介護休暇は家族に介護が必要になったとき、取得することが可能です。
しかし介護休暇を取得するには、いくつかの要件を満たす必要があります。
今回は介護休暇を取得するために必要な条件だけでなく、取得中の賃金や取得方法について解説していきます。
介護休暇の取得を検討している方や、介護休暇に関して興味がある方はご参考になさってください。
介護休暇ってなんだろう?
はじめに介護休暇とは、どのような制度なのかを確認していきましょう。
介護休暇は要介護状態にある、家族の介護や世話を行うために、労働者が一定期間の休暇を取得できる制度です。
介護しながら働き続けることができるようにするため、労働者に与えられた権利の1つが介護休暇となっています。
その① 法律で守られている権利
介護休暇は法律で守られている労働者の権利です。
その法律は、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)です。
【参考サイト:厚生労働省、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律】
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000165876.pdf
育児・介護休業法によって、介護休暇に関して定義され、同法が法的根拠となっているため、事業主は原則的に介護休暇の取得申請を拒否できません。
しかしすべての労働者が、介護休暇を取得できるわけではありません。
介護休暇の取得要件については、後の項目「2、介護休暇の内容と条件」にて解説していきますので、そちらを参考になさってください。
その② 取得中の給与について
介護休暇を取得中の給与は、勤め先によって異なります。
というのも介護休暇を取得中の賃金に関して、法的な定めがないためです。
介護休暇の取得中であっても、一定割合の給与を保障されている企業もあれば、賃金が一切発生しない企業も存在します。
介護休暇の取得を検討する際には、取得中の給与について、勤め先の担当者へ確認しておくことを強くおすすめします。
介護休暇の基本的な内容については以上になります。
次の項目では介護休暇を取得できる日数や、取得するための条件に関して解説していきます。
介護休暇の内容と条件
介護休暇は1年度を通し取得できる日数や、取得条件が決められています。
また介護が必要な家族の範囲についても定められており、すべての血縁者が対象となるわけではありません。
まずは介護休暇の取得日数について解説していきます。
その① 取得日数は決まっている
介護休暇を取得できる日数は、1年度を通し5日です。
要介護状態の家族が2人以上いる場合には、介護休暇を取得できる日数が1年度を通し、10日間になります。
特に規定がない場合は、1年度とは4月1日から3月31日までの期間を指します。
介護休暇は1日単位だけではなく、半日単位で取得することが可能です。
原則的に1日の所定労働時間の半分を、半日として扱います。
しかし労使協定によって、これとは違った時間数を半日と定めている場合、それに準じたものとなります。
1年度の期間や半日の取り扱いは、企業によって異なるケースもあるため、可能であれば勤め先への確認をしたいところです。
その② 誰の介護でも取得可能か
介護休暇は誰の介護でも取得可能ではありません。
1年度を通し、93日間取得できる介護休業と、同様の家族に介護が必要になった場合にのみ、介護休暇を取得できます。
具体的には以下の家族を対象とし、介護休暇を取得することができます。
【介護休暇を取得できる対象家族】
上記の配偶者には、婚姻を提出していないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者も含みます。
介護休暇を取得する条件には家族の範囲だけでなく、介護が必要になった状態についても定められています。
対象家族が以下の状態の、いずれかに当てはまる場合、介護休暇を取得できると認められます。
【要介護状態にある家族の判断基準】
- 介護保険の要介護区分において要介護2以上であること
- 以下表の項目1~12のうち、2が2つ以上、または3が1つ以上あり、その状態が継続すると認められること
【参考サイト:厚生労働省、介護休業制度 常時介護を必要とする状態に関する判断基準】
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/34_07.pdf#search='%E3%80%8C%E8%A6%81%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E7%8A%B6%E6%85%8B%E3%80%8D%E3%80%8C%E5%AF%BE%E8%B1%A1%E5%AE%B6%E6%97%8F%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%AE%9A%E7%BE%A9%E3%81%AF%E3%80%81%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E4%BC%91%E6%A5%AD%E3%81%AE%E5%A0%B4'
その③ 介護休暇を取得できる対象者
つづいて介護休暇を取得できる対象者に関して、解説していきます。
介護休暇を取得できるのは、要介護状態にある家族を有する男女の労働者です。
これには正社員のみだけでなく、契約社員やパート、アルバイトなども該当します。
しかし以下の項目に当てはまる者は、介護休暇を取得できません。
【介護休暇を取得できない者】
【参考サイト:厚生労働省、介護休暇制度】
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/34_09.pdf#search='%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E4%BC%91%E6%9A%87'
上記の表以外にも、半日単位での介護休暇を取得することが困難であると、認められる業務に従事する者は、半日単位での介護休暇を取得できません。
ただし1日単位であれば、上記に該当する方であっても、介護休暇を取得することが可能です。
介護休暇を取得できるかどうか疑問に思う方は、勤め先の担当者へ介護休暇の取得要件を満たしているかどうか、確認するとよいでしょう。
介護休暇の申請方法について
さいごに介護休暇の申請方法について、解説していきます。
あわせて介護休暇を拒まれた場合の、相談窓口もご紹介しておきますので、介護休暇の取得に際し困ったことがある場合は、窓口への相談をおすすめします。
その① 申請に必要な書類等
原則的に、介護休暇の申請に必要な書類はありません。
介護休暇は有給休暇のように、上司へ口頭で伝えれば取得することが可能です。
しかし勤め先によっては、介護休暇の取得申請書の提出を求められる場合があります。
またこの時、家族が要介護状態であることを示す書類の、提示を要求されることがあります。
ただし要介護状態の家族に介護を行うという、介護休暇の性質から、要介護状態であることを示す書類の提出は、後日でも対応可能であるケースが見受けられます。
必要書類についてわからないことがあれば、勤め先への確認を事前にしておけば、よりスムーズに介護休暇を取得することができるでしょう。
その② 拒まれた場合の相談窓口
介護休暇を拒まれた場合の相談窓口として、都道府県労務局や労働監督署が挙げられます。
都道府県労務局は、企業と労働者間に生じたトラブルの解決に必要なアドバイスや、就労環境に関する相談ごとの受付を行っている機関です。
それに対して、労働監督署は労務局の下部組織にあたり、管轄内の企業が労働法令を遵守しているかを監督し、違反している企業があれば指導を行っています。
労働監督署は監督・指導を行う機関であるため、原則的に企業と労働者の間に入り、労働環境の改善を図ることはありません。
労働局や労働監督署の所在地は、インターネットで検索を行えば確認できますので、介護休暇の取得に際し、困ったことがあるときには相談におもむくとよいでしょう。
まとめ
介護休暇とはどのような制度なのかや取得条件、申請方法について解説してきました。
介護休暇に関して理解が深められたのではないでしょうか。
介護休暇を取得する方法はをまとめると
- 介護休暇は介護をしながら働き続けられるようにするため、労働者に与えられた権利である。また原則的に、事業主は介護休暇の申請を拒否できない
- 介護休暇は1年度を通し5日間取得でき、介護が必要になる家族や、就労状況に関する条件を満さなければ取得できない
- 介護休暇が拒まれたときには、都道府県労務局や労働監督署へ相談におもむくとよい
ということがあります。
誰しも身近な家族に介護が必要になり、労働環境の見直しをせまられる可能性があります。
介護が必要になったからといって、同じ会社で働くことを断念するのではなく、介護休暇をはじめとした様々な制度を効果的に活用し、介護しながら就労できる環境づくりを心がけましょう。