家族の中に要介護者を抱える労働者にとって、介護休暇や介護休業は大変ありがたい制度です。
一方で、制度利用に関する心ないケアハラスメントに悩む人も少なくありません。
しかし、介護休暇や介護休業は労働者の権利ですし、自分はもちろん、介護状態の家族のためにも、上手に活用して介護と仕事を両立させなければなりませんよね。
そのためにも、ハラスメントに対する適切な対処法を知る必要があります。
今回は、ケアハラとその対処法について、お伝えしていきます。
介護休暇・介護休業は、法律で定められた権利!
超高齢化社会とも言われる現在の日本。親の介護が必要で仕事との両立が難しいという人は多く、今後もさらなる増加が予想されます。
このような介護と仕事の両立が困難な人のために設けられた制度が、介護休暇と介護休業制度です。
これは、育児介護休業法という法律のもとに定められたもの。
原則として
「事業主は介護休暇(休業)申請を拒否できない」
「介護休暇(休業)を取得しても解雇される理由にはならない」
と定められています。
たとえば、勤務先の就業規則に介護休暇、介護休業が定められていない場合でも、取得することができるのです。
(ただし、労使協定で介護休暇や介護休業の「対象外」に当てはまる場合は除く)
また、解雇の理由とならないだけでなく、降格や減給、賞与の削減、不利益な配置転換など、当人にとって不利益となるような変更や取り扱いも、禁止されています。
介護休暇や介護休業だけでなく、時間外労働、深夜労働の制限や、時短勤務も可能です。
このように、介護と仕事の両方を抱える人は、法律により強く守られていると言えるでしょう。
新しいハラスメント“ケアハラ”に注意!
その① そもそもハラスメントとは?
ハラスメントとは、相手に対する嫌がらせです。
ハラスメントは、加害者となる人が無意識のうちに行っている場合がありますが、たとえそのつもりはなくても、加害者となる人を傷つける言動や行為、苦痛や不利益を与える行為は、ハラスメントとなります。
近年、パワーハラスメント以外にも、セクシャルハラスメント、モラルハラスメントなど様々なハラスメントが問題として挙げられています。
その② 介護に係るハラスメント“ケアハラ”とは?
働きながら家族の介護を行う労働者に対して、制度利用を理由に行う嫌がらせがケアハラスメントです。
高齢者の増加に伴い、要介護の家族を抱える労働者も増えているなか、生まれてきた比較的新しい言葉です。
ケアハラスメントに該当する言動には、以下のようなものがあります。
①会社側からの不利益な取り扱い
- 介護休暇や介護休業は認めないといわれる
- 次の契約更新を行わないといわれる
- 通常勤務ができないなら、契約社員かパートに降格といわれる
- 管理職から平社員へ降格させられる
- ありえないような配置転換をさせられる
- 減給される
- 退職を促される
②上司や同僚からのハラスメント
- 会社を休めていいねと言われる
- 残業をしなくてすむなんて、いいねといわれる
- ほかに面倒を見てくれる人はいないの?といわれる
- あなたがいない分、仕事がこっちに回ってくるといわれる
- いつからちゃんと働けるの?といわれる
- 介護に忙しい人に、重要な仕事を任せられないといわれる
介護休暇を取ってケアハラ等のハラスメント受けたらどうするか
実際にケアハラを受けたときには、泣き寝入りすることなく、適切な対応をしましょう。
その① 自分の権利をしっかりと主張しよう
介護休暇や介護休業は、法律で定められた労働者の権利です。
育児・介護休業法 制度の取得に関する嫌がらせを行うことは、法律違反に当たります。
この事実をしっかりと認識し、会社など相手方に毅然とした態度で臨まなければなりません。
家族のためにも、介護休暇・介護休業等取得の権利を、会社側にしっかりと要求しましょう。
ハラスメントをストップさせるためには、はっきりと自分の意思を伝えることがとても重要なのです。
その② 職場の窓口に相談する
事業主は、法律に基づき介護休業等に関する職場内でもハラスメントの防止措置を講じなければならないと決められています。
会社の人事労務、または労働組合など、ハラスメント問題に対応できる部署に相談しましょう。ハラスメントは個人の問題ではなく、会社としての問題なのです。
その③ 総合労働相談コーナーに相談する
会社で相談できない場合には、都道府県の労働局に問い合わせてみましょう。
匿名でも対応し、プライバシーを厳守してくれますので、安心して相談できます。
まとめ
介護休暇や介護休業は、要介護の家族を抱える労働者にとって強力な助けです。
法律で守られた権利でもあり、必要であればなにも気兼ねすることなく利用できるべきもの。
ハラスメントはあってはなりませんが、万が一ハラスメント受けた時には、泣き寝入りすることなく適切に対応しましょう。