在宅介護を行う場合、介護と仕事との両立が難しく、介護のために仕事を離れる「介護離職」という選択をする方も多いです。
この介護離職は在宅介護を行う上での問題にもなっています。
この記事では介護離職について詳しく解説します。
介護離職の現状
介護離職とは、家族などの介護に取り組むために本業を離職することです。
介護離職の現状について説明します。
その① 中高年の離職が多い
介護離職をする年代は中高年層が多くなっています。
介護が必要になる年齢は人によって異なりますが、75歳以上になると要介護の高齢者は増加する傾向になります。
在宅介護の場合、介護をする人は配偶者および子どもが主です。
配偶者は要介護高齢者と同世代で高齢であり、子どもが介護を担うことが多くなります。
介護が必要な高齢者の子ども世代が中高年となるため、その世代の退職が多くなる傾向にあります。
その② メンタル面でのダメージ
在宅介護というものは思っている以上に介護をする家族への負担が大きいものです。
介護離職をした方には、精神面・肉体面・経済面それぞれで負担あります。
特にメンタル面でのダメージが大きいです。
介護によるストレスや、「家族は自分できちんと見なくては」という強い責任感などが原因で、「介護うつ」の状態に陥るケースも多いです。
介護離職をすることで社会との繋がりがなくなり、社会から孤立してしまい、また介護生活によって強い閉塞感を持つようになると、介護者の心のバランスが崩れてしまい、精神的に追い込まれやすくなります。
介護しながら仕事は継続できるか
育児・介護休業法の制定により、介護を行う社員への介護休業・休暇が認められました。
介護休業・休暇について詳しく説明します。
その① 介護休業
介護休業とは、要介護状態の家族を介護している労働者が、雇用主に対して申請を行うことで対象家族1人につき最大通算93日の介護休業が取得できる制度です。
対象になる要介護家族1人に対し、1回の介護休業を申請することが可能で、正社員に限らずパートやアルバイトなどの有期契約社員でも一定要件を満たせば利用できます。
介護休業の対象となる家族範囲は以下の通りです。
- 配偶者
- 父母
- 子
- 配偶者の父母
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
ただし、祖父母、兄弟姉妹、孫は、介護休業給付金を受け取る人が同居かつ扶養していることが条件です。
また、常時介護を2週間以上必要な状態にあることも条件です。
また、申請することで、介護休業期間中に介護休業給付金を受け取ることができます。
金額は、給付前の介護休業給付金の賃金の67%相当です。
その② 介護休暇
2009年に行われた介護休業法の改正により、仕事と介護の両立支援のために新たに「介護休暇」制度が創設されました。
「介護休暇」とは、要介護状態にある家族1人につき1年間に5日間まで、介護やそのほかの世話をすることを目的の場合に、休暇を取得できる制度です。
介護休業が長期の制度であるのに対して、この介護休暇は短期の休暇制度で、有給休暇のような形で取得を申請することができます。
介護疲れを軽減する方法
介護は精神的なストレスが大きく、介護疲れにより介護うつを発症する人もいます。
このようにならないためには、介護疲れを軽減する方法を知っておくと良いです。
以下に介護疲れを軽減する方法を紹介します。
その① 良き相談相手を見つける
介護をしていると、仕事や外出の機会が減り社会的に孤立したり、悩みを1人で抱え込んでしまったりすることがあります。
そんなとき、周りに相談できる相手がいると、精神的な負担を軽くすることができます。
家族はもちろんですが、地域包括支援センターや役所の介護相談窓口、病院のソーシャルワーカーなど、社会の中にも相談相手はたくさんいます。
また、担当のケアマネジャーは介護者にとって貴重な相談相手となります。
ケアマネジャーは介護の状況や介護サービス内容なども把握しているため、介護生活の中で最も身近な相談相手となります。
それ以外にも同じ悩みを抱える「介護家族の会」などに参加するのもおすすめです。
同じ悩みを持つ者同士であるため相談しやすく、当事者同士だからこそわかり合える内容などもあります。
介護していることを隠す人もいますが、誰にも相談せず1人で悩みを抱え込むことは、介護疲れを悪化させ、介護うつに発展する可能性も高いです。
良き相談相手を見つけ、些細な悩みでも相談するようにしましょう。
その② 積極的に介護サービスを利用する
利用できる介護サービスには入所サービスや在宅サービスなどさまざまなサービスがあります。
デイサービスには送迎があり、食事の提供や入浴介助を受けたり、介護を受けるだけでなくレクリエーションを楽しんだりすることができます。
また、ショートステイは介護施設に宿泊するので、介護者が息抜きをしたいときにも利用できます。
介護サービスを利用することによって、多少介護支出が増えますが、仕事を辞めずに得られる収入を確保でき、介護が終わった後は、今までどおりの日常に戻ることができます。
他人に家族の介護をしてもらうことに罪悪感を覚える方もいるかもしれませんが、介護度の進行につれ、専門的な知識や経験を持った介護スタッフによる介護ケアの方が、結果的に高齢者にとってもより良い生活ができる場合もあります。
家族の介護負担を考えると、仕事と在宅介護の両立を目指す場合は、介護サービスを積極的に利用したいところです。
介護離職をした場合の最大のリスクは収入減
介護離職をした場合のメリットは、介護と仕事の両立による心身の負担を軽減できること、また家族が介護をすることで介護サービスにかかる費用を軽減できることだと言えます。
しかし、その一方で介護離職をした場合、収入源がなくなるという最大のリスクがあります。
それまでの貯蓄や親の年金だけに頼ることになるので、将来的には生活に困窮する可能性があります。
さらに一度仕事を辞めてしまうと、それまで積み重ねてきたキャリアを捨てることになり、介護後の再就職も難しくなる可能性があります。
また、介護離職後の再就職は収入が減少傾向にあり、これは介護と両立できる労働条件を考え、雇用形態を正社員からパート・アルバイトに変える人が多いためと言えます。
まとめ
この記事では介護離職について詳しく解説しました。以下にこの記事の内容についてまとめます。
- 「介護離職」とは、家族などの介護に取り組むために本業を離職することで、年代は中高年層が多くなっています。在宅介護は介護をする家族への負担が大きく、介護離職をした方は特にメンタル面でのダメージが大きく、「介護うつ」の状態に陥るケースもあります。
- 介護しながら仕事を継続する場合は最大通算93日取得できる長期の介護休業や、1年間に5日間まで取得できる短期の介護休暇などを利用することができます。
- 介護疲れを軽減する方法は、良き相談相手を見つける、積極的に介護サービスを利用するなどがあります。
- 介護離職をする場合、介護と仕事の両立による心身の負担を軽減できる、家族が介護をすることで介護サービス費用を軽減できるなどのメリットがありますが、その一方で介護離職をした場合、収入源がなくなるという最大のリスクがあります。
介護離職をする場合は、その時の収入減のことだけでなく、その後のキャリアアップや再就職のことなども含めて、生涯における収入減のことを考える必要があります。
そのことを考えて本当に介護離職をした方が良いのか考えると良いでしょう。