心身の疲労からによるストレスや高齢者虐待、介護離職など、介護に関する問題は数多く存在します。
これらの問題に直面したときに自分一人で抱え込むのではなく、適切な窓口に相談し、専門家の助けを得るのが、問題解決のための重要なポイントです。
今回は在宅で多い介護問題と、その相談窓口に関して解説していきます。
介護問題で頭を悩ませてる方や、相談窓口について興味がある方はご参考になさってください。
在宅で多い介護問題
まずは在宅で介護を行うときに発生する問題を、確認するところからはじめましょう。
今回は在宅介護を行う上で発生する、3つの代表的な問題に関して解説していきます。
その① 主介護者の肉体的・精神的ストレス
1つ目の問題が、主介護者の肉体的・精神的ストレスです。
そもそも介護とは、多くの体力を必要とする行為です。
衣類の着脱やトイレ介助、移動介護などを毎日行うと、身体的な疲労がたまっていきます。
特に要介護者が寝たきり、もしくは体を動かすのが困難であるケースでは、介護者の負担がより大きくなります。
また要介護者が認知症を患っている場合には、介護者の睡眠時間が削られ、体力の回復が図れなくなってしまうケースがあります。
これは認知症の症状により、要介護者の時間間隔がなくなった結果、昼夜逆転してしまい、夜間でも介護が必要になるためです。
認知症を患っていなくとも、夜間のトイレ介助やおむつ交換が必要であり、睡眠時間が確保できないことも見受けられます。
身体的な負担が大きくなれば、精神的にも追い詰められ、介護者が肉体的・精神的なストレスにさいなまれることを、想像できるのではないでしょうか。
その② 高齢者虐待
2つ目が高齢者虐待です。
先ほど紹介したように、主介護者には心身の疲労が蓄積されていきます。
在宅での介護は数日で終了することが非常にまれであり、肉体的・精神的なストレスと長期間付き合っていかなければなりません。
普段であれば対応できることも、心身の余裕がなくなると感情的になり、高齢者虐待に発展してしまうことがあります。
また高齢者虐待は、自覚なく虐待を行っているケースが確認されています。
自覚なしに行われる高齢者虐待として、ベッドから転落しないように、ベッドの周りを策で囲い込んでしまうことが挙げられます。
それ以外にも夜間失禁しないように、脱水症状が見られるにも関わらず、水分を控える行為も高齢者虐待に該当します。
その③ 介護を理由とした離職(介護離職)
3つ目が介護を理由とした離職、いわゆる介護離職です。
平成28年10月から平成29年9月の1年間で、介護・看護を理由に離職した人数は、約9万9千人でした。
これは同期間中に離職した人のうち、約1.8%を占めています。
【参考サイト:総務省 統計局 平成29年就業構造基本調査 結果の概要、P6】
介護離職をすれば、仕事と介護を並行して行っていたことによる心身の負担軽減や、介護に充てる時間の確保が期待できます。
しかし介護離職をしたからといって、介護に関する問題が解決されるかというと、そうとは限りません。
介護離職をしたことによって、収入が減少し経済的な問題や、一日中介護と向き合わなければならないことなどの、介護離職前にはなかった問題が発生するかもしれません。
また介護が終了したのち、すぐさま新しい仕事が見つかる保障はありません。
介護離職後、再就職が行えたのは約1/3であるという調査結果が、日本労働組合総連合会から示されました。
【参考サイト:日本労働組合総連合会 介護離職の現状、介護休業・休暇に関する連合の考え方について、P6】
介護離職を選択する前に、介護休業・介護休暇といった制度を活用し、働きながら介護を続けられる環境づくりをこころがけたいところです。
介護が終了したのちにも安定した生活が送れるよう、介護離職については慎重に検討することを強くおすすめします。
各種介護問題の相談窓口
つづいて前の項目で解説した、それぞれの介護問題について相談できる窓口をご紹介していきます。
介護に関する問題の解決には、専門家の力が必要不可欠です。
自分で抱え込み過ぎて、介護問題で身動きが取れなくなる前に、各窓口へ相談におもむきましょう。
その① 主介護者に肉体的・精神的ストレスがある場合の相談窓口
肉体的・精神的ストレスで頭を悩ませている方の相談窓口は、役場の介護保険担当課や地域包括支援センターです。
地域包括支援センターは、地域に住む高齢者をサポートするために設置された施設で、介護に関する相談ごとの受付を行っています。
役場や地域包括支援センター以外にも、社会福祉協議会へ相談を行うのも、選択肢の1つです。
社会福祉協議会では高齢者や障がい者の在宅生活をサポートするために、介護サービスの提供や、地域の特性を踏まえた独自の事業を提供しています。
地域包括支援センター・社会福祉協議会の所在地は、インターネットや役場の介護保険担当課にて、調べることが可能です。
その② 高齢者虐待に関する相談窓口
高齢者虐待に関する相談窓口は、先ほど紹介した役場の介護保険担当課や、地域包括支援センターです。
地域によっては法務局・地方法務局や民生委員、福祉施設も高齢者虐待に関する相談窓口として挙げられます。
高齢者虐待に関する相談は、匿名で本人や家族の同意を得ずに行えます。
【参考サイト:法務局 高齢者虐待】
その③ 介護離職に関する相談窓口
介護離職に関する相談窓口は、都道府県労務局です。
都道府県労務局は、労働者からの相談ごとを受け付けている、厚生労働省の管轄下にある施設です。
労働者と雇用主との間で労働トラブルが発生した場合、都道府県労務局では解決のための助言や指導、あっせんを行っています。
【参考サイト:厚生労働省 都道府県労務局所在地一覧】
都道府県労務局へ相談を行う他に、厚生労働省では「介護離職ゼロ」ポータルサイトを開設していますので、そちらを参考にするのもよいでしょう。
【参考サイト:厚生労働省 「介護離職ゼロ」ポータルサイト】
その④ その他在宅介護に行き詰ったときの相談窓口
これまで紹介した問題以外のことで、在宅介護に行き詰まったときも、役場の介護保険担当課や地域包括支援センターへ、相談を行うことをおすすめします。
問題が明確でなくとも、介護に関して行き詰まりを感じている方は、出来るだけ早いタイミングで相談窓口へおもむきましょう。
まとめ
在宅介護で多い問題や、それらに関して相談する窓口をご紹介してきました。
在宅介護における問題や相談窓口について、理解を深められたのではないでしょうか。
在宅で多い介護問題とは?困ったときの相談窓口をまとめると
- 主介護者の肉体的・精神的なストレスや高齢者虐待、介護離職が在宅介護における問題として挙げられる。
- 役場の介護保険担当課や地域包括支援センター、都道府県労務局など、各介護問題に適した相談窓口が存在する。
- 介護に関する問題に直面し、行き詰ったときは自分だけで抱え込まず、専門家の助けを借りて、介護問題の解決を進めたい。
ということがあります。
介護問題に直面すると、心身のストレスから適切な判断が行えなくなってしまいます。
結果的に高齢者虐待をはじめとした、介護に関する事件・トラブルに発展してしまうかもしれません。
主介護者だけで介護問題を抱え込むのではなく、家族や行政機関と協力し、介護問題の解決に取り組みましょう。