少子高齢化や核家族化などの影響を受け、老老介護や認認介護と呼ばれる介護問題が取り上げられるようになりました。
老老介護・認認介護は、いずれも様々なリスクが存在します。
今回は老老介護・認認介護にスポットをあてて、それらの現状や、どのようなリスクがあるのか、その解決策などに関して解説していきます。
老老介護・認認介護について、興味がある方はご参考になさってください。
老老介護の介護問題
まずは老老介護の現状やリスク、解決策に関して解説していきます。
老老介護とは、介護を受ける者(要介護者)と介護を行う者(介護者)がともに、高齢者であるケースを指します。
当記事では国際保健機関(WHO)の定義に従い、65歳以上の方が高齢者に該当する者とします。
【参考サイト:e-ヘルスネット 高齢者】
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-032.html
その① 老老介護の現状
少子高齢化や核家族化、東京近郊への人口流入などの複数の要因が組み合わさり、老老介護に該当するケースは増加していると、考えられています。
これらの理由以外にも女性の社会進出・晩婚化も、老老介護の増加要因として挙げられます。
要介護者と主介護者が同居している世帯のうち、主介護者の年齢が65歳以上である者の、全体に占める割合は53.9%です。
主介護者の年齢が75歳以上では、全体に占める割合が27.3%になります。
また介護者と要介護者の続柄に着目すると、同居している配偶者が最も高い割合であり、25.2%となっています。
要介護者と主介護者が同居している世帯における、主介護者の年齢別の割合は以下の通りです。
【要介護者と主介護者が同居している世帯における、主介護者の年齢構成】
【参考サイト:厚生労働省 Ⅳ介護の状況、3 主な介護者の状況】
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/05.pdf
なお上記の全体に占める割合は、四捨五入したのちに算出しているため、合計して100%にはなりません。
同居世帯における主介護者の年齢構成について確認できたところで、老老介護が増加しているのかを確認していきましょう。
要介護者と主介護者が65歳以上同士、または75歳以上同士のいずれの組み合わせにおいても、その数は増加傾向となっています。
【要介護者等と同居の主な介護者の年齢組み合わせ別の割合 年次推移】
※参考サイトをもとに、筆者がグラフを作成
【参考サイト:厚生労働省 Ⅳ介護の状況、3 主な介護者の状況】
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/05.pdf
これらの調査結果から、主介護者の年齢は65歳以上が最も多く、老老介護に陥るケースは増加傾向にあることが確認できました。
その② 介護する人の負担が大きすぎる
なぜ老老介護を原因とした問題が発生するかというと、介護する人の負担が大きすぎるためです。
要介護者をベッドから起し、衣類の脱ぎ着を行い、食事を手伝う介護は、多くの体力を必要とします。
ベッドから車椅子への要介護者の移動や、車椅子からトイレへ移す際に行われる移乗介助は、特に介助者への負担が大きいケアです。
プロの介護士であったとしても、業務中の介護により体に不調をきたすケースも見られ、健康な方であっても、介護を行うには大きな負担が付きまといます。
また夜間のトイレ介助やおむつ交換により、十分な睡眠時間が確保できず、体を休められないこともあります。
くわえて介護サービスの利用や、他の家族・親族の助けが得られない場合、介護者に休みはなく、身体的・精神的な負担も大きくなってしまうのです。
老老介護では介護者が高齢ですので、加齢による骨折や関節炎のリスクも、介護による負担を大きくする一因となっています。
その③ 共倒れを招く場合がある
介護者に大きな負担を及ぼす老老介護は、要介護者と介護者の共倒れを招く危険性があります。
心身の限界を超えて身の回りの世話を行った結果、介護者にも介護ケアが必要になり、その世帯から介護者がいなくなってしまうのです。
介護者が不在になれば、適切な介護サービスや医療を受けることが難しくなるのは、簡単に想像できるのではないでしょうか。
その④ 老老介護の解決策
老老介護の解決策は、介護について相談できる人、行政機関、そして介護サービス事業所とのつながりをあらかじめ作っておくことです。
介護に関して困っていることや不安に感じることがあれば、役所の介護保険担当課や、地域包括支援センターへ相談におもむくとよいでしょう。
地域包括支援センターとは、地域に住む高齢者のサポートを目的とした施設です。
地域包括支援センターは介護に関することだけでなく、高齢者が生活を送る上で困っている悩み事に関して、相談に応じてくれる施設となっています。
インターネットのほかにも、役場の介護保険担当課にて、地域包括支援センターの所在地を調べることが可能です。
専門機関とのつながりを構築する以外にも、シルバー人材センターやボランティアによる見守りサービスを利用するのも、解決策の1つです。
自治体によって、見守りサービスが提供されているかどうかは異なります。
見守りサービスに関して心当たりがない方は、当該サービスを利用できるか、役所や地域包括支援センターにて確認することをおすすめします。
老老介護が深刻化してしまう原因の一つに、他人を家に入れることに抵抗を感じ、適切な介護サービスや制度を利用できないことが挙げられます。
これは戦前より家族が介護を担うという価値観をぬぐいきれず、他者や行政へ介護に関して相談することに抵抗を感じてしまうためです。
介護者が高齢でなくとも、自身だけで介護を行っていくのは非常に困難であることを、胸に留めておかなければなりません。
老老介護を自分だけで解決しようとせず、要介護者と介護者がともに安心して生活できるよう、周りの人や行政機関に助けを求めることが重要なポイントです。
認認介護の介護問題
つづいて認認介護に関する現状や問題点、解決策について解説していきます。
認認介護とは、介護を受ける人(要介護者)と介護をする人(介護者)が、ともに認知症を患っているケースを指す言葉です。
その① 認認介護の現状
認知症の患者数は年々増加しており、2012年に462万人であった認知症患者が、2025年には675万人に増加するのではないかと予想されています。
【参考サイト:内閣府 平成29年版高齢社会白書(概況)、第1章 高齢化の状況(第2節3)】
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2017/html/gaiyou/s1_2_3.html
また2010年に発表された「在宅介護における認認介護の出現率」では、山口県における在宅介護のうち、約7%の世帯が認認介護であると発表されました。
【参考サイト:第33回愛知自治研修会 第5分科会、在宅介護における認認介護の出現率】
http://www.jichiro.gr.jp/jichiken_kako/report/rep_aichi33/05/0519_ron/index.htm
以上が認認介護の現状についてです。
次の項目では認認介護における問題点に関して解説していきます。
その② とにかくリスクが高い
認認介護には多くのリスクが伴います。
要介護者、介護者がともに認知症を患っていることから、服薬管理や体調管理、火の始末などが困難になると予想されます。
またお金の管理が難しくなるケースが見られ、詐欺や悪質な訪問販売の被害に遭い、財産が損失してしまう危険性も、認認介護のリスクとして挙げられます。
さらに認認介護であるということは、同時に老老介護に陥っている可能性があり、老老介護で紹介した問題点も、認認介護のリスクとして考える必要があります。
その③ 認認介護の解決策
認認介護の解決策は、原則的に老老介護の場合と同様のものです。
介護者と要介護者だけで、介護に関する問題を解決しようとするのではなく、親族や行政機関、ボランティアなどに介護に関する悩みを相談するようこころがけましょう。
また認認介護のケースでは、成年後見人制度を利用することにより、金銭管理を後見人へ任せることが可能になり、財産が損失するリスクを軽減できます。
地域包括支援センターにて、成年後見人制度に関する相談ごとを受け付けていますので、必要に応じて当該制度の活用を検討したいところです。
まとめ
老老介護や認認介護にスポットをあてて、それらの現状や問題点、解決策に関して解説してきました。
老老介護・認認介護について、理解を深められたのではないでしょうか。
『老老介護』や『認認介護』の介護問題について、徹底解剖をまとめると
- 老老介護は介護者・要介護者がともに高齢者であるケースを指し、認認介護は介護者・要介護者がともに認知症を患っている場合を指す言葉である。
- 老老介護・認認介護では共倒れリスクや、服薬管理・財産管理が困難になることが予想される。
- 老老介護・認認介護が深刻化する前に、親族や行政機関、ボランティアなどを活用し、介護者・要介護者がともに安心して生活できる環境づくりを行うとよい。
ということがあります。
老老介護や認認介護は他人ごとではなく、いつそれらの当事者になるかわかりません。
いつ介護が必要になるか誰にもわからず、ある日突然介護に向き合わなければならなくなるかもしれないためです。
介護が必要になったとき、大慌てで介護に関する必要な手続きを行うことがないよう、日頃から介護に関する相談窓口や手続きを確認しておきましょう。