介護は肉体的な労力だけでなく、精神的にも大きな負担を強いられます。
長期にわたる在宅介護により介護者にのしかかる心身の負担、これが原因で介護うつにかかる人が増えています。
介護生活が始まった人、これから始まる人へ、介護うつの原因と対策をお伝えします。
介護が辛い・疲れたと感じる内容
その① 排泄を手伝うとき
排泄のお世話は介護の中で最もたいへんな作業の一つではないでしょうか。
要介護者が寝たきりの場合には、ベッドの上でおむつ交換など中腰の作業が多く腰を痛めてしまったという人も少なくありません。
トイレでの介助でも、要介護者の状態によっては肉体的な負担がかかります。
夜間のおむつ交換や、トイレ介助のために、夜間に1~3回起きて介護をする人も多く、睡眠不足の原因ともなっています。
汚物の処理、洗濯物の処理など、精神的にも辛いと感じることが多い仕事です。
その② 入浴を手伝うとき
入浴介助は、体力的に負担が大きいです。
浴室内は介護する人にとっては蒸し暑く、その中で転倒防止など安全に気を配りながら要介護者を入浴させることは重労働と言えます。
気持ちよく入浴してもらうために、相手の心にも気遣いが必用であり、体力的、精神的に疲れてしまうものです。
その③ 食事の準備や手伝いをするとき
介護が必要な人の中には、自分で食べることができてもすぐむせてしまうなど介助が必要な人が多いです。
一日3食の食事を、飲み込みやすいよう柔らかく、とろみをつけるなど、要介護者の身体状態にあった調理法で用意することは、とても大変です。
側について食べさせるとなると時間もかかります。
忙しい毎日の中で、3食の食事の準備と介助は大変な作業で、ついイライラしたり、疲弊してしまう原因になりがちです。
介護疲れによるうつ病の対策
毎日の介護疲れが蓄積してしまうと、介護うつになる可能性があります。
そうなる前に対策を打たなければなりません。
その① 一人で抱え込まず家族で連携
一人で介護の負担を抱え込むことは、うつ病を招く大きな原因です。
何もかも一人で行うことは容易ではないということを忘れてはいけません。
たいへんな時には家族に相談し、幅広い角度からの協力を得るようにしましょう。
例えば要介護者に対する直接的な介助はできなくても、その他の家事を手伝う、介護に関する悩みを聞くことも、大きな助けとなります。
家族内で各自できることを探し連携して介護をすすめることが大切です。
その② 自分の疲労度を理解しておく
毎日の介護に追われていると、知らず知らずのうちにストレスが蓄積しているものです。
しかしそれは危険なことで、気付いた時にはうつ状態になっていたということも少なくありません。
そうならないよう、自分の疲労度やストレス度を常に意識し、今自分がどんな状態であるか理解しておくようにしましょう。
良いことがあっても気が晴れない、好きな食べものも美味しく感じない、体がだるくて動くのが億劫などという時は、「ストレスがたまってきた」と自覚しましょう。
そして、その度に体を休める、ストレスを発散させましょう。
その③ 不満や愚痴もストレス解消対策
介護は大変な仕事です。
相手がいることですから自分の思うようにいかず、腹が立ったりイライラしたりするもの。
不満があって当然なのです。
それを自分一人の中に抑え込む必要はありません。
家族や気のおけない友人など、話を聞いてくれる人がいれば、どんどん聞いてもらいましょう。
愚痴や不満を聞いてもらうことは、ストレス解消に大きな効果があります。
その④ 完璧介護を辞めて程ほど介護を目指す
真面目で一生懸命な人ほど、うつになりやすいと言われています。
要介護者のことを想うあまり、あれもこれも完璧にと頑張ってしまう気持ちはわかりますが、それが自分を追い詰めてしまう原因にも。
自分が元気であってこそ、介護される人も幸せでいられるのですから、頑張りすぎずに程々な介護を目指してみましょう。
自分の心と体にゆとりを持つことが、笑顔の介護につながるのではないでしょうか。
介護疲れを感じたらカウンセリングを活用
その① カウンセリングとは
カウンセリングは、専門の知識や技術を持つカウンセラーとの対話を通じて、自分が抱える悩みやつらさを解消するというサポートです。
カウンセリングは、カウンセラーが問題解決策の提案やアドバイスをすることだけが目的ではなく、相談者が自分が抱える問題に気づきを得る、理解を深める、行動を変えることへの手助けに重点を置いています。
その② カウンセリングを受ける場所
カウンセリングと一口にいっても種類は様々です。
介護うつなど成人の心理カウンセリングは、以下のような場所で受け付けています。
- 精神福祉保健センターや保健所の「精神衛生相談室」
- 医療機関の「精神科・心療内科」
- カウンセラーが個人で運営するカウンセリングルーム
- 民間企業や団体提供のカウンセリングルーム
その③ カウンセリングを受けるタイミング
カウンセリングは、精神疾患として認められていなくても受けることができます。
日常生活の中で、誰にも相談できない悩みがあるとき、それを打ち明ける場として活用することができるのです。
介護に疲れたけれど誰にも言えない…そのような時には、一度カウンセリングのドアを叩いてみるとよいでしょう。
普段かかっている主治医がいればまず相談して指示を仰ぎましょう。
いなければ直接カウンセリング機関に自分の困りごとについて伝え、カウンセリングが受けられるかどうか確認しましょう。
まとめ
毎日の介護に追われて疲れが蓄積してしまうと、自分では気づかないうちに介護うつになっている恐れがあります。
自分一人で抱え込まず、家族、友人、カウンセラーなど、周りの人を巻き込んで、自分が健康でいられるように心掛けましょう。