介護うつは、介護に携わる人ならだれでも陥る可能性がある病気です。
しかし、まさか自分に介護うつの症状が出ているとは思わず、無理をしてしまう人が多いというところが実態です。
介護うつは、一度発症すると完治するまでに時間がかかるため、とにかく早めの対策が必要です。
今回は、介護うつの症状やその治療法についてお伝えします。
介護疲れを感じる前にセルフケアを!
介護は、肉体的な労力とともに精神的な緊張を伴います。
毎日終わりのない介護により、肉体的、精神的に疲れてしまう介護者は多いです。
介護疲れが蓄積していまい、それを発散させることができずにいると、介護うつを引き起こします。
まずは介護疲れをが溜め込まないよう、こまめなセルフケアが必要です。
介護疲れを感じた場合の対応策
介護で体が悲鳴を上げている、そのような時にはとにかく休息をとりましょう。
- 一日の中でゆっくりとお茶を飲む時間を作る
- ゆっくりお風呂に入って体を休める
- 介護を代わってもらう
- 友人に愚痴を聞いてもらう
- 趣味を楽しむ時間をとる
- 読書をする
などなど、ストレス発散の方法は人それぞれです。
どのような方法でも、自分の心がスッキリとし、また明日も頑張ろうと思えるような時間が必要です。
可能であれば、ショートステイの活用もおすすめ。
2~3日ショートステイを利用し、ゆっくりと休息をとり、疲れた体をいたわってあげましょう。
介護うつの症状
その① 食欲不振
うつ病の代表的な症状が、食欲不振です。
今まで大好きだったものでも美味しく感じないなど、食欲の減退に悩まされます。
食事量が減り、体重も減少します。
その② 睡眠障害
食欲不振に並んでうつ病に多い症状が睡眠障害です。
寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、朝早く目が覚めてしまうなど、十分な睡眠がとれないといった症状が現れます。
その③ 取れない疲労・倦怠感
体が疲れやすくなります。
ハードな運動をしたり長時間仕事をしたわけでもないのに疲労を感じ、その疲れがなかなか抜けません。
酷い肩こりや頭痛までおこることがあります。
疲労がなかなか取れないため、体が重く感じ動くことが億劫、慢性的な倦怠感を感じ、活動する意欲まで衰えてしまいます。
その④ 不安感・焦燥感
原因は特に思い当たらないのに焦りや不安感に襲われます。
気持ちが落ち着かずイライラしやすくなり、小さな物音や騒音が異常に気になります。
その⑤ 憂鬱感・思考障害
憂鬱な気持ちから抜け出せず、気持ちがどんどん落ち込みます。
人と会って会話をすることさえ億劫になり、全ての事柄に対して消極的。
ひいては一人の世界に閉じこもるようになります。
ひどくなると頭が思うように動かない思考障害が起きます。
落ち着いて考えることができなくなり、仕事も手に付きません。
そしてすべてに対してネガティブになり、「自分なんかいないほうがいい」といった自殺願望さえ抱くこともあります。
介護うつになりやすい人
その① 真面目で几帳面
真面目で几帳面な人は、何事にも一生懸命、丁寧に取り組みます。
介護に関しても、例えば医者からよいといわれたこと、勧められたことに一生懸命取り組み、頼まれたことは相手のことを想ってきっちりとこなそうと頑張りすぎてしまいます。
その② 完璧主義
完璧主義な人は、介護に関しても全てを完璧にこなさなければいられません。
適当に手抜きをするなどもってのほかで、「介護はこうあるべき」という理想をとことん追求してしまいます。
知らないうちに自分自身を追い詰めています。
自分の想い通りにはならない介護生活の中で、理想を追い求める自分と現実のはざまで、ストレスをため込んでしまいがちです。
その③ 責任感が強い
「自分がしっかりしなければ」そう思っていませんか。
責任感の強い人は、「自分の親なのだから自分が頑張るべきだ」という気持を持っています。
途中で、疲れた、体調が悪い、息抜きをしたいと思っても、人に頼ってはいけない、自分でやり遂げるべきだなどと思い、一人で抱え込んでしまいます。
結果自分を追い込んでしまいがちです。
介護うつの原因
介護の専門的な知識の少ない在宅介護者にとって、介護は大変大きな負担です。
負担の原因は一つではなく様々な面から忍び寄り、八方ふさがりの状態に追いこんでいきます。
- 精神的ストレス
- 経済的ストレス
- 肉体的負担
- 燃え尽き症候群
介護は相手があることなので、自分がいくらがんばっても相手に通じないことがあります。
また、親子であるが故のわがままにより、感謝を示してくれなかったり、時には罵声を浴びせられることもあり、精神的なストレスが大きいものです。
また、いくら献身的に介護をしても状態が改善しないことへの虚しさを感じることがあります。
介護は経済的な負担も大きいです。
介護者の負担を減らすために介護福祉サービスがありますが、経済的に余裕のない人は十分なサービスを受けることができず、その分家族への負担が増します。
介護のために離職するということになると、収入が激減して経済的に困窮するケースが多いです。
介護は肉体的にも負担が大きいです。
ベッドの上での介助、移動の介助、入浴介助など体力を使い、足腰を痛める人も少なくありません。
また、介護者が仕事をしている場合は疲労が蓄積して体調不良を引き起こすこともあります。
介護に一生懸命になりすぎて心身共に限界に達し、ある日突然やる気をなくすという状態です。
何もかもが嫌になって匙を投げ、不満や怒りを感じることさえあります。
長年介護してきた人が亡くなった時など特に多い症状です。
介護うつの治療法
介護うつになってしまったら、ゆっくりと時間を取って治療に専念しましょう。
その① 十分な休養
介護うつの第一の治療法は、休養です。介護の現場から離れ、しっかりと休み英気を養うのです。
自分がいなければ被介護者がこまるのではと思いがちですが、自分の健康があってこその介護と思いましょう。
介護者の体調不良や休養のためにも、ショートステイは利用できます。
ケアマネージャーを通してあらかじめ予約をしておきましょう。
家族や親戚で介護を代わってくれる人がいれば頼んでみましょう。
その② 薬物療法
医療機関にかかると、医師の判断によって抗うつ剤を使うこともあります。
抗うつ剤は効果が現れるまでに2~3週間、薬によっては3~4週間かかります。
抗うつ剤の服用により、脳内の神経伝達物質のセロトニンやノルアドレナリンの働きを促します。
これにより、物事をネガティブに考えることが少なくなると言われています。
人によっては副作用も見られますので、医師によく相談しましょう。
その③ 精神療法
カウンセリングによるもので、「認知療法」や「行動療法」があります。
専門知識と経験のあるカウンセラーにより、問題解決を図るものです。
認知療法では、本人の物事に対する受け止め方や思考方法を修正していきます。
行動療法は、ある体験が体調に影響しているとき、そのパターンに陥る潜在意識の中の条件を修正し、症状改善に向かわせます。
まとめ
介護に一生懸命取り組むうちに、気付いたら介護うつになっていたという人は少なくありません。
介護うつは、介護に携わる人ならだれでも陥る可能性があります。
介護をする人もその周りの人たちもその事実を認識し、少しでも思い当たることがあれば早めに対策を打つことが大切です。