介護度が高くなると、ベッドや車いすの上で過ごす時間が長くなる上、自分で思う様に身体を動かすことができず、苦痛を感じることがあります。
また、寝ている時、座っている時の体勢が適切でないと、身体に悪影響を及ぼすことがわかっており、介護現場でもポジショニングとシーティングが注目されています。
今回は、ポジショニングとシーティングとはどういうものか、その考え方や進め方、注意点などを解説します。
そもそもポジショニングとシーティングって何?
その① ポジショニング
ポジショニングは、目的に適した姿勢を、安全かつ快適に保つために、クッションなどの道具を用いて身体各部の位置を整え、良好な体位を支えることです。
要介護者は何らかの身体機能の衰えにより、快適、安全な姿勢を自分で保つことができない、または体を思うように動かすことができません。
そこで、道具を活用し、要介護者が快適に、楽に、心地よく体勢を支えてあげる必要があります。
同じ姿勢で長時間寝ていることによる、身体への様々な悪影響を防ぐため、一定時間ごと適切な姿勢に変える介助です。
その② シーティング
シーティングは、良好な座位姿勢を保つために、椅子や車いすを調整することです。
要介護者は、長時間座っていることが多くなりますが、座っている間に徐々に体勢が崩れてくるという問題があります。
不良な態勢で長時間座っていることにより、様々な弊害が起きるといわれています。
そのため、長時間座位を続ける人の心身機能や生活状況に合わせて、良好な姿勢を確保する必要があるのです。
ポジショニングの基本
その① ポジショニングで必要な道具
ベッドで寝ている時、体の各部位を適切な位置におき、ずれないように支えるものが必要です。
傾斜付き枕、長方形枕、四角枕などがあり、クッション、タオルで代用もできます。
その② ポジショニングの方法
A:仰向けのポジショニング
- 頭を高くする。(状況に応じてギャッジアップをする)
- 枕を深く入れ、首の後ろに隙間を作らない。
- 肩甲骨から肘の下にクッションを入れて、横から見た時、心臓と同じ高さにする。
- 膝裏にクッションを入れて、膝を立てる。
B :横向きのポジショニング(90度側臥位)
- 下側の腕を前に出して、圧迫されないようにする
- 上側の腕をクッションで支える(腕の下にクッションを入れる。肩、ひじ、手の高さを揃える)
- 膝を90度に曲げて、平行におく。
- 両足の間にクッションを入れる。(股、膝、足)
- ギャッジアップはしない
- 背骨がまっすぐでねじれ、傾きがないようにする
その③ ポジショニングの注意点
ポジショニングの基本は、「筋肉の緊張を減らす」ことです。
この考えを基にして行うことで、効果のある正しいポジショニングになります。
また、どの体位であっても、一点に圧が集中することがないよう、面全体で支えることを意識します。
寝たきりの人は自分で体を動かすことが難しいため、一定時間ごとに体位を変えるなどの気配りが必要です。
<ポイント>
- 身体をねじらない
- 身体とベッドマット・クッションの間を隙間なく埋める
- 身体の緊張がほぐれて、一定時間安定して寝ていられる姿勢を作る
シーティングの基本
その① シーティングで必要な道具
適切なシーティングを行うためには、背もたれ、座面、アームレスト、フットレストのバランスが大切です。
アンカーサポート:車いすの座面の膝側が臀部側より高くなるようするクッションです。
骨盤が後ろへ倒れてお尻が前に滑ることを防ぎます。
クッションやタオル:アンカーサポ―トの代用として、その他、座面、背中、腕、足への支えとして活用します。
その② シーティングの方法
車いすに座っていると、正しい姿勢が保てずお尻が前にずれてくることが多いです。
まず、お尻が前にずれてこないよう、アンカーサポートを設置します。
アンカーサポートは、座面の膝側がお尻側より高くなっていて、前ずれを防ぎます。
タオルやクッションで代用する場合は、使用中にそれらがずれていないかチェックします。
ずれて丸まっていたりすると、一か所に圧力が集中し、褥瘡の原因となります。
次に、背中が背もたれにぴったりとつくよう、背もたれを調整します。
背中の曲がり具合にあうよう、背張りを調節することで、背柱が伸び、適切な姿勢が保持できます。
食事の際、必要であれば背中にクッションを当てて食べやすい姿勢を保ちます。
ベッドで上体を起こして座るときには、お尻がずれないよう膝を少し曲げます。
クッションなどを膝の下へ入れて支えにします。
食事をする時には、首がうしろへ倒れないよう、枕などをおいて少し前に倒します。
その③ シーティングの注意点
シーティングは、適切な姿勢の座位を保つことですが、いくら正しい姿勢であっても、長時間続けることは好ましくありません。
また、シーティングを正しく行っても、時間と共にずれてしまうこともあります。
2~3時間ごとに、座り直しや姿勢の修正を行うよう心掛けが大切です。
まとめ
介護度が上がると、ベッドや車いすの上で過ごす時間が増えてきます。
自分で自由に体を動かすことができないため、寝たきり、座ったきりの長い時間は苦痛だけでなく、本人の健康状態に悪影響を与えます。
適切な体勢を保ち、くずれてきたら修正する、一定時間ごとに体位を変えるよう、心がけましょう。