ワークライフバランスという言葉を聞いたことがありますか?
少子高齢化のこれからの時代、育児や介護と仕事の両立は重要です。
この記事ではワークライフバランスについて、また介護休暇について詳しく解説します。
ワークライフバランスとは
ワークライフバランスとは、生活の充実によって、仕事の効率・パフォーマンスが向上し、短期間で仕事の成果を出せる・プライベートに時間を使えるという好循環のことです。
その① ワークライフバランスの誤解
ワークライフバランスを一言でいうと、「生活と仕事の調和・調整」となりますが、これでは解釈がさまざまです。
たとえば、この言葉を「生活」と「仕事」どちらを重視するか、という取捨選択のように思うと誤解があります。
生活と仕事は、互いに相反するものではないからです。
本来ワークライフバランスとは、生活と仕事、どちらか一方を犠牲にするものではなく、仕事と生活の最適な比率を表すものでもありません。
その② ワークライフバランスの2つの概念
ワークライフバランスには以下の2つの概念が含まれています。
・ファミリーフレンドリー
・男女均等推進
ワークライフバランスの実現には、これらの2つの考え方が不可欠であり、ワークライフバランスを構成する重要要素となります。
以下にこの2つの概念について説明します。
「ファミリーフレンドリー」とは「両立支援」とも訳されます。
働きながら育児・介護をするための制度・環境を整えることを意味します。
「働き方改革」で見直されることが多いのも、このファミリーフレンドリーの取り組みです。
厚生労働省では、ファミリーフレンドリー企業の基準を以下のように定めています。
- 法を上回る基準の育児・介護休業制度を規定しており、かつ、実際に利用されていること
- 仕事と家庭のバランスに配慮した柔軟な働き方ができる制度を持っており、かつ、実際に利用されていること
- 仕事と家庭の両立を可能にするその他の制度を規定しており、かつ、実際に利用されていること
- 仕事と家庭の両立がしやすい企業文化を持っていること
「男女均等推進」とは
- 男女の性別にかかわらず、能力を発揮するための均等な機会が与えられる
- 男女の性別にかかわらず、評価や待遇における差別を受けない
ことを意味します。
1985年に策定された男女雇用機会均等法が、日本における男女均等推進の明確なはじまりです。
この法律は時代とともに随時改正され、今では「募集」、「採用」、「配置・昇進」のすべてにおいて、性別を理由とした差別が禁止されています。
また、男女均等推進には、均等を維持し、差別を禁止する側面の他に「今ある格差を解消していく」といった側面もあります。
厚生労働省では、女性の能力発揮を促進するポジティブな取り組みを実践する企業を「均等推進企業」と位置づけています。
- 均等(差別の禁止)
- 推進(格差の解消)
どちらも含むものが男女均等推進という考え方です。
その③ ワークライフバランスの必要性
日本では「ワークライフバランス」というと、女性の出産・育児・働き方を支援するものと同義として考えられることもあります。
これは、1990年代に政府による少子化対策として、育児休業制度の整備、保育所の拡充が進められたことが始まりです。
それでも少子化の流れは止まらず、2003年に少子化対策基本法、次世代育成支援対策推進法(次世代法)が成立しました。
この法律によって、企業に出産・育児/仕事の両立を支援するための行動が義務づけられたことが、ワークライフバランスの視点がクローズアップされるきっかけとなりました。
ワークライフバランスは、女性のためだけのものではなく、男性にも大きくかかわってきます。
少子化と同様に深刻なのとなっているのが、高齢化問題です。
「2025年問題」があと数年後に迫っています。
これは、団塊世代が後期高齢者になり、医療や介護などの社会保障費の急増が懸念される問題を指します。
女性だけでなく男性にとっても、親の介護が必要なときに安心して休職することができ、復職後も昇進の機会が与えられる企業でないと、優秀な社員が定着しない時代になると思われます。
つまり、ワークライフバランスは、少子化に対する出産・育児支援、高齢化に対する働き方改革、という2つの理由により、重要視されています。
その④ ワークライフバランスのメリット
ワークライフバランスの広がりは社会的な背景が大きく影響していますが、企業がワークライフバランスに取り組むメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
以下にワークライフバランスのメリットについて説明します。
女性社員の定着
出産・育児について適切な支援、柔軟な働き方の提案を行うことで、女性社員の定着が期待できます。
保育園への入園が難しく今の働き方では復職できない、復職後育児支援をあてにできない、という理由で仕事を続けられない女性も多く、第1子誕生前後に約6割の女性が退職をしています。
ワークライフバランスの導入・強化に取り組むことで、女性が長く働けるようになり女性社員の定着、女性リーダーの育成・成長が期待できます。
優秀な人材の獲得
ワークライフバランスを推進することで、社員を大切にする会社、働き方が柔軟な先進企業、というイメージを作ることができ、人材の獲得に大きなプラスとなります。
スキルはあっても働き方が自分には合わない、という優秀な人材が集まってくることも期待できます。
さらに、ワークライフバランスの実現によって、獲得した優秀な人材が長く活躍できるようになります。
採用・獲得だけでなく、優秀な人材の定着、人材育成・研修コストの回収という視点でもメリットがあります。
社員のモチベーション向上
ワークライフバランスがとれていると、仕事への意欲が高く、特に男性はプライベートが充実していることが、仕事のモチベーションにつながる傾向があります。
職場のモチベーションが上がることで、人材育成の活発化、職場コミュニケーションの向上、労働生産性の向上、が見込めます。
リーダー社員にこそワークライフバランスの活用・理解をしてもらうことで、若手・新入社員ももっと成長したい・活躍したいという意欲が向上するでしょう。
労働生産性の改善
日本は先進国の中では労働生産性が低く、これは長時間労働が常態化する企業風土が定着していることと関係があります。
多様な働き方への対応、生活(プライベート)も充実させられる仕組みによって長時間労働の改善・労働生産性の向上が期待できます。
優良企業のイメージ醸成
ワークライフバランスを実現することで、2) 優秀な人材の獲得、と同様に社員を大切にする企業、社員が自社のサービスの恩恵を受けられている企業、離職率が低く、社員が安心して働ける企業、という優良企業のイメージを育てることができます。
介護休暇を活用することのメリット
介護休暇とは、病気や怪我、高齢といった理由で要介護状態になった両親や身内などの家族を介護・世話をする労働者に対して、与えられる休暇を指します。
介護休暇制度は、「育児・介護休業法」によって定められており、時間単位または半日単位での休暇取得が可能です。
その他、直接介護(食事・排泄介助)以外の買い物や書類手続きなどの間接作業にも適用できます。
この介護休暇は1年度(年度を事業主が特に定めない場合は毎年4月1日から翌年の3月31日となる)で最大5日間、介護対象が2人以上の場合は10日間取得でき、有給休暇とは別の休暇として定められています。
以下に介護休暇を活用するメリットについて説明します。
その① 介護休暇を取得する個人のメリット
介護休暇では、時間単位で休暇を取得することができるため、就業者がより実情に応じた休みを取れるようになり、仕事と介護を両立しやすくなり、介護離職を防ぐことができるというメリットがあります。
その② 介護休暇を取得させる企業のメリット
親の介護をする中心世代となる40〜50代は、いわゆる働き盛りの世代であり、管理職など重要なポストについている優秀な人材も多く存在します。
企業にとって優秀な人材を手放すことは大きな損失と言えます。
企業側にとっても、介護休暇を取得しやすい環境を整えることで、戦力の確保や雇用の安定をはかれるというメリットがあります。
その③ 社会全体のメリット
少子高齢社会に突入している現在では、介護を理由に退職する労働者が増えています。
介護休暇を活用し介護離職者を減らすことができれば、日本全体の労働力を向上させ、国力強化につなげるという社会全体のメリットも考えられます。
まとめ
この記事ではワークライフバランスについて、また介護休暇について解説しました。
以下にこの記事の内容についてまとめます。
- ワークライフバランスとは、生活の充実によって、仕事の効率・パフォーマンスが向上し、短期間で仕事の成果を出せる・プライベートに時間を使えるという好循環のことです。ワークライフバランスには「ファミリーフレンドリー(両立支援)」、「男女均等推進」の2つの概念が含まれています。
- ワークライフバランスは、少子化に対する出産・育児支援、高齢化に対する働き方改革、という2つの理由により重要視されています。
- ワークライフバランスには、1) 女性社員の定着、2) 優秀な人材の獲得、3) 社員のモチベーション向上、4) 労働生産性の改善、5) 優良企業のイメージ醸成などのメリットがあります。
- 介護休暇とは、病気や怪我、高齢といった理由で要介護状態になった両親や身内などの家族を介護・世話をする労働者に対して、与えられる休暇のことです。介護休暇を活用することによって、個人のメリットもありますが、介護離職を防ぐことで戦力の確保や雇用の安定化という企業側のメリット、日本全体の労働力向上、国力強化などの社会全体のメリットも考えられます。
少子高齢化の現在、育児や介護と仕事の両立は重要です。今までは女性のための制度と思われていましたが、これからの時代は男性にとっても親の介護が必要になった際に、安心して休職することができ、復職後も昇進の機会が与えられる企業というものは重要になってきます。
ワークライフバランスが良好であることは、個人はもちろん、企業、社会全体へのメリットもあります。