義父母や親族の介護をきっかけとして、離婚に発展してしまうことを介護離婚と呼ばれています。
介護を機とした離婚であるため、当事者は年を重ねていることが予想され、熟年離婚の1つとして考えられています。
今回は介護離婚の対策や、介護離婚の結果どのようなことが予想されるかに関して、解説していきます。
介護を理由とし、夫婦関係に頭を悩ませている方や、介護離婚について理解を深めたい方はご参考になさってください。
介護離婚とはなにか?
介護離婚とは義父母や親族の介護が引き金となり、離婚に発展してしまうことです。
特に配偶者の両親に介護が必要となり、パートナーの協力が得られないケースでは、介護離婚を選択するケースが見られます。
配偶者が主介護者である場合、義理の両親とは血のつながりはありません。
なぜ血がつながったパートナーではなく、私が介護をしなければならないのかという考えに至ってしまうのです。
ただしすべての場合において、このようなケースが当てはまるわけでないことを胸に留めておかねばなりません。
義父母との関係が良好であるや、パートナーが心身的な障害を理由に介護を行えないなどのケースでは、介護離婚へ発展しないこともあります。
介護離婚について考える上で重要なことは、介護を行うということは心身ともに大きな疲労が発生し、ひとりで抱えきれるものではないということを、頭の片隅に置いておくことです。
次の項目では、介護が介護者にどのようなストレスを与えるかに関して解説していきます。
介護は主介護者にとって大きなストレス
介護は主介護者にとって大きなストレスになります。
これは要介護者との血のつながりに関係はありません。
介護を行う上で、どのようなストレスの発生が考えられるかを確認していきましょう。
その① 自分の時間が少なくなる
家族の介護に充てる時間が必要になった結果、自分の時間は自然と少なくなってしまいます。
食事やトイレ、お風呂などの、要介護者が日常生活を送るために必要な動作を行う上で、サポートが必要になり、それらを毎日休みなく行わなければなりません。
介護を行うまでは自由に使えた時間がなくなり、そのことが大きなストレスを与える原因となるのです。
その② 精神的に負担が大きくストレスが溜まる
介護を行うには体力を必要とし、継続しての介護は身体的な疲れがたまっていきます。
そして身体的な疲れが溜まれば、精神的な余裕がなくなり、普段であれば対応できることであっても、ストレスに感じることがあります。
また要介護者に認知症の進行が認められる場合は徘徊や暴言、暴行などの症状が現れ、介護者にストレスを与えることになります。
その③ 夜も熟睡できず疲労困憊
夜間であっても、介護を行わなければならない場合があります。
体位交換やトイレ介助などがそれにあたります。
また先ほど紹介した、認知症の症状で挙げた徘徊は夜間でも、その発生が確認されています。
夜でも気が休まることなく、介護をし続けなければならない状況はより介護者を追い詰め、心身共に疲労困憊になってしまうのです。
以上が主介護者に与える大きなストレスです。
これらのようなストレスが日常的に発生している状況では、介護から遠ざかりたいという考えに至ってしまうのも納得できるのではないでしょうか。
そして介護から遠ざかりたいと思いつめ、介護離婚に踏み切ってしまうのです。
次の項目では介護離婚の対策として、どのように介護と向き合っていけばよいかをご紹介していきます。
介護離婚の対策
介護離婚の対策として重要なことは、当事者意識を持つということです。
今回は2つの対策をご紹介していきます。
いずれもパートナーだけでなく、自分も介護を担う一員であると胸に留め実行していくことが、対策のポイントです。
その① 妻(夫)一人に任せ切りにしない
1つ目が妻(夫)一人に任せ切りにしないということです。
主介護者に一人に介護を任せ切りにすると心身の負担が大きく、なぜ自分だけが介護をしなければならないのかという考えに至ってしまいます。
主介護者であるパートナーも仕事や家事で毎日を忙しく過ごしており、自分だけが時間に追われて生活しているわけではありません。
先ほど紹介したように介護には、身体的・精神的な負担が大きくかかります。
介護に充てる時間を作れないのであれば、介護を行う上で困っていることや愚痴に耳を傾けるだけでも、主介護者のストレス発散になると頭の片隅に置いておくとよいでしょう。
その② 周囲の理解を得て介護者を守る
2つ目が周囲の理解を得て、介護者を守るということです。
介護に携わっていない兄弟・親族からの苦言や、何気ない一言に注意を払うことがポイントです。
精神的な余裕がないときに投げかけられた言葉は、時として大きく傷つくことがあります。
「少しやせたのではないか」や「髪の毛が乱れてる」など、直接的な言葉でなくとも、主介護者からすると、自分が行っている介護に対しての不満であると、捉えてしまうかもしれません。
そういった言葉を投げかけられたとき、配偶者や身近な家族がフォローをしないと、主介護者は誰も自分を守ってくれる人がいないと考えてしまいます。
介護をめぐり、親族間のトラブルが発生しないよう、適切なタイミングで主介護者を気遣う言葉かけを心がけたいところです。
介護離婚後の行く末
さいごに介護離婚を行った後、どのような結末が考えられるかについて、解説していきます。
その① 経済的な問題
1つ目が経済的な問題です。
お互いの収入から生活費を工面していた場合、介護離婚をすると生活に費やせるお金は、離婚前と比較し少なくなってしまうことが予想されます。
また離婚に際し、慰謝料や財産分与により、経済的な負担が発生することも考えられます。
さらに離婚相手が生活に困窮しているケースや、障害・病気などがある場合、経済的に恵まれている方がそうでない方へ、定期的にお金を支払うことがあります。
離婚の際には慰謝料の請求が認められていることも、お金に関わる問題の原因となります。
離婚し介護に関する問題から解放されたとしても、新たにこれらのお金についての悩みが発生するかもしれません。
その② 介護を受ける人の問題
2つ目が介護を受ける人に関しての問題です。
特に義父母の介護の負担が大きくなってしまい、そのことをきっかけとして、介護離婚に踏み切った場合には注意が必要です。
介護離婚を機に、要介護者の子どもや兄弟、親族に主介護者の変更が行われます。
それまで介護に携わってこなかった方たちが介護に直面するわけですから、離婚前と同じような介護が提供されるかどうか心配になり、胸を痛めてしまう方がいます。
どうしても介護離婚を希望される方は、担当ケアマネージャーや地域包括支援センターへ、離婚後の介護について相談することが、選択肢として挙げられます。
介護離婚に関わらず、介護について困ったことがあるときは、専門スタッフへ相談することを強くおすすめします。
まとめ
介護離婚とは何かや、介護によって発生するストレス、介護離婚の対策などに関して解説してきました。
介護離婚について理解が深められたのではないでしょうか。
介護離婚の対策はをまとめると
- 義理の両親や兄弟姉妹、親族の介護をきっかけとなり、介護離婚に至ってしまうことがある
- 主介護者には介護に伴う身体的な疲れだけでなく、精神的な余裕がなくなり、大きなストレスが生じてしまう
- 他人事ではなく、当事者意識を持ち、パートナーと協力して介護に係わることが、介護離婚の対策として重要なポイントである
ということがあります。
いつ家族に介護が必要になるかは、誰にもわかりません。
もし身近な人に介護が必要になった場合、どのように分担し介護を行っていくかを、あらかじめ相談し、配偶者や他の家族に介護を任せきりにすることがないよう、心がけましょう。