トイレ介助は、介助する人にとって体力的、精神的に負担が大きく、ストレスの大きな介助の一つです。
一方で、介助される人はトイレ介助に対し複雑な感情を抱えています。
トイレ介助をスムーズに行うことは、今後の介護生活をうまく続けるための重要なポイントです。
この記事では、トイレ介助の方法と注意点について解説します。
おむつではない『トイレ』で排泄することの重要性
介護度が高くなるとおむつを利用することが多くなりますが、おむつは最終手段としできるだけトイレを利用することが、介護をする上で大切と叫ばれています。
これは、
「おむつを使わないことで、要介護者本人の尊厳を保つことにつながる。」
「トイレまで行くという行為が、日々の目標となり、寝たきりを防ぐことにつながる」
という理由があります。
介護が忙しくなるとついおむつに頼りがちですが、おむつを使うことで排便・排尿機能が衰弱することもわかっています。
また、介護者にとっても、おむつ交換は体力的に大きな負担です。
このようなことから、介護を行う上でトイレでの排泄が重要視されているのです。
トイレ介助の手順
その① 対象者に適応するトイレを選んで誘導
自力歩行できる、歩行器を使う、車いすを使うなど、介護される人の状態にあったトイレまで誘導します。
トイレまでの間に障害物がないかを確認し、自力で歩ける人は安定してしっかり歩けるよう見守りながら、また、必要がある場合は歩行の介助をします。
その② 立位を保持しズボンなどをおろす
本人に手すりにしっかりとつかまってもらい、立った状態で後ろからズボンや下着を下ろします。(必ず声掛けをします)
本人の状態に応じて、自分でできることは、できるだけ本人に任せます。
その③ 立位の状態で便座へ介助する
利き手で手すりを握ってもらい、介護者は前方から要介護者の体を支えます。
要介護者の両足の間に片足を入れ重心を落とし、要介護者におじぎをするようなイメージでゆっくりと便座に座ってもらいます。
その④ 排泄中は外で待機
排泄中は、トイレの外で待機します。
鍵はかけないよう注意しましょう。
その⑤ 時間を見計らって声掛け
時間を見計らって声をかけます。
排泄が終わっているようであれば再びトイレに入ります。
この時、焦らせたり、せかすようなことは絶対にしないようにしましょう。
その⑥ 清拭を行う(清拭の実施)
自分で清拭ができない場合は手伝います。
手すりをしっかり握ってもらい、介助者は腰を支えて少し浮かせます。
前から後ろに向かって、お尻を拭きます。
この時、健康状態を確認するために、排泄物や皮膚の状態を素早く観察するようにしましょう。
その⑦ 立位を保持しズボンなどをあげる
自分で衣類を直すことができない時は、介助をします。
手すりをしっかりとつかまってもらい、ズボンや下着を上げます。
トイレ介助の注意点
その① 安全への配慮
トイレ介助は、立つ、座る、ズボンの上げ下げなど、不安定さのある介助の一つです。
高齢者は足腰が不安定な人が多いことから、まずは安全に配慮することが大切です。
トイレ内、廊下など、しっかりとつかまることができる手すりを設置し、安全を確保しましょう。
照明を明るくし、手元や足元がよく見えるようにしましょう。
その② できることは自分でやってもらう
介護において、自分でできることは自分でやってもらうことは、基本です。
トイレ介助についても同じで、その人の健康状態に合わせた介助を行います。
上記で示した介助手順はあくまでも基本的なもので、安全が確保されていれば、できるだけ本人に任せてよいでしょう。
その③ 尊厳を傷つけない(プライバシーの確保)
介護の中で、トイレ介助はとてもデリケートな部分ですので、本人の尊厳を傷つけないことが大切です。
誰もが独力で行ってきた排泄行為の一部を人に見られることに対して、抵抗を感じない人はいません。
羞恥心、屈辱感、絶望感など、複雑な気持ちでいることを理解して接するよう心がけましょう。
プライバシーをできるだけ確保し、本人の気持ちを傷つけるようなことは徹底的に避けます。
介護される人はとても敏感ですので、嫌な表情を見せてしまうと、排泄行為に罪の意識を持ったり、心を閉ざすようになります。
申し訳ないという気持から、飲食を控えたり便意を我慢することもあります。
ときに、失敗することもあるかもしれませんが、責めたり咎めたりすることは絶対に避けましょう。
まとめ
排泄介助は、介護の中でも特にデリケートな部分です。
介助される人は複雑な感情を抱えています。
一度傷付けてしまうと、その後の介護や健康状態にも影響を与えてしまう可能性があるため、細やかな心遣いが大切です。
尊厳を傷つけないことを常に意識して行いましょう。