そもそも腰痛はなぜ起こるのか
腰痛は様々なことが原因となって現れる一つの症状です。
椎間板ヘルニアなど神経を圧迫する脊椎の病気はもちろん、20代から始まるといわれる骨、椎間板、じん帯、関節などの変化や老化が原因の場合もあります。
また、日頃の生活習慣、労働環境も大きな原因の一つです。
重いものを持つ、中腰姿勢を長く続けるといった行動は、腰回りの筋肉への負担が大変大きいです。
こういった様々な理由で、腰回りの関節に大きな負担がかかると、椎間板や関節が傷み、腰痛となって現れるのです。
腰痛の原因となる動作・介護
介護者の中には腰痛に悩まされる方が多いですよね。
腰痛の原因となりやすい介護の動作には以下のようなものがあります。
その① 移乗介助
移乗介助は、ベッドから車いすへ、または車いすからベッドへ、車いすからトイレへの移動させる介助です。
要介護者の身体を支えながら向きを変えて、座らせるという動作になり、体重を支えると同時に、慣れないと腰をねじるなど、腰への負担はかなり大きいです。
介護者自身も上手に腰を落として行わないと、急激に腰を痛めてしまうこともあります。
トイレに行くとき、食事に行くとき、入浴に行く時など、介助動作の中でも頻度の高い介助ですので、腰への負担が積み重なってしまいます。
その② 入浴介助
入浴介助では、要介護者を安全に湯舟につからせる、座っている介護者の身体や髪の毛を洗う、拭くといった動作が必要になります。
湯舟に浸からせるときには、ゆっくりと安全に腰を下ろせるよう支え、身体や髪の毛を洗う時には、かがんだり、中腰になります。
このような、かがんだり、立ち上がったりという動作の繰り返しは、腰に負担がかり腰痛の原因になります。
その③ 排泄介助(おむつ交換も含む)
排泄介助やおむつ交換はベッドの上で行う介助です。
寝ている状態の要介護者の身体の向きを変える、腰を持ち上げる、洗浄するなど、中腰の姿勢が続くため、腰痛の原因となります。
その④ 体位変換
ベッドに寝ている要介護者の身体の向きを変える介助が、体位変換です。
長い時間同じ姿勢で寝ていると、身体がだるくなったり、皮膚に負担がかかるため、一日の内で定期的に行う必要があります。
ベッドの上での作業となるので、中腰の姿勢になる上、無理に力で動かそうとすると腰に余計な負担がかかってしまいます。
その⑤ 臥床状態での更衣介助
臥床状態での更衣介助はベッドの上で寝ている要介護者の着替えです。
ベッドの上での作業のため、中腰が続きます。
途中、要介護者の身体の向きを変えたり、身体を支えながら行うため、腰への負担が大きいです。
腰痛にならない対策
その① 介助の際は重心を低くする
介助の動作を振り返ると、中腰になったり、かがんだりする動作が多いことに気が付きますね。
腰を前に倒す、腰を曲げるという状態は、腰への負担がとても大きいもの。
そこで、腰を曲げるのではなく、腰を落として重心を低くすることが大切です。
足を開いて重心を落とすと安定感が増しますので、力を入れてもバランスを崩しにくく、安全な介助がしやすい上、腰の筋肉への負担も減少します。
その② 力任せに介助しない
人一人の身体を支えるという介助には、大きな力が必要ですよね。
しかし、力任せの介助は、介助する人の腰や身体への負担が大きく、ケガの原因ともなってしまいます。
介助者の中には身体の小さな女性も多いものですが、身体に無理がかからず小さな力で介助するために、介助のコツを学びましょう。
ボディメカニクスを活用すると負担の少ない介助ができます。
ボディメカニクスは人間の身体の構造を利用した介助方法です。
介助する人の腰や身体への負担を軽減できるだけでなく、介護される人にとっても安全で苦痛のない方法です。
また、介助がしやすい環境を整えることも、小さなことのようですが効果があります。
例えば、介助する人の身長に合わせてベッドの高さを調整することで、中腰にならずに介助ができます。
ベッドの位置を変えて、両サイドから介助ができるようにすれば、身体の片側だけ不調がでることを防ぐことができます。
その③ 福祉用品を活用する
腰痛がひどくて介助が大変になってしまったら、福祉用具を利用するという方法もあります。
要介護度が高い方の移乗のための電動リフト、高さや角度が変えられる介護用ベッド、移乗の際に要介護者の身体を持ち上げることなくスライドさせる移乗シートなどがあります。
在宅介護の場合は介護保険を利用してレンタルや購入ができますので、ケアマネージャーに相談しましょう。
また、介助者本人もコルセットや腰痛ベルトを利用することで、腰痛を緩和することができます。
腰痛対策運動・ストレッチ
ストレッチには、ケガの予防やリラクゼーション、疲労回復などの効果があります。
また、身体が硬いと腰痛を引き起こしやすいことからも、適度なストレッチで筋肉をやわらかくしておくことは、腰痛予防に有効と言えるでしょう。
気持ちもすっきりとして気分転換にもなりますよ。
1.肩・腕・わきの下のストレッチ
- 肩の上下運動をゆっくり2回
- 頭の上で両手を組み、そのまま上にゆっくり引き上げるようにストレッチ 10秒×2回
- 片手を腰に当て、反対側の腕を上げてわきの下(体の側面)をゆっくりストレッチ 左右各10秒×2回
2.背中・腰・胸のストレッチ
- 前屈しながら背中をストレッチ 10秒×2回
- さらに前屈しながら腰をストレッチ 10秒×2回
- 肩を後ろに引き、胸を張ってストレッチ 10秒×2回
3.太腿とふくらはぎのストレッチ
- 椅子の背もたれに両手をつき、安定した姿勢をとる
- 片足をを後ろに引く
- 両足のかかとを床にしっかりつけて太腿の前側とふくらはぎをストレッチ 10秒×2回
- 足を入れ替えて両足をストレッチする
まとめ
介護者の中には、腰痛で悩む人が少なくありませんね。
しかし介護者が健康を害してしまうと、介護される人も申し訳ないという気持になってしまいます。
腰に負担がかからない介助の方法について知り、上手に介護を続けていきたいですね。