③ Ⅱb
Ⅱbは家庭内であれば、誰かの注意を必要とするものの、自立できる方が対象です。
Ⅱbに該当する方は服薬管理が難しいや、一人での留守番が困難であるといった症状が確認されます。
Ⅱbの方が一人での留守番が困難であるのは、電話・訪問者の対応ができないなどの理由のためです。
その④ Ⅲa
ⅢもⅡと同じく、ⅢaとⅢbに分かれます。
Ⅲに該当するのは、日常生活に支障を来すような行動や、意思疎通の困難さがときどき見られ、介護が必要である方です。
着替え、食事が上手く出来ないもしくは時間がかかるや徘徊、失禁、大声・規制を挙げる等が、Ⅲに該当する方の症状・行動例です。
ⅢaとⅢbの違いは日中・夜間のどちらを中心として、上記の症状がみられるかです。
Ⅲaは日中に症状がみられる方が対象となります。
その⑤ Ⅲb
Ⅲbは夜間を中心として、日常生活に支障を来すような行動や、意思疎通の困難さがときどき見られ、介護が必要な方が該当します。
具体的な行動・症状例は、前の項目で紹介した着替え・食事がスムーズに行えないや、徘徊・失禁が挙げられます。
その⑥ Ⅳ
Ⅳは日常生活を送るのに支障を来すよう行動や、意思疎通の困難さが頻繁に見られ、介護を必要とする方です。
行動・症状例はⅢに該当する方と同じですが、それらの行動・症状が日中・夜間を問わず、確認されます。
その⑦ M
Mに該当するのは、著しい精神症状や問題行動がある場合です。
また重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする方もMと評価されます。
せん妄や妄想、自傷・他傷等の精神症状や、精神症状に起因する問題行動が継続して見られる状態が、Mに該当する方の症状・行動となります。
判定基準での注意点
さいごに認知症高齢者の日常生活自立度の判定基準における、注意点をご紹介していきます。
認知症高齢者の日常生活自立度を記載する際の、留意点や記載方法が厚生労働省より示されているものの、調査結果にばらつきが認められるケースが存在します。
これは認知症高齢者の日常生活自立度を評価する人の、経験や資質だけが原因ではありません。
認知症を患っているかどうかに関わらず、高齢者の心身の状態は日々変化しています。
また認知症高齢者の日常生活自立度を評価する際には、自分の状態に関して複数の質問をされます。
調査を受ける方の性格から、家族の前ではスムーズに行えることも、認知症高齢者の日常生活自立度の評価を受けるときには、それらのことができなくなってしまうことが考えられます。
特に認定調査の場合、調査を受ける方と調査員は初対面であることが予想され、人によっては認知症高齢者の日常生活自立度を、正確に評価されない可能性があります。
本人の状態を正確に評価してもらうためにも、家族の同席や本人へ事前に話しておくことが重要です。
できるだけリラックスした環境で、認知症高齢者の日常生活自立度の評価が行われるよう工夫しましょう
まとめ
認知症高齢者の日常生活自立度とは何かや、日常生活自立度の一覧などをご紹介してきました。
認知症高齢者の日常生活自立度に関して、理解が深められたのではないでしょうか。
要介護認定の基準となる高齢者の日常生活自立度をまとめると
- 認知症高齢者の日常生活自立度は、認知症を患った方がどの程度介護を必要とせず、日常生活が送れるかを示した指標である
- 認知症高齢者の日常生活自立度は7段階に分かれており、介護の必要性が最も低いのがⅠ、最も高いのがMである
- 高齢者の調子は日によって変わることを頭の片隅に置き、家族の同席や本人への事前説明など、日常生活自立度の評価が正確に行われるような工夫を心がけたい
ということがあります。
認知症高齢者の日常生活自立度は、介護の必要性を確認する指標の1つです。
要介護度は認知症高齢者の日常生活自立度以外にも、様々な要素が考慮され決定づけられます。
認知症高齢者の日常生活自立度だけでなく、本人の状態を正確に評価してもらえるよう工夫をし、要介護認定の申請手続きを進めたいところです。