陰部洗浄は臭気の発生を抑え、尿路感染症のリスクを低下させる重要な介護技術です。
今回は介護技術の中でも陰部洗浄にスポットをあてて、その必要性や尿路感染症に関して解説していきます。
陰部洗浄や尿路感染症について、理解を深めたい方はご参考になさってください。
陰部洗浄の必要性
はじめに陰部洗浄の必要性について解説していきます。
陰部は排泄物や発汗などによって水分が多く、湿っている状態が継続しやすい部位です。
清潔な状態を保っておかないと、水分が多く湿っている環境下では、細菌が増殖する傾向にあります。
そのままにしておくと強い臭気が発生し、尿路感染症をはじめとした病気に、かかってしまうリスクが高まってしまうのです。
特に入浴が難しく、ベッド上で排せつを行っている方には、定期的な陰部洗浄が望まれます。
また膀胱留置カテーテルを留置している方は、逆行性尿路感染症の予防として、陰部洗浄を必ず実施したいところです。
清拭だけでなく、オムツ交換の度に陰部洗浄を行えば、より清潔な状態を維持でき、強い臭気の発生や病気の感染のリスクを下げることが可能となっています。
その方の心身状態にもよりますが、最低限1日1回は陰部洗浄を行いましょう。
陰部洗浄の必要性について確認できたところで、次の項目では尿路感染症に関して解説を行っていきます。
尿路感染症とは
尿路感染症とは、細菌やウィルスが尿の通り道に感染することにより発生し、当該部位が炎症する疾患です。
尿の通り道として、尿道や膀胱、尿管などが挙げられます。
高齢者は尿路感染症にかかるリスクが高く、また再発しやすい特徴があります。
前の項目で紹介したように陰部を清潔に保つことにより、尿路感染症にかかるリスクを下げることが可能です。
その① 症状
尿路感染症の症状として、発熱や排尿回数の増加、排尿時の陰部の痛みなどが挙げられます。
また尿漏れの頻度が増加するや、腰を強くたたくと痛みが生じることも、陰部洗浄の症状の一例です。
尿路感染症にかかると尿の中に白血球が多く現れることから、尿が濁って見えることもあります。
その② 診断
尿路感染症の診断は尿検査や血液検査、超音波検査により行われます。
症状の項目で紹介したように尿路感染症にかかると、尿中の白血球数が増加することが多くあります。
そこで尿検査にて白血球と細菌の数を評価することにより、尿路感染症にかかっているかどうかを判断します。
血液検査では炎症反応を示す数値や、白血球の上昇具合を評価し、診断を行います。
その③ 治療
尿路感染症は原則的に入院し、治療することになります。
これは重篤化すると生命の危機となりうるためです。
治療法は抗菌薬の点滴を行い、口から物が食べれるようになれば、抗菌薬の投与を内服へと変更する場合があります。
外陰部を清潔にし、こまめに排尿することが重要です。
さらに水分を十分に摂取することも忘れてはなりません。
以上が尿路感染症に関してです。
つづいて高齢者が尿路感染症になりやすい原因について解説していきます。
高齢者が尿路感染症になりやすいのは免疫力の低下
高齢者が尿路感染症になりやすいのは、免疫力の低下が理由の1つとして挙げられます。
先ほど紹介したように、尿路感染症にかかる原因は細菌やウィルスが、尿の通り道に感染することです。
年を重ねると、免疫を担う白血球の数が減少し、その活動も抑制されていきます。
これは白血球の成長を促す、ひ臓・リンパ節の機能が低下し、白血球が病原体へ反応する能力が弱まることを原因としています。
結果的に高齢者になれば免疫力が低下し、尿路感染症にかかるリスクが高くなっているわけです。
免疫力の低下は尿路感染症だけでなく、インフルエンザやノロウイルス、肺炎などにかかるリスクも高めます。
寝たきりの方は免疫力の低下に加え、排せつ後からオムツ交換までの時間が長くなりやすいことが、尿路感染症の原因の1つと考えられます。
排せつしたあとにオムツ交換までの時間が長いと、細菌が増殖しやすいためです。
利用者の排せつリズムを把握し、可能な限り適切なタイミングでオムツ交換を行いましょう。
正しい女性の陰部洗浄の方法
さいごに正しい女性の陰部洗浄の方法をご紹介していきます。
女性の場合は上から下へ(お腹からお尻の方へ)向かい、拭いたり洗ったりするようにしましょう。
陰部洗浄を行う際は、以下の物品をあらかじめ準備しておくことをおすすめします。
【陰部洗浄を行う際に必要な物品】
- 使い捨て手袋
- トイレットペーパー
- 陰部洗浄ボトル
- お湯(温度に注意)
- 陰部清拭用の使い捨てタオル
※暖かいお湯で湿らせたものと、乾いたものの2種類を用意しておくとよい
具体的な女性の陰部洗浄のやり方は以下の通りです。
【女性の陰部洗浄の方法】
- 手袋をつけ、トイレットペーパーで排泄物をやさしくふき取る
- お湯を自分の腕にかけ、人肌程度の温度になっているかを確認する
- 利用者に声かけをし、お湯を大腿の内側にかけ、お湯の温度が適切かどうかを確認する
- 陰部に上からお湯をかけて洗う
- 汚染が強い場合は陰唇を開き、しっかり洗う
- 濡れた使い捨てタオルで、上から下に向けてやさしく陰部を拭く
- 乾いた使い捨てタオルで軽く押さえ拭きをする
※この手順を行った場合に限り、洗い流した後、手袋を交換する
【参考サイト:介護アンテナ 陰部洗浄の方法・使用物品・実施する場合の注意点】
排便時以外の、陰部洗浄の目安は1日1回となっています。
しかし1日1回というのは目安であり、利用者の状態にあわせて、陰部洗浄の回数を検討することをおすすめします。
陰部洗浄を行うときは手順の確認とともに、プライバシーの配慮を行いたいところです。
高齢者となり、健康上の理由によって介護が必要であったとしても、他人に陰部洗浄を行ってもらうのは恥ずかしいと感じます。
カーテンや仕切りなどで入り口を隠したり、パーテーションを用い、他の利用者からの視線を遮る工夫をしたりする必要があります。
環境づくりを行うとともに、ブランケットやタオルなどを使用し、利用者の気持ちに寄り添ったケアを心がけましょう。
まとめ
陰部洗浄の必要性や尿路感染症、女性の陰部洗浄のやり方に関して解説してきました。
陰部洗浄について理解が深められたのではないでしょうか。
なぜ陰部洗浄はそんなに大切なのかをまとめると
- 陰部洗浄を行うことにより、清潔な状態を保ち、細菌の増殖を抑制でき、尿路感染症のリスクを抑えることが期待できる
- 発熱や排尿回数の増加、排尿時の痛みなどの症状が現れるのが尿路感染症である。原則的に入院し、抗菌薬の点滴治療を行うことになる
- 陰部洗浄の手順の確認だけでなく、プライバシーへの配慮を十分に行い、利用者に寄り添ったケアを心がけたい
ということがあります。
年を重ねれば免疫力が低下し、尿路感染症をはじめとした病気にかかるリスクが高くなります。
清拭だけでなく、最低限1日1回は陰部洗浄を行い、清潔な状態を保ちたいところです。
健康上の理由で必要性があるとはいえ、他人に行ってもらう陰部洗浄は、羞恥心を覚える行為であるということを胸に留めておかなければなりません。
陰部洗浄を行うときにはプライバシーに十分配慮し、業務効率や時間を優先することなく、利用者に寄り添ったケアを心がけましょう。