スムーズに脱衣介助するには介助方法だけでなく、前準備を確認しておくことが重要です。
また脱衣介助では、麻痺がある人の介助を行う順番に、注意を払わなければなりません。
今回は介護技術の中でも、脱衣介助にスポットをあてて、その前準備や麻痺がある方の介助方法などについて、解説していきます。
脱衣介助に関して興味がある方はご参考になさってください。
脱衣介助の準備
まずは脱衣介助の準備から確認していきましょう。
脱衣介助に限らず、前準備を適切にすることが、スムーズに介助を行うときのポイントです。
脱衣介助の準備は介助に必要な物品を用意することと、室温の調整です。
脱衣介助では薄着もしくは裸になりますので、室温をあらかじめ適温に調整しておきます。
特に気温が低下し、感染症や急激な血圧の変化のリスクが高まる冬場は、室温の調整を忘れずに行うよう胸に留めておきましょう。
次に脱衣介助をするときに用意しておく物品についてです。
準備する物品は3種類あり、1つ目は着替える衣類や下着です。
伸縮性のある生地やサイズが大きめのもの、マジックテープを使用した服など、着替えやすい衣類を用意します。
あわせて脱いだ衣類をまとめておく、ランドリーバスケットを用意しておけば、よりスムーズな脱衣介助が行えます。
2つ目がタオルやブランケットです。
デイサービスや施設などでは脱衣介助をしている姿が、職員や他の利用者の目に触れる可能性があります。
見ず知らずの人に肌をさらすことは、年を重ねても恥ずかしいものです。
利用者の肌を不特定多数の人にさらす可能性がある場合は、用意したタオルやブランケットで、利用者の地肌を隠すよう心がけたいところです。
3つ目が塗り薬や貼り薬です。
これらは塗り薬や貼り薬を塗布する必要がある方に限られます。
脱衣介助を行うときは肌をさらすため、塗り薬や貼り薬を塗布するのによい機会です。
また皮膚トラブルやケガ・あざの確認を行うタイミングでもあります。
脱衣介助とあわせて薬の塗布ができるよう、あらかじめ用意しておきましょう。
以上が脱衣介助の準備についての解説です。
次の項目では、麻痺がある方の脱衣介助のコツをご紹介していきます。
麻痺がある人の脱衣介助のコツ
麻痺がある人の脱衣介助は、原則的に着患脱健を意識し行うことが鉄則です。
今回は麻痺がある人の脱衣介助のコツを、3つご紹介していきます。
その① 脱がすのは健側、着せるのは患側(着患脱健)
1つ目が着患脱健(ちゃっかんだっけん)を意識し、脱衣介助を行うことです。
着患脱健とは衣類を脱がすときは健側、着させる時には患側から行うということを意味しています。
健側は麻痺が見られない方、患側は麻痺の症状がある方を指し示します。
例えば右腕に麻痺がある人であれば、左側の腕から上衣を脱がし、その後右側の肩から腕にかけて上衣を抜いていきます。
上衣を着せるときには、脱がせたときの順番の逆を行います。
麻痺がある右腕から袖を通し、その後に左腕の袖を通します。
衣類を脱がせるときは麻痺がある方(患側)、着せるときには麻痺がない方(健側)から、行うようにすると覚えるようにしましょう。
その② 関節を介護者の手で保護して支える
2つ目が利用者の関節を介護者の手で保護して支え、脱衣介助を行うということです。
麻痺や拘縮が見られる方を介助する場合、無理やり手足を引っ張ってしまうとケガの可能性が高まってしまいます。
手足首や肘、ひざ関節を支え保護しながら、脱衣介助をするのが適切です。
また服の袖やズボンのすそを通すときにも、関節を支えながら行います。
ただしケガを理由に、足首や肘、ひざ関節を動かすことが禁止されている、人の脱衣介助を行うケースでは、関節を支えるのは控えることをおすすめします。
その③ 出来る範囲のことは自分でやってもらう
3つ目ができる範囲のことは、利用者本人でやってもらうことです。
このことは脱衣介助に限らず、入浴介助やトイレ介助など多くの介護に共通します。
業務が忙しく時間が足りなかったり、利用者の安全を優先しすぎたりする理由で、すべてを介助するのは厳禁です。
自分でできる範囲を自身で行ってもらうことにより、ADLの維持・向上が期待できます。
本人に痛みや無理が生じず、本人のペースで衣類の脱ぎ着を行ってもらうよう心がけたいところです。
脱衣介助での注意点
さいごに脱衣介助を行うときの注意点をご紹介していきます。
室温管理や、ランドリーなどの物品に関することから、羞恥心への配慮という利用者の内面に関わることまで多岐にわたります。
これから紹介する注意点を胸に留め、脱衣介助を行うようにしましょう。
その① 羞恥心への配慮
1つ目が羞恥心への配慮です。
脱衣介助の準備でも紹介したように年を、重ねたとしても見ず知らずの人に脱衣介助をしてもらうのは、恥ずかしさを覚えます。
タオルやブランケットで利用者の体を包み隠すだけでなく、カーテンやパーテーションを適宜利用し、出来るだけ他の人の目に触れない環境づくりを行わなければなりません。
また利用者と同性のスタッフが脱衣介助を行えば、より羞恥心への配慮を行うことが可能です。
その② 室温管理
2つ目が室温管理です。
こちらも脱衣介助の準備の項目で触れたように、脱衣介助を行うにあたり、事前に室温を適温に調整しておきます。
部屋が適温になるまで一定の時間が必要である場合は、時間に余裕を持って、室温調整を行いたいところです。
その③ 脱いだ衣類はすぐにランドリーへ
3つ目が脱いだ衣類は、すぐにランドリーへ入れることです。
脱いだ服をすぐにランドリーへ入れることを習慣づけておけば、衣類の散乱を防ぐだけでなく、紛失防止の助けとなります。
特にデイサービスや施設で脱衣介助を行うときには、同じタイミングで複数の利用者の対応をしなければならないケースがあります。
介助に集中してしまうあまり、脱いだ衣類の管理がおろそかになってしまい、棚の隙間やベッドの下などに衣類が入り込んでしまう可能性があるのです。
また脱いだ衣類をランドリーへ入れるようにすれば、洗濯が必要な衣類の判別をより簡単にすることができます。
まとめ
脱衣介助の準備や、麻痺がある人の脱衣介助のコツ、脱衣介助をするときの注意点を解説してきました。
脱衣介助に関して理解が深められたのではないでしょうか。
脱衣介助の方法をまとめると
- 脱衣介助を行うにあたり、室温を適温に調整し、衣服やタオル・ブランケット、塗布する薬を事前に準備するとよい
- 麻痺がある人は衣類を脱がすときは麻痺がある方から、着させるときには健康な方から行う、着患脱健を意識し行うのが鉄則である
- 利用者の羞恥心への配慮を十分に行い、脱いだ衣類はランドリーへ入れるよう心かける
ということがあります。
十分に利用者の羞恥心を配慮し、本人ができることは自分で脱ぎ着してもらい、脱衣介助を行いたいところです。
他の業務が数多く、さらには時間に余裕がなく、利用者をせかしてしまったり、無理な介助をしてしまったりするケースが見られます。
介助者の都合で行われる介護はケガのリスクを高め、結果的に介護に必要な時間がより増加してしまう悪循環を生みだしてしまいます。
業務改善や日々の生活を定期的に見つめなおし、無理な介護を行わない環境づくりを心がけましょう。