少子高齢化が進み介護職のニーズが高まる一方で、介護職の慢性的人手不足はなかなか解消されていません。
この背景には介護職は難しい専門職という理由があります。
高齢者の尊厳ある生活を守るために幅広い知識と技術が必要なのですが、その基本となるものがコミュニケーションです。
この記事では、介護技術とは何を指すのかについて解説していきます。
なぜ介護に技術が必要なのか
親や身内の人が高齢になると、様々な面でサポートが必要になっていきます。
はじめはちょっとした手助けであって日々の生活の延長としてできたことも、その必要度が高まるにつれ、「介護」としての幅広い知識と技術が必要になってきます。
なぜでしょうか?
介護は人と関わる仕事です。人と人との信頼関係の上に成り立っています。
そのため、相手の心に寄り添った対応を学ばなければなりません。
それにより介護される人の尊厳のある生活が守られていきます。
また、介護される人の健康と安全を守るための知識や技術も必要です。
高齢者の方が不快感や苦痛を感じることなく安全な日常生活を送るために、介護者は人間の体の構造を知り、適切な介助や動作を行う必要があります。
介助の仕方はもちろん、話しの聞き方、声のかけ方、表情一つをとっても、全てが介護技術です。
人一人が人間として気持ちよく生きる、尊厳のある生活を続けるために、介護者は技術を磨かなければならないのです。
介護の基本は自立支援
介護にあたる上で大切なことは自立支援です。
自立支援とはどういうことなのか、みていきましょう。
その① 自立支援とはなにか
自立支援は、本人の「身体的自立」「精神的自立」「社会的自立」の3つを達成し、その人の心身状態を改善または維持するよう、介護によって支援することです。
できないこと、難しいことをただ単にやってあげるというスタンスではなく、自分でできるように支援していくという介護です。
人が健康であるためには、身体的に病気がなく、かつ精神的、社会的に良好な状態になければなりません。
自立に関しても、身体的自立、精神的自立、社会的自立と分けて考えられ、それぞれの自立はお互いに影響しあって成り立っています。
高齢要介護者は、永年、身体的、精神的、社会的に自立した人生を送ってきて、今、身体的な自立だけが難しくなった状態。身体的自立が難しいことから、社会的自立、精神的自立も阻まれてしまいがちです。
逆にいうと、自分でできることが増え、身体的自立が達成されれば、その他の自立にも良い影響を及ぼし、生活の質の向上も期待できるのです。
その② 日常生活における自立支援
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自立支援介護には、以下の4つの基本があります。
- 水分:1日1500ml
- 栄養:1日1500kcal
- 運動:1日2kmの歩行
- 便通:3日以内の自然排便
- 本人のQOLの向上
- 家族の介護負担の軽減
- 介護度の改善
日常生活にこの4つの基本を取り入れることで、
が期待できます。
本人のやる気を引き出すのも介護技術
自立支援とは、自分でできることはできるだけ自分でやってもらうことが基本です。
自分でできるということが、本人の自信や意欲、生きがいにもつながっていきます。
そこで介護する側としては、「自立を支援するように働きかける」ことが必要となってきます。本人のやる気を引き出す技術、これは正に介護技術と言えるでしょう。
介護=お世話という感覚もありますので、本人が自分でやるのでは大変だろうと、つい介護する側が率先してやってしまいがち。
しかしそれでは、知らず知らずの間に本人の能力を奪ってしまっている可能性があります。
本人のやる気を引き出す介護で、自立とQOLを支援していきたいものです。
介護の基本コミュニケーションについて
介護は人と関わる仕事でお互いの信頼関係がとても大切。
信頼関係は、よいコミュニケーションの上に成り立つと言っても過言ではありません。
基本姿勢、表情、傍聴・共感・受容等の態度、適切な座り位置などを身につけて、日常会話の中で相手に不快感を与えないことが必要なのです。
要介護状態の高齢者は、介護してくれる人に対して、「いつもお世話をかけて申し訳ない」
というような気持ちを少なからず持っています。
同時に、介護者の表情や態度を敏感に感じ取るものです。
介護される人が心を閉ざしてしまわないよう、コミュニケーション技術を常に磨いていきましょう。
介護技術と自己研鑽
介護は特別な知識と技術が必要な専門職です。
そして、その知識や技術は日々研究され、より良い技術が生まれています。
一方、少子高齢化の進む日本では、医療費や介護諸費用の増加が大きな課題として挙げられ、介護保険制度や、介護事業における様々な方針改定が取りざたされています。
今後、重度化予防と要介護状態の改善を目指す介護が目標とされ、身体機能の維持や改善、生活リハビリの知識や技術の習得が求められる時代になっていくでしょう。
取得資格による手当の差も顕著になるとも言われています。
このようなことから、介護職に就く人は専門職として常に新しい情報や技術を取り込んでいかなくてはなりません。
日頃からアンテナを張り、目標を定めて自己研鑽に励みましょう。
まとめ
介護職は、介護される人の尊厳ある生活を守り、自立を支援するため、高い専門性と倫理観が求められる仕事です。
コミュニケーション能力一つをとっても、専門的な知識と技術がうかがえるものです。
介護業界は取り巻く環境やニーズに合わせた制度改正や介護技術の改善が多く、常に情報収集と自己研鑽が求められます。
常にアンテナを張り、目標を定めてレベルアップを続けていきましょう。