自分の身体を自由に動かすことが難しい方は、ベッドの上での移動にも介助が必要ですね。
長い時間同じ姿勢でいると体がつらくなったりしますので、体位変換はとても大切な介護の一つ。
状況によって、様々な移動方法がありますが、今回は、上方移動について、ご説明します。
上方移動とは?
上方移動は、要介護者の身体をベッドの上の方へ動かす介助です。
ベッドの上で過ごす時間が長い人は、ギャッジアップをして頭を上げた状態で過ごすことが多いです。
しかし、この状態でいると、時間と共に体が足元の方へずれてしまうことが多いです。
このような時、要介護者の身体をもとの位置まで戻す移動が、上方移動です。
上方移動の手順(全介助の場合)
要介護者の身体の状態は様々ですが、まず、全く自分で体を動かすことのできない全介助の方の場合を説明します。
その① 要介護者の膝を立てる
まず、上方移動のために必要な体勢を作ります。
要介護者の両膝を立てた状態にします。
要介護者は自分で体を動かすことができませんので、介助者が動かしてあげます。
そして、両腕は胸の上に置きましょう。
その② 上半身に手を差し込む
介助者は、要介護者の真横に立ち、要介護者の首の下から手を差し込みます。
この時、手の甲を上にするとスムーズに入りやすいです。
首の下を手が通ったら、手の甲を返すようなイメージです。
要介護者の向こう側に手がまわったら、要介護者の脇の下に手を入れます。
その③ 下半身に手を差し込む
この状態で、要介護者の身体を向こう側にそっと倒します。
一方の腕は要介護者の肩の下にありますので、反対の手で要介護者の膝をそっと押しながら、上半身も横向きに倒す感じです。
ここで要介護者の腰の背骨部分に手を当てます。
そして、要介護者の身体を仰向けの状態に戻します。
その③ 介助者が立ち位置を変える
次に介助者は立ち位置を変えます。
今、要介護者の上半身の真横に立っていますので、そこから、頭のあたりまで立ち位置を移動します。
手は要介護者の身体の下にある状態ですので、斜めに手を差し出しているような感じになります。
その④ 要介護者の身体を自分の方へ引き寄せる
要介護者の身体を動かします。
今、腕を斜めに差し出した状態ですので、これを自分の方へ引きよせるように、要介護者の身体を移動させます。
綱引きをイメージすると感覚がつかみやすいです。
勢いをつけすぎると、要介護者の頭をベッドのヘッドボードにぶつけてしまうことがありますので注意しましょう。
枕をヘッドボードに立てかけておくと安心です。
上方移動の手順(一部介助の場合)
自分で体を少し動かすことができる人の場合は、その力を借りることポイントです。
これにより、要介護者の残存機能を維持することにつながりますし、介助者の負担も軽減することができます。
その① 手足を中心に寄せて体勢を整える
要介護者の両腕は胸の上に置き、膝を立てた状態にします。
自分で身体を動かすことができる人にはできる範囲内でやってもらいます。
介助が必要であれば、介助者が行います。
その② 腕を体の下へ入れる
一方の手で要介護者の頭を軽く上げ、首の下から反対の手を差し込みます。
向こう側の肩をしっかりと手で支えます。
全介助の方は、わきの下を支えましたが、ここが異なります。
その③ 下半身に手を差し込む
もう一方の手は、要介護者の腰を支えます。
要介護者が身体を動かすことができる場合は、声をかけて腰を浮かせてもらいます。
そして手を差し込み、腰を支えます。
その④ 下肢に力を入れてもらいそのまま上方に体重移動する
介助者は体重移動をしながら要介護者の身体を動かすのですが、この時、要介護者の残存機能を活用ことがポイントです。
要介護者に声をかけて、足に力を入れてもらい、タイミングを合わせて上半身を上方へ移動させます。
布団をけるようなイメージですので、そのような声掛けがわかりやすいです。
これにより、楽に移動をすることができます。
まとめ
ベッド上での移動や体位変換は、寝たきりの方の健康状態維持のためもとても大切な介護の一つ。
ただ、上手に行わないと、介助者の身体的負担が大きくなったり、要介護者にも痛みや危険が伴う可能性があります。
双方にとって安全な介助方法を身につけたいですね。