介護は在宅ですることが善であり、施設に入れることは悪であるような感覚がありませんか?
在宅介護の負担は大きく限界があり、老人ホームなどの施設へ入れることは決して悪いことではありません。
この記事では、介護疲れや老人ホームに入れることへの向き合い方などについて詳しく解説します。
在宅介護には限界がある
在宅介護はこの状態になったら在宅から施設介護へ移行するといった基準などもないため、重度の介護が必要な状態でも在宅介護を継続し、知らず知らずのうちに介護の限界の状態になっている場合があります。
その① 介護者の肉体的・精神的負担について
在宅介護者の約7割の家族介護者が、精神的・肉体的に限界を感じているという現状があります。
なかでも介護による不眠状態にあり、一晩に数回起きている人が多いです。
夜間のおむつの交換のためや、昼夜逆転して夜間に起き出す認知症の人に対応するために、家族は毎晩起きる生活を送っていることが考えられます。
不眠や睡眠不足は、家族を肉体的にも精神的にも追い込み、介護の限界を感じさせる大きな要因になっています。
その② 時には老老介護になることも
高齢化や核家族化が進み高齢者のみの世帯が多くなっているため、高齢者が高齢者を介護する「老老介護」になる可能性もあります。
老夫婦二人暮らしで高齢の妻が高齢の夫を介護する場合や、親の介護をする子供の世代も65歳以上の高齢者という場合などがあります。
老老介護の場合は、介護をする側も高齢者であるため、介護に時間がかかり、体力的・精神的な負担が大きく共倒れになる可能性が高いです。
また、老老介護の場合は、介護者の社会的接点が減少し、外部からの刺激が少なく、鬱状態や認知症になる可能性もあります。
その③ 介護疲れの限界は人によって違う
介護にマニュアルはなく、家族による在宅介護のかたちは、100人いれば100通り違ってきます。
介護をする中で腰を痛めてしまった、介護に疲れてしまったといった肉体的な限界が生じてくる方、介護に耐えられなくなった、介護離職せざるを得なくなった、在宅介護にかかる費用が限界になったなど、精神的な限界を感じる方など、介護の限界を感じる理由は人それぞれです。
これらのさまざまな理由が複合的に重なり合い、介護の限界を感じていくのです。
親を老人ホームなどの施設に入れることは罪??
親の介護を入居施設に託す決断は、親にとっても、家族にとっても、心が揺れ動くものです。
できるだけ自宅に住み続けたいを思う親が多く、それを叶えるために在宅介護の努力をする家族が多いです。
介護を他人にすべてゆだねることに抵抗感や罪悪感をも持つ人も少なくはないです。
しかし、在宅介護というものは家族の負担が大きく、介護疲れが限界を超え、介護者の愛情が憎しみに変わる場合もあります。
そうなると介護する側もされる側も気持ちのよいものではありません。
介護保険制度は、介護を家族の力だけで行うのではなく、社会全体で行うための制度です。
老人ホームなどの介護施設へ入所して受けるサービスも介護保険サービスの一つであり、利用するのに罪悪感を持つ必要は全くありません。
老人ホームに入れる場合の罪悪感とどう向き合う?
老人ホームに入れることに罪悪感を感じる必要は全くありませんが、どうしても罪悪感を感じてしまう方もいると思います。
そのような場合、罪悪感と向き合うためには、一人で抱え込んで悩まないようにすることが大切です。
主治医やケアマネジャーなど、本人と家族のことをよくわかっている人たちに相談してみると良いでしょう。
また、入居予定の介護施設のケアマネジャーや生活相談員も良き相談相手になってくれるはずです。
今までに同じように罪悪感を抱えた状態で入所された方の家族もいるでしょうし、良いアドバイスがもらえると思います。
老人ホーム入所後にできることはたくさんある
老人ホームに入ることは施設に全ての介護を任せるという意味ではありません。
入所後は、家族と施設が一緒になって本人の介護をしていくという気持ちを持つと良いです。
入所後にも家族にできることはたくさんあります。
その① 面会
老人ホームに入り家族と離れて生活をすることに寂しさを感じる方もいます。
家族はなるべく定期的に面会をして親を訪ねるようにしましょう。
親にいつも気にかけているという気持ちを言葉や態度で伝えるようにすることが大切です。
その② 職員への情報提供
老人ホームに入ったら施設に任せっきりにするのではなく、定期的に施設の職員とやり取りをすることが大切です。
施設に要望や不満があればきちんと話し、情報提供してみましょう。
施設側が気が付かないこともあり、情報提供により解決することもあります。
その③ 外出や行事への参加
老人ホームなどの施設では季節の行事や外出などが定期的にあります。
親と一緒にこのような外出や行事に参加すると良いでしょう。施設に入居しても家族のふれあいを感じてもらうことも大切です。
自分の人生も楽しもう!
老人ホームなどの施設に入所後は、気持ちが前向きになったという家族が多いです。
在宅介護による身体的負担が減ることで精神的負担も減少します。
離れたことでストレスが減り、親との関係、家族間の関係が良好になった人も多くいます。
家族介護では、どうしても介護する側が自分の時間を削り、介護を中心とした生活にならざるを得ないところがあります。
しかし、家族にも自分の人生があるということを忘れてはいけません。
介護の頼める部分は事業者に依頼するようにすると、介護と自分自身の生活バランスをうまく保てるようになり、自分自身の人生にもゆとりができ、仕事や趣味など楽しめる時間もできてくるでしょう。
まとめ
この記事では介護疲れや老人ホームに入れることへの向き合い方について詳しく解説しました。
以下にこの記事の内容についてまとめます。
- 在宅介護では、介護者の肉体的・精神的負担が大きく限界があり、その限界は人によって違います。時には老老介護になることもあり、鬱や認知症などの二次障害を招く恐れもあります。
- 老人ホームを利用することに対して罪悪感を持つ必要は全くありません。罪悪感と向き合うためには、一人で抱え込んで悩まないようにすることが大切です。主治医やケアマネジャーなど、本人と家族のことをよくわかっている人たちに相談してみると良いでしょう。
- 老人ホームに入所後も面会や職員への情報提供、外出や行事への参加など、家族ができることはたくさんあります。家族と施設が一緒になって本人の介護をしていくという気持ちを持つと良いです。
- 介護の頼める部分は事業者に依頼し、介護と自分自身の生活バランスを保ち、自分自身の人生を楽しむようにしましょう。
介護のかたちは人それぞれであり、在宅介護が善であり、施設介護は家族が責任回避をしている悪というわけではありません。
介護される人と介護する人が共に限界を超える前に、その家族にとって最もよい介護のかたちを選ぶことが大切です。
介護する側もゆとりを持って自分自身の人生を楽しめるようにしましょう。