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介護って何?看護と何が違うの?

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介護って何?看護と何が違うの?
「介護」と「看護」は名前は似ていますが、どのように違うのでしょうか?

この記事では介護と看護の違いについて、介護の歴史や種類なども説明しながら解説します。

介護の歴史

介護の歴史
介護というと現在の介護保険制度を思い浮かべますが、この制度が誕生したのは2000年であり、今から20年ほど前のことです。

この制度が誕生した背景には、どのような介護の歴史があったのか、以下に説明します。

その① 20世紀の介護について

戦前やそれよりも前の日本は、制度的なものは未発達であり貧しく、高齢者の世話は家族が行うのが当たり前という時代でした。

戦後の高度経済成長とともに福祉制度も徐々に整備され、2000年より前までは、「老人福祉制度」と「老人保健制度」に基づいて高齢者サービスが提供されていました。

「老人福祉制度」は、「措置制度」とも呼ばれており、介護の必要の有無や利用できるサービスを決定するのは行政でした。利用者にとっては縛りも多くて使いにくい制度でした。

「老人福祉制度」は低所得者のみを対象とした制度であったため、中級以上の家庭ではサービスを利用できない場合が多く、ほとんどの高齢者は、在宅介護を余儀なくされていました。

こういった制度的な背景により、高齢者虐待や身体拘束に加え、介護する側の介護ストレスの問題も増えていったのです。

この時代に「介護地獄」という言葉が出てくるようになりました。

その② 21世紀になっての介護について

2000年4月から「介護保険法」が始まりました。介護保険法は、高齢者の介護を社会全体により支えていくものです。

介護を必要とする高齢者や家族に対して介護をサポートするサービスを受けられるという制度です。

今までは行政窓口に申請をして市町村がサービスを決定していたのが、利用者が自分からサービスの種類や、事業者を選んで利用できるようになりました。

医療と福祉に対しても、別々に申し込みを行う必要があったのですが、2000年4月以降は介護サービスのケアプランと呼ばれる利用計画を作って、医療や福祉のサービスをまとめて利用することが可能になりました。

介護の種類

介護の種類
介護の種類は「在宅介護」、「施設介護」の大きく2種類に分かれます。

ここでは「在宅介護」、「施設介護」それぞれについて説明します。

その① 在宅介護

在宅介護とは、在宅で介護をしている方が利用できる介護サービスのことです。

在宅介護には自宅で受ける介護サービスと施設へ通って受ける介護サービス、宿泊して受ける介護サービスがあります。

自宅で受ける介護サービスは、自宅にホームヘルパーや看護師などの専門職が訪問して行うサービスです。

訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導などの介護サービスがあります。

また、「地域密着型サービス」と言い、そのサービス事業所と同じ市町村に住む住民のみが利用できるサービスがあり、これには夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護があります。

施設へ通って受ける介護サービスは、利用者が日帰りで施設などの通い、介護を受けるサービスです。

通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション(デイケア)などの介護サービスがあります。

また、地域密着型サービスには、認知症対応型通所介護、療養通所介護(療養型デイサービス)があります。

宿泊して受ける介護サービスには、短期入所生活介護(ショートステイ)、短期入所療養介護(医療型ショートステイ)があります。

また自宅・通い・宿泊を組み合わせた小規模多機能型居宅介護や看護小規模多機能型居宅介護という地域密着型サービスもあります。

また、福祉用具の貸与・購入や住宅改修も在宅介護に含まれます。

その② 施設介護

施設介護とは、介護保険施設に入居して受ける介護サービスです。

介護保険施設には「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」、「介護老人保健施設」、「介護療養型医療施設」、「介護医療院」の4つがあります。 

「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」は、常に介護が必要で、自宅での介護が困難な方が対象となります。

「介護老人保健施設」は、病院での治療を終え、病状が安定した方が、リハビリに重点を置き、在宅復帰を目指す施設です。

「介護療養型医療施設」は、治療を終え病状が安定しているものの、引き続き長期間療養を必要とする方が入所する医療施設です。

「介護医療院」は、要介護者に対して長期療養のための医療と日常生活上の介護を一体的に提供する医療施設です。

このように、施設介護は必要とする介護の内容により入所できる施設が違います。

介護と看護の違い

介護と看護の違い

その① 定義について

「介護」とは、高齢や心身の障害により自立困難な人を「手助けする」ことを言います。

一方で「看護」とは、あらゆる場であらゆる年代の個人および家族、集団、コミュニティを対象に、対象がどのような健康状態であっても、独自にまたは他と協働して行われるケアの総体を言います。

看護には、健康増進および疾病予防、病気や障害を有する人々あるいは死に臨む人々のケアが含まれます。

その② 具体的な内容

「介護」の具体的な内容には、入浴や排泄、食事、移乗、更衣など、利用者の身体に直接触れての身の回りの世話を行う「身体介護」、掃除、洗濯、調理など利用者の身体には触れずに身の回りの世話を行う「生活援助」があります。

「看護」の具体的な内容には、問診や各種検査、点滴や注射、食事・排泄の補助、患者移送、検温や入浴の介助、体位交換、記録、巡回、ベッドメイキング、医師への報告、家族のケアなどがあります。

「介護」と「看護」の大きな違いは、点滴、吸引、酸素、人工肛門や経管栄養の管理などの医療行為ができる点です。

その③ 必要な資格

介護施設での介護業務は無資格でも行うことができますが、訪問介護の身体介護においては、介護職員初任者研修の資格が必要です。

キャリアアップのため介護職員実務者ケアマネージャーを目標とすることもできます。

「看護」の資格には正看護師、准看護師があります。正看護師免許は「厚生労働大臣」が発行する国家資格ですが、准看護師免許は「都道府県知事」が発行する免許です。

これからの日本の介護はどうなるか?

これからの日本の介護はどうなるか?
我が国は人口に占める高齢者の割合が増加する「高齢化」と、出生率の低下により若年者人口が減少する「少子化」が同時に進行する少子高齢化社会となっています。

今後も少子高齢かが進むと、社会保障費の財源問題や、老老介護、介護の人材不足など、さまざまな問題があります。

介護保険の財源不足に対しては、被保険者の介護保険料の引き上げや一定所得以上の方の負担割合の増大などがなされてきました。

老老介護に関しては、積極的に介護保険を活用をし、地域全体で高齢者を支えていく必要があります。

また、介護の人手不足に対しては、外国人労働者の受け入れが進んでいますが、日本語の問題や現場で働けるまでには時間がかかるなどの問題もあります。

これからは若い世代や外国人など、今まで以上に幅広い人たちの協力が必要であり、社会全体で高齢者を支えて行く必要があります。

まとめ

まとめ
この記事では介護と看護の違いについて詳しく解説しました。

以下にこの記事の内容についてまとめます。

  • 介護保険制度の誕生以前は制度が整っていなかったため、高齢者虐待や身体拘束に加え、家族にかかる介護ストレスが大きく、「介護地獄」という言葉もありました。2000年に介護保険法が始まり、高齢者の介護を社会全体により支えていくものとなり、様々なサービスが利用できるようになりました。
  • 介護は「在宅介護」、「施設介護」の大きく2種類に分かれます。在宅介護は、在宅で介護をしている方が利用できる介護サービスのことで、自宅で受ける・施設へ通って受ける・宿泊して受ける介護サービスがあります。施設介護は介護保険施設に入居して受ける介護サービスのことです。
  • 「介護」とは、高齢や心身の障害により自立困難な人を「手助けする」ことを言い、入浴などの「身体介護」、掃除などの「生活援助」があります。「看護」とは、あらゆる対象に対して、どのような健康状態であっても、独自にまたは他と協働して行われるケアの総体を言い、介護との大きな違いは、点滴、吸引、酸素、人工肛門や経管栄養の管理などの医療行為ができる点です。看護を行うには正看護師または准看護師の資格が必要です。
  • これからの日本は少子高齢化社会が進み、社会保障費の財源問題や、老老介護、介護の人材不足など、さまざまな問題が予測されます。これからは若い世代や外国人など幅広い人たちの協力が必要であり、社会全体で高齢者を支えて行く必要があります。

現在の介護保険制度はサービスの内容も非常に充実していますが、約20年前に始まったばかりであり、それ以前は介護は家族が行うものとされており、介護を行う家族にかかる介護ストレスは大きなものでした。

介護と看護は似ているようで、行える行為などが違ってきます。

これから高齢化が進むと、介護が必要な要介護者の数も増えていくと予想されます。

限られた介護、看護の人材で高齢者の介護、看護を行っていくことを考えると、利用者の状態に合わせてどのような介護、看護が必要なのか棲み分けをすることも重要だと思われます。

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