提供する人によって介護の内容が異なると、必要以上に介助をしてしまったり、援助が不足したりします。
プロとして介護の提供を行っている以上、再現性が高く、長期的な視線に立った援助が行わなければなりません。
そういった介護を提供するのに必要となるのが、介護過程です。
今回は介護過程とは何だろうということから、目的・必要性、そして介護過程の流れについて解説していきます。
介護過程に関して興味がある方は、ご参考になさってください。
そもそも介護過程ってなんだろう?
はじめにそもそも介護過程とは、どのようなものなのかを解説していきます。
介護過程とは利用者の情報を収集・分析し、それをもとに目標を立て、介護を行っていくという手法です。
原因を分析し、解決に必要な手法を考え、考え出した手法を用い問題を解決する、PDCAという考え方を思い起こせば、介護過程を理解する助けとなるでしょう。
PDCAは計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Action)の頭文字を取り、名付けられました。
困って居る人を助けたいという気持ちだけでは、専門家として介護を行うには不十分と言えます。
人の助けになりたいという気持ち以外にも、プロとして利用者へ介護を提供するにあたり、その日限りではなく、未来を見据えた長期的な視点が必要になるのです。
介護過程の概要については以上です。
次の項目では、介護過程の目的や必要性に関して解説していきます。
介護過程の目的・必要性について
介護過程の目的は客観的な事実に基づき、再現性の高い介護を実施することです。
再現性がなく、介助者の間隔に頼った介護が提供されると、介助者によっては過剰な援助を行い、利用者の自立を妨げる結果となる可能性があります。
また要介助者に必要な援助が行われず、要介助者は日常生活をする上で不便さを感じてしまうかもしれません。
これらのようなことを防ぐために、介護過程が必要となるのです。
介護過程の流れを丁寧に解説
さいごに介護過程の流れを段階的に解説してきます。
介護過程は6段階にわかれ、最後に行う「実践に対する評価」のあとは、評価内容を反映した介護計画の作成を行います。
介護過程の流れは、以下の図の通りです。
【介護過程の流れ】
上図をご覧になっていただければ、介護過程が一連の流れで終わるのではなく、循環して続いていくのが確認できます。
介護過程を循環して繰り返して行うことにより、本人や家族の希望をより反映した介護が、提供できるようになるのです。
それでは介護過程の各段階について、確認していきましょう。
その① 情報収集
はじめに行うのが、情報収集です。
情報収集では利用者を観察し、その方が置かれた状況を明確にします。
身体的な特徴や精神的な状態、人柄などについて、本人から情報収集することになります。
情報収集をするときに注意したいのが、利用者本人のみが情報収集の対象となるわけではないということです。
利用者本人からの情報収集では、介護を行う上で必要になる情報を十分に得られないことが、理由となっています。
利用者本人の心身的な状態が、本人と家族から見たものでは異なってる場合や、本人が望む介護と、家族が望むケアが異なるケースがみられます。
また認知症を患っている方であれば、自分が置かれた状況を正確に表現するのが、難しいケースも考えられます。
そこで情報収集は本人だけでなく、家族や地域で関わり合いがある方などへ行います。
すでに介護サービスを利用しているのであれば、他事業所の介護スタッフから情報を得るのも選択肢の1つです。
情報収集するときに心がけたいのが、客観的な事実に基づいた情報のみを得るようにするということです。
数値カできる情報はできるだけ数値を用い、自分の判断や解釈を取り除き、情報を収集するようにしましょう。
情報収集と耳にすると、ケアマネージャーが行う業務であるというイメージがありますが、事業所によっては介護スタッフが行うケースが見られます。
介護に携わる方であれば、利用者の情報収集を行う可能性があることを、頭の片隅に置いておくことをおすすめします。
その② アセスメント
本人や家族、他事業所のスタッフから得た情報をもとに、アセスメント(課題分析)を行います。
本人や家族が日常生活を送る上で困っていることや、改善したいことを探り出す工程と言い換えることができます。
多くの場合、事業所が定めているアセスメントシートに必要事項を記入する形で、アセスメントを進めていくことになります。
アセスメントシートはケアプランの作成以外にも、他事業所へ配布し、利用者の情報を共有するためのツールとして利用されます。
そのため、自分だけでなく他のスタッフが見ても、シートに書かれた内容を理解する必要があります。
5W1H(When:いつ、Where:どこで、Who:だれが、What:なにを、Why:なぜ、How:どのように)を意識すれば、わかりやすいアセスメントシートを作成する助けとなるでしょう。
その③ 課題を明確にする
アセスメントで浮き彫りにした課題を明確にします。
例えば、家族が就労や就学のため家を留守にし、本人だけで家で過ごすのが不安であるや、買い物に行きたいが車がなくて困っているなどです。
具体的な表現を用いることにより、課題を明確にすることができます。
その④ 介護計画・介護目標の立案
明確にした課題をもとに介護目標を立て、それを達成するために必要な介護計画の立案を行います。
目標はどのような将来を目指すかを示す長期目標と、長期目標を達成するために必要な短期目標にわかれます。
短期目標を達成するには、どのような介護サービスをどの程度の頻度で利用したらよいかを考え、それを介護計画とします。
その⑤ 介護の実践
介護計画の立案ができたら、介護の実践に移ります。
実際に介護サービスを利用してみて、どのような様子だったか、問題点がなかったか、そして利用中に工夫したことを記録します。
介護サービスを利用したときの記録は、次の工程で活用することになります。
その⑥ 実践に対する評価
さいごが実践に対する評価です。
介護計画をもとにケアを提供した結果、問題点はなかったかや、目標が達成できたかなどを評価します。
もし問題点や未達成な目標がある場合は、目標や計画の見直しを行い、それらの変更を行います。
そして再度本人への情報収集から続く工程を繰り返し行うことにより、介護サービスの質を高めることにつながるのです。
まとめ
介護過程とは何だろうや、介護過程の目的・必要性、その流れを解説してきました。
介護過程について、理解が深められたのではないでしょうか。
介護のプロなら理解すべき介護過程をまとめると
- 介護過程とは利用者の情報を収集・分析し、それをもとに目標を立て、介護を行っていくという手法である
- 介護過程の目的は客観的な事実に基づいた、再現性の高い介護を提供することである
- 介護過程の流れは、まずは収集した情報をもとにアセスメントし、課題の明確化を行う。その後、介護目標・介護計画を立案し、介護の実施・評価を経て、その結果を次の介護計画に反映する
ということです。
介護過程はプロの介助者として、理解すべき手法です。
困っている人を助けたいという気持ちは非常に重要ですが、専門家である以上、その場限りではない長期的な視点に立った介護が望まれます。
介護過程を効果的に活用し、質の高い介護の提供を心がけたいところです。