家族に介護が必要になったときに、取得できるのが介護休暇です。
介護休暇は介護をしながら働き続けるために、労働者に与えられた権利となっています。
労働者から介護休暇の申請を受けた雇用主は、申請を拒否することはできません。
今回は介護休暇の概要や、介護休暇の申請を拒否されたときの対象方法について、解説していきます。
介護休暇の取得を考えている方や、介護休暇に興味がある方はご参考になさってください。
そもそも介護休暇とは
はじめに介護休暇とは、どのような制度なのかを確認していきましょう。
配偶者や父母、配偶者の父母などの介護が必要になったとき、その家族を介護・世話するために取得できるのが介護休暇です。
介護休暇を取得できる日数は1年度を通し5日間、要介護状態の家族が2人以上いる場合は10日間となっています。
また介護休暇は1日単位だけでなく、半日単位でも取得できることが特徴の1つとして挙げられます。
介護休暇の申請をする上で注意しなければならないのが、すべての労働者が介護休暇を取れるわけでない点です。
詳しくは次の項目で解説していきますので、そちらを参考になさってください。
【参考サイト:厚生労働省、介護休暇制度】
介護休暇の法的根拠
つづいて介護休暇の法的根拠と、介護休暇を取るための条件について解説していきます。
まずは介護休暇の法的根拠に関してからです。
介護休暇は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)」を法的根拠としています。
育児・介護休業法があるため、事業主は介護休暇の申請を拒否することはできず、法的な強制力が発生するのです。
その①「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」とは
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)は、育児休業や介護休業を取りやすい、労働環境の整備を進めるために施行されました。
育児・介護休業法によって労働環境が整備されることにより、ひいては仕事と家庭の両立支援につながるのです。
そもそも育児・介護休業法が施行された背景には、日本で進行している少子高齢化が挙げられます。
急激な少子高齢化は、地域社会の活力低下や労働人口の減少といった、社会経済に深刻的な影響を生じさせます。
そこで労働と結婚・出産・子育て、就労と介護のどちらかを選択しなければならない、二者択一の社会構造を変える必要性にせまられています。
仕事と生活の適切なバランスを取り、持続可能で安心できる社会が求められており、それを推し進めるために育児・介護休業法が施行されたのです。
その② 介護休暇を取るための条件
介護休暇を取るためには、一定の条件を満たさなければなりません。
それは介護が必要になった家族は誰なのかと、労働者の雇用状態の2つです。
はじめに介護が必要である家族についてですが、以下の表に該当する家族に介護が必要になった場合にのみ、介護休暇を取得することができます。
【介護休暇を取得することができる対象家族】
- 配偶者
- 父母および子供(祖父母、兄弟姉妹、孫も含む)
- 配偶者の父母
上表にある通り、介護が必要なのが配偶者である場合、介護休暇を取ることは可能です。
一方で叔父に介護が必要になったとしても、介護休暇を取得することはできません。
次に労働者の雇用状態についてです。
原則的に雇用期間が6カ月以上ある全ての労働者が、介護休暇の取得対象者となっています。
これは正社員のみならず、パート・アルバイトや派遣社員、契約社員も含まれます。
しかし以下の項目に当てはまる者は、介護休暇を取得することが不可能です。
【介護休暇を取得できない者】
- 日雇い労働者
- その事業主に雇用された期間が6カ月を満たない労働者
- 1週間の所定労働日数が2日以下である者
- 労使協定で介護休暇を取得できないことが定められている
介護休暇を取得するときに注意しなければならないのが、上表の4に該当する方です。
上表1~3の要件をすべて満たしていたとしても、労使協定で介護休暇を取得できないことが定められているケースでは、介護休暇を取得することはできません。
いずれにしろ介護休暇の取得が必要になった場合、まずは直属の上司へ、介護休暇についての相談をすることを強くおすすめします。
介護休暇がとれない場合は労働基準監督署へ
介護休暇が取れない場合は労働基準監督署に相談へ行くことが、選択肢の1つとして挙げられます。
労働基準監督署は厚生労働省の出先機関として、管轄下の企業が労働基準法を守っているか、監督を行っています。
労働基準監督署が行っている業務には、労働条件の確保や改善指導、安全衛生の指導が該当します。
これら以外にも労働基準監督署は、介護休暇の取得に関する相談ごとの受付も行っています。
労働基準監督署への相談に際し、費用はかかりません。
労働基準監督署へ相談を行うにあたり、注意しなければならないのが、労働基準監督署は監督を行う機関であるという点です。
労働基準監督署は是正勧告に留まり、強制力がある命令を出せるわけではありません。
労働基準法を犯している企業を発見した場合、捜査権を有する労働基準監督署は調査・摘発を行います。
しかし企業と労働者を仲介し、問題解決の手助けをしてくれるわけではないのです。
労働基準監督署に相談へ行ったものの、対応してもらえないことや、管轄が異なると言われてしまうケースがあります。
労働基準監督署以外にも、厚生労働省の下部組織として労働局が存在します。
労働局は労働基準監督署の上部組織にあたり、企業と労働者の間に入り、労働環境の改善を行っています。
介護休暇が取得できない時は、選択肢の1つとして労働局へ相談を行うことも、頭の片隅に置いておくとよいでしょう。
その① 全国の相談窓口一覧
労働基準監督署は日本全国に343箇所点在しています。
厚生労働省に相談窓口の一覧が記載されていますので、そちらを参考にし、相談へおもむく労働基準監督署を選ぶことをおすすめします。
【参考サイト:厚生労働省、相談機関のご紹介】
上記のサイトは、労働基準監督署の所在地に加え、労働局に関する情報も記載されていますので、活用したいところです。
その② 事前に準備すること
労働基準監督署へ相談におもむく前に準備することは、介護休暇を申請したときのやり取りを示す資料を用意することです。
介護休暇を拒否されたときのやり取りを時系列で記したものや、返答に関する書面などが挙げれます。
それら以外にも雇用契約書や就業規則、相談したことをまとめたメモも用意するとよいです。
特に相談したいことを事前にまとめ、メモに残しておけば、労働基準監督署へ相談に行ったものの、思ったように話せなかったといった事態を避ける助けとなります。
取得ができなければ紛争解決援助制度の活用も
さいごに紛争解決援助制度についてご紹介しておきます。
紛争解決援助制度は、労働者と事業主間のトラブルを早期解決するために行われる援助です。
都道府県労働局内にある雇用均等室が、紛争解決援助制度を行っています。
紛争解決援助制度は2つにわかれます。
1つ目が都道府県労働局長による紛争解決の援助です。
都道府県の労働局長が、労働者と事業主とのトラブルを中立・公正な立場から、問題解決に必要な具体策を提示し、トラブルの解決を図ります。
2つ目が両立支援調停会議による調停です。
調停委員が当事者である労働者と事業主の双方から事情を聞き、調停案を作成したのち、当事者双方に調停案を受け入れることを促し、紛争を解決します。
調停委員は弁護士や大学教授、家庭裁判所家事調査員等の専門家が主体となっており、高い公平性、中立性、適格性が期待できます。
まずは都道府県労働局の雇用均等室へ連絡をし、紛争解決援助制度の活用を検討することをおすすめします。
【参考サイト:厚生労働省、育児・介護休暇法に基づく紛争解決援助制度について】
まとめ
介護休暇とは何かや法的根拠、介護休暇が取れない場合の対処方法に関して、解説してきました。
介護休暇が取れない時に、どのような相談機関があるのか、理解が深められたのではないでしょうか。
介護休暇が取れないときの、相談窓口や解決策をご紹介をまとめると
- 介護休暇は要介護状態にある、家族の介護や世話を行いながら働き続けるために、労働者に与えられた権利である
- 介護休暇は育児・介護休業法を法的根拠とし、事業主は介護休暇の申請を拒否することはできない
- 介護休暇の取得を拒否されたときは、労働基準監督署や労働局が相談窓口となる
ということがあります。
介護休暇は労働者に与えられた権利であり、原則的に事業主がそれを拒否することは違法行為にあたります。
介護休暇の申請を拒否されたからと言って悲観せず、労働基準監督署や労働局へ相談し、介護しながらも働き続ける環境づくりを行いたいところです。