家族に介護が必要になったとき、介護をするために取得できる制度に、介護休暇や介護休業があります。
介護休暇と介護休業は名称が似通ってはいるものの、休職できる日数に大きな違いが存在します。
今回は介護休暇と介護休業の違いを、対象となる労働者や休職できる日数などにスポットをあてて、解説していきます。
介護休暇と介護休業の違いについて興味がある方は、ご参考になさってください。
介護休業とは
はじめに介護休業について解説していきます。
介護休業は2週間以上の期間、要介護状態にある家族を介護するためにする休業です。
要介護状態にある家族とは、以下の要件のいずれかに該当する者を指します。
【要介護状態にある家族の判断基準】
①介護保険制度の要介護区分において、要介護2以上であること
②以下の状態1~12のうち、2が2つ以上、または3が1つ以上該当し、かつその状態が継続すると認められる場合
※参考サイトをもとに、筆者が表を作成
【参考サイト:厚生労働省、介護休業制度 常時介護を必要とする状態に関する判断基準】
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/34_07.pdf#search='%E3%80%8C%E8%A6%81%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E7%8A%B6%E6%85%8B%E3%80%8D%E3%80%8C%E5%AF%BE%E8%B1%A1%E5%AE%B6%E6%97%8F%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%AE%9A%E7%BE%A9%E3%81%AF%E3%80%81%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E4%BC%91%E6%A5%AD%E3%81%AE%E5%A0%B4'
介護休業は1年度を通じて、通算で93日に達するまで取得できます。
また分割取得することも可能であり、その回数は3回までを上限としています。
介護休業を取得する際には、申請書類を職場の担当者へ提出しなければなりません。
申請書類の様式は企業ごとに異なるため、介護休業の取得を検討するときは申請書類に関して、職場の担当者へ確認しておくことをおすすめします。
その① 介護休業における対象家族
介護休業は家族に介護が必要になったとき取得できますが、介護が必要な家族は誰でもよいというわけではありません。
介護休業の取得要件を満たす家族(対象家族)は、以下の表の通りとなっています。
【介護休業における対象家族】
※参考サイトをもとに、筆者が表を作成
【参考サイト:厚生労働省、介護休業制度 介護休業の対象となる労働者】
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/34_07.pdf#search='%E3%80%8C%E8%A6%81%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E7%8A%B6%E6%85%8B%E3%80%8D%E3%80%8C%E5%AF%BE%E8%B1%A1%E5%AE%B6%E6%97%8F%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%AE%9A%E7%BE%A9%E3%81%AF%E3%80%81%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E4%BC%91%E6%A5%AD%E3%81%AE%E5%A0%B4'
上表からも確認できる通り、配偶者の父親に介護が必要になったときに、介護休業を取得することが可能です。
また婚姻は提出していないが、事実上婚姻関係と同等の事情にあるものも、配偶者に含まれ、介護休業の取得要件を満たします。
それに対し、取得する人の叔父が要介護状態になったとしても、介護休業を取得できません。
介護休業を検討する際には、介護が必要な人が、どの続柄にあたるのかに注意しましょう。
その② 介護休業の対象となる労働者
つづいて介護休業の対象となる労働者についてです。
原則的に、要介護状態の家族を介護する男女の労働者が、介護休業の対象になります。
この労働者には正社員のみだけでなく、契約社員やパートも含まれます。
ただし以下の2つの要件に該当しなければなりません。
要件①:同一事業主に引き続き1年以上雇用されている
要件②:介護休業を取得する予定日から起算して、93日後から6カ月後までの間、契約の期間満了が明らかではない
上記の2つの要件を簡単にまとめると、同じ会社に1年以上勤めており、介護休業を取得する日から数えて、93日から6カ月間の間、会社を辞める予定がないということになります。
逆を言えば、会社に勤めはじめて1年経過していない方や、介護休業を取得後に早急に退職を予定している方は、介護休業の対象になりません。
その③ 介護休業の対象外となる労働者
先ほど紹介した2つの要件を満たしていたとしても、次の表に当てはまる労働者は、介護休業の対象外となります。
【介護休業の対象外となる労働者】
※参考サイトをもとに筆者が表を作成
上記の表のうち、注意しなければならないのが、3に該当する方です。
労使協定で介護休業を取得できないことが定められている場合、前の項目で紹介した2つの要件を満たしていたとしても、介護休業を取得することは不可能です。
いずれにしろ、介護休業の取得を検討している方は、職場の担当者へ相談するとよいでしょう。
介護休業については以上です。
次の項目では、介護休暇について解説していきます。
介護休暇とは
介護休暇とは介護休業と同じく、要介護状態の家族の介護、世話をする労働者に与えられる休暇です。
家族が要介護状態と認められる要件については、介護休業と同様のものとなっています。
介護休暇と介護休業の違いは、取得できる日数にあります。
介護休暇の日数は1年度を通し、5日を限度としています。
要介護状態の家族が2人以上いる場合は、1年度を通し、10日まで介護休暇を取得できます。
また介護休暇は時間単位や、半日単位で取得できる特徴があります。
ただし1日の所定労働日数が4時間以下の労働者は、介護休暇を半日単位で取得できません。
取得できる日数の他に、申請方法も介護休暇と介護休業が異なるポイントです。
基本的に介護休暇は有給休暇のように、口頭で直属の上司へ取得の申請を行います。
とはいえ企業によっては有給休暇の取得の際に、申請書を提出するケースも確認できます。
介護休業の時と同様に、介護休暇の取得を検討する際には、職場の担当者へ相談することをおすすめします。
その① 介護休暇における対象家族
介護休暇における対象家族は、介護休業のものと同じです。
具体的には以下の表に該当する者に介護が必要になったとき、介護休暇を取得することができます。
【介護休暇における対象家族】
※参考サイトをもとに筆者が表を作成
【参考サイト:厚生労働省、介護休業制度 介護休業の対象となる労働者】
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/34_07.pdf#search='%E3%80%8C%E8%A6%81%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E7%8A%B6%E6%85%8B%E3%80%8D%E3%80%8C%E5%AF%BE%E8%B1%A1%E5%AE%B6%E6%97%8F%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%AE%9A%E7%BE%A9%E3%81%AF%E3%80%81%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E4%BC%91%E6%A5%AD%E3%81%AE%E5%A0%B4'
上表の配偶者は介護休業と同じく、婚姻を提出していないものの、事実上婚姻関係と認められる者も該当します。
その② 介護休暇の対象となる労働者
介護休暇の対象となる労働者は、要介護状態の家族を有する男女の労働者および、同じ事業主に雇用された期間が6カ月以上の者です。
介護休業と同様に正社員や契約社員、パートなどの雇用形態に左右されず、介護休暇を取得できます。
その③ 介護休暇の対象外となる労働者
介護休暇の対象外となる労働者は、以下の表に該当する者です。
【介護休暇の対象外となる労働者】
※参考サイトをもとに、筆者が表を作成
【参考サイト:厚生労働省、介護休暇制度】
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/34_09.pdf#search='%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E4%BC%91%E6%9A%87'
上記の表に挙げた要件以外に、半日単位で介護休暇を取得することが困難と認められる、業務に従事する労働者も介護休暇の対象外となります。
しかし1日単位での取得であれば、介護休暇を取得することができますので、介護休暇の取得に際しわからないことがあれば、勤め先の担当者へ確認することをおすすめします。
介護休業と介護休暇の法律的な位置付け
さいごに介護休業と介護休暇の、法律的な位置づけに関して解説していきます。
原則的に取得要件を満たしていれば、事業主は介護休業や介護休暇の申請を拒否出来ません。
これは介護休業や介護休暇が、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)」によって、保障された労働者の権利であるからです。
【参考サイト:厚生労働省、育児休業・介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律】
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000165876.pdf
その① 介護休業
介護休業については、育児・介護休業法の第11条から第16条を法律的な根拠としています。
同法には介護休業の申出についてや、申し出があった場合における、事業主の義務等について記載されています。
その② 介護休暇
介護休暇は育児・介護休業法の第16条の5から、同条の7を法的根拠としています。
介護休暇の申出や、申し出があった場合の事業主の義務等が書かれています。
まとめ
介護休業と介護休暇の対象家族や、対象となる労働者、法律的な位置づけに関して解説してきました。
介護休業と介護休暇について、理解が深められたのではないでしょうか。
『介護休暇』と『介護休業』の違いとはをまとめると
- 介護休業は1年度を通し、最大93日まで取得でき、要介護状態の家族を介護・世話をする労働者に与えられた権利である。
- 介護休暇は1年度を通し、最大5日間取得することが可能であり、時間単位・半日単位で取得することができる
- 介護休業・介護休暇は取得要件を満たしていれば、正社員だけでなく、契約社員やパートなどの労働者が対象となる
ということがあります。
家族に介護が必要になったとしても、介護をしつつ働き続けられるように労働者に与えられた権利が、介護休業と介護休暇です。
介護休業や介護休暇を効果的に活用し、介護を続けられる環境づくりを行いましょう。