東京近郊への人口流入や核家族化の影響により、遠距離介護を行う必要に迫られるかもしれません。
そして遠距離介護が必要になった場合、お金の問題や誰が介護を担うかによって、家族間のトラブルに発展するケースが見られます。
今回は遠距離介護が開始されるきっかけや、遠距離介護を上手に行うためのコツなどについて、解説していきます。
遠距離介護を行わなければならなくなり、頭を悩ませている方や、遠距離介護に関して興味がある方はご参考になさってください。
遠距離介護が開始されるきっかけ
2020年の国民生活基本調査によると、その他・原因不明を除き、認知症、脳血管疾患、そして高齢による衰弱が、介護が必要になる主な原因として挙げられています。
【参考サイト:内閣府 令和2年版高齢社会白書、第2節高齢期の暮らしの動向 2健康・福祉】
このことは疾病や怪我により、家族の介護が予期せず始まるかもしれないことを、示しています。
親や親族が遠方に住んでおり、仕事や家族の生活のため、すぐさま引越しが行えないケースでは、遠距離介護がいつ始まるか予想することは困難です。
遠距離介護を行わなければならなくなってから、あわてて介護の準備をすることがないよう、介護を行うために必要なことを前もって確認しておきたいところです。
次の項目では遠距離介護の準備について、解説してきます。
遠距離介護の準備
今回は遠距離介護の準備を5つご紹介していきます。
介護を行うのが初めてであり、何から手を付けたらよいかわからず、頭を悩ませている方もいることでしょう。
遠距離介護の準備を1つずつ着実にこなすことが、スムーズに介護を行うためのポイントです。
その① 家族や親戚で意見をまとめる
遠距離介護を行う上で準備したいことの1つ目が、家族や親戚で意見をまとめることです。
どのような手段を用い介護を行っていくかや、どのように分担し介護を行っていくかなどについて、意見をまとめます。
可能であれば代表者を設け、介護に関する窓口を一本化しておけば、介護保険の申請や介護サービスの利用手続きを円滑に行えるでしょう。
介護に関する話し合いで忘れていけないことが、お金に関することです。
介護サービスを利用するには、費用が掛かるケースがあります。
また遠距離介護を行う上で切り離せないのが、交通費についての扱いです。
介護サービスに掛かる費用は誰が負担するか、交通費は誰が支払うかに関して、前もって親族間で話し合っておくことを強くおすすめします。
その② 介護対象者の生活状況の把握
2つ目が介護対象者の生活状況を把握することです。
遠距離介護を行うということは、介護対象者(要介護者)がどのような日常生活を送っているか、家族がわからないことがあります。
生活状況を把握しないと、日常生活を送る上でどのようなことに関して困っているのかを、判断するのが困難になってしまいます。
毎日の生活の中で困っていることが確認できれば、おのずと適した介護サービスもわかるため、生活状況の把握は遠距離介護を行う上で重要なポイントです。
また本人の生活状況とともに、人間関係についても確認しておきたいところです。
介護対象者の近所に知人や友人が住んでいるケースでは、信頼関係を築いたうえで、要介護者に何かあったときに、サポートをお願いできないか確認しておくのも選択肢の1つです。
その③ 介護対象者の預貯金の把握
3つ目が介護対象者の預貯金を把握することです。
預貯金だけでなく、金融資産や生命保険類、印鑑・権利書も確認事項に当てはまります。
先ほど紹介したように、介護サービスを利用するには費用がかかります。
お金に関する親族間のトラブルを避けるためにも、可能であれば介護対象者のお金から、介護サービスの利用料金を支払うよう、手続きすることをおすすめします。
また介護対象者の預貯金の把握は、詐欺や悪徳商法のリスクを減らす助けにもなります。
特に認知症を患っている方は判断力が低下しており、詐欺や悪徳商法の被害にあうリスクが高くなっています。
介護を継続的に行っていくとストレスがたまり、身体的・精神的に余裕がなくなってしまいます。
お金の問題をきっかけとし、家族や親族の関係にヒビが入らないよう、要介護者の経済状況を把握しましょう。
その④ 介護の関わる社会資源と費用の把握
4つ目が介護の関わる社会資源と、費用を把握することです。
社会資源とは問題を解決するために活用される、制度や施設、機関を総称した言葉です。
社会資源に代表される制度に、介護保険サービスが挙げられます。
一口に介護保険サービスと言っても、家にいながらサービスの提供を受けるのか、施設に生活の場を移し介護を受けるのかなど、提供場所・内容が幅広くなっています。
介護保険サービスにはどのようなものがあるのか、またその費用はどの程度かかるのかを把握しない場合は、家族でのみ介護をしなければならなくなってしまいます。
そして家族のみで行える介護には限界があり、遠距離介護が破綻する可能性があります。
具体的な社会資源は地域によって異なります。
そこで介護対象者が住んでいる地域の役所や、地域包括支援センターへ問い合わせることにより、利用できる社会資源を確認できます。
インターネットで役所や、地域包括支援センターの所在地を検索し、社会資源について確認を行うとよいでしょう。
その⑤ 担当ケアマネージャーとの連携
さいごが担当ケアマネージャーとの連携を取ることです。
ケアマネージャーとは、ケアプラン(サービス計画書)を作成し、介護サービス事業者との調整を行う専門職です。
介護保険の申請を行い、要支援または要介護認定が下りた方には、原則的に担当ケアマネージャーがつき、介護サービスの調整を行います。
要介護者の体調に変化があったときや、困ったことが発生したとき、対応に迫られるのは担当ケアマネージャーです。
介護対象者の心身状態を把握するためにも、日頃から担当ケアマネージャーと関係を良好にしておくことをおすすめします。
遠距離介護を上手くするコツ
さいごに遠距離介護を上手くするコツを4つ、ご紹介していきます。
家族や親族だけでなく、ケアマネージャーや介護事業所のスタッフなどと協力し、遠距離介護を無理なく行いたいところです。
その① コミュニケーションを密に
1つ目がコミュニケーションを密に取ることです。
介護対象者だけでなく、介護に携わる家族・親族、地域の人たちとのコミュニケーションを積極的に行いましょう。
特に要介護者は、遠方から介護に来る子供や親族に遠慮し、体調の変化や生活上のトラブルを自発的に打ち明けられないケースが見られます。
そういったケースでは、介護対象者の心身状況が悪化してから、はじめて問題が表面化することが予想されます。
介護対象者から聞き出しづらいのであれば、介護従事者や地域の人から情報収集を行い、本人の変化をいち早く察知したいところです。
その② 専門家や知人の協力を得る
2つ目が専門家や知人の協力を得ることです。
遠方に住む家族だけでは、行える介護に限界があります。
介護を行う上でわからないことや、介護サービスに関する要望があるときには、介護事業所のスタッフやケアマネージャーに、それらのことについて相談するとよいでしょう。
要介護者の近所に住む知人の方がいるのであれば、定期的に本人の様子確認をお願するだけでも、介護対象者の日頃の生活を知る助けとなります。
その③ 介護保険サービスを適切に活用する
3つ目が介護保険サービスを適切に活用することです。
1つのサービスだけでなく、複数の介護サービスを組み合わせ、介護対象者が生活に困ることがないよう、環境づくりをこころがけたいところです。
希望する介護サービスの内容や介護料金、介護保険制度など、些細なことでも介護に関して疑問に感じることがあれば、担当ケアマネージャーは相談に乗ってくれるでしょう。
その④ 帰省は計画的に行なう
4つ目が帰省は計画的に行なうことです。
仕事や家事で自分や家族の生活が忙しく、まとまった時間を作るのが難しいかもしれませんが、計画的に帰省することをおすすめします。
計画的に帰省することにより、介護対象者の日々の変化に気づくことができ、適切な介護サービスの利用にもつながります。
兄弟姉妹や親族で、持ち回りで帰省する場合は、どのような順番で帰省するか、急用で帰省できなくなったときはどうするかなどを、あらかじめ決めておきます。
帰省に関しても前もって話し合っておけば、家族間のトラブルを避ける助けとなるのです。
まとめ
遠距離介護がはじまるきっかけや、その準備、遠距離介護を上手に行うコツを解説してきました。
遠距離介護について、理解が深められたのではないでしょうか。
遠距離介護を上手くする4つのコツをまとめると
- 遠距離介護がはじまるきっかけに、認知症や脳血管疾患、高齢による衰弱などが挙げられる
- 家族の意見をまとめ、介護対象者の生活状況や預貯金を把握し、遠距離介護の準備を進める。また介護サービスに関する情報を入手することも、遠距離介護の準備として挙げられる
- 要介護者や地域の人々、介護従事者とのコミュニケーションを密に行い、介護の専門家の協力を得ながら、介護サービスを利用することが遠距離介護を上手に行うポイントである
ということがあります。
いつ家族に介護が必要になるか、誰にもわかりません。
親や親族が遠方に住んでおり、将来遠距離介護の可能性がある方は、健康なうちから介護に関して話し合いを行い、事前に遠距離介護の準備を行いましょう。