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在宅での介護問題の現状を解説!解決方法はあるのか?

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在宅での介護問題の現状を解説!解決方法はあるのか?

高齢化が進み、病院や施設だけでなく、在宅での介護も多くなっています。その中で今どのようなことが在宅での介護において問題になっているのか、その解決方法について説明します。

【在宅での介護問題】ポイントは3つ

在宅での介護問題において、ポイントは3つです。1つ目は「老老介護・認認介護」、2つ目は「介護離職」、3つ目は「経済的に必要なサービスを受けられない」ということです。以下にこの3つのポイントについて説明します。

その① 介護問題1 老老介護・認認介護

高齢化、核家族化などが進み、高齢夫婦のみや高齢者の一人暮らしの世帯が増えたことにより、老老介護、認認介護が問題になっています。

「老老介護」とは、65歳以上の高齢者を同じく65歳以上の高齢者が介護している状態のことで、「高齢の妻が高齢の夫を介護する」「65歳以上の子供がさらに高齢の親を介護する」などのケースがあります。

在宅介護をしている世帯の半数以上が老老介護の状態にあります。

一方「認認介護」とは、老老介護の中でも、認知症の要介護者を認知症の介護者が介護していることをいいます。

事故が起きやすい危険な介護状況の一つです。

在宅介護をしている世帯の1割程が認認介護の状態にあると言われますが、老老介護の中には、「自分に認知症の症状がある」という自覚が無いまま介護を続けている人もいると考えられ、その割合や実態はつかみにくいものです。

老老介護の問題点は、要介護者の介護度にもよりますが、一般的には高齢になるほど体の自由が利かなくなり、介護者の肉体的な負担が増えていきます。

プロの介護士でさえ腰痛が職業病の一つとされるほどなので、介護者が高齢の場合はさらに大変であることが想像できるでしょう。

また、精神的な負担もあり、そのストレスが被介護者への虐待行為に結び付くおそれがあります。高齢者が高齢者を介護している場合、肉体的・精神的な限界が来て、介護者本人も第三者のサポートがないと生活できない、いわゆる「共倒れ」状態になることも考えられます。

強いストレスは認知症を引き起こす原因になり得るという研究結果もあり、周囲から孤独している老老介護ほど、認認介護に陥りやすいとされているのです。

認認介護の問題点は、認知症による記憶障害や判断力・認識力の低下により、食事や排泄その他の必要な世話をしたかどうか、介護者にもわからなくなってしまうことです。

認知症には「食欲の低下」という症状があり、自分で気付かないうちに低栄養状態に陥ることも考えられます。体力の衰えている高齢者には、低栄養状態は危険です。

水道光熱費などの支払いを忘れて、生活環境を維持できなくなることや、火の不始末による火事や、徘徊中の事故も心配です。

その② 介護問題2 介護離職

介護離職とは、介護と仕事の両立が困難となって、家族の介護のために会社を辞めることです。

多くの場合、親の介護が必要となるのは40~50代の働き盛りです。

企業は、経験を積んだ中堅社員が抜けるため大きな損失となってしまうでしょう。

介護離職者にとっても、収入源がなくなるため経済的に困窮する状態に陥ることも。

それにより生活保護に頼らざるを得ないケースも多く、高齢化社会が進む現代において看過できない社会問題のひとつとして懸念されているのです。

介護離職した人のうち女性が8割を占めています。

前職を離職した後、新たに職に就いている有業者は2万5千人ですが、無業者は7万5千人と3倍近くに上ります。

働きながらの介護がいかに困難かがわかります。

また、介護離職後の再就職率は介護離職者全体の3割程度であり、年齢が上がるほど再就職は難しくなります。

離職期間が長引くと、正規社員に復帰することは困難になり、多くの場合非正規社員に転じてしまいます。一度介護離職をすると、再就職が難しくなってしまうのが現状です。

その③ 介護問題3 経済的に必要なサービスを受けられない

介護を必要としているにもかかわらず、自宅または介護施設でも介護を受けられない高齢者がおり、「介護難民」と呼ばれます。

介護難民が増幅している理由は少子高齢化による高齢者の増加と介護職の人材不足があります。

また、特別養護老人ホームが常に満床で、待機人数が多いことも理由に挙げられます。

介護保険施設である特別養護老人ホームは、一般の有料老人ホームと比較して低価格で入所できるため、入所希望者が後を絶たず待機人数が多くなっています。

高齢者夫婦や一人暮らし世帯などでは、収入が年金のみで預貯金もない生活困窮者も多いです。

介護サービスの利用で発生する個人負担は世帯収入などによって1~3割ですが、低所得者にとって生活していく上で介護サービスの費用が生活を圧迫することもあります。

このように経済的な理由で介護サービスを必要最低限にせざるを得ない場合もあります。

【在宅での介護問題】解決策について

在宅での介護問題において、①老老介護・認認介護、②介護離職、③経済的に必要なサービスを受けられないという3つの問題を取り上げました。以下にこれらの問題の解決策について説明します。

その① 老老介護・認認介護に対する解決策

老老介護と認認介護において、最も重要なのは、介護者が一人で悩みを抱え込まないようにすることです。

老老介護による共倒れが起こらないためにも、子供や兄弟姉妹、親戚など、周囲の頼れる人に相談し、体力的、金銭的な負担を一人で抱え込まないようにすることが大切です。

また、介護保険制度や介護サービスについてよく調べ、受けられる支援を受けられるようにしましょう。

現在介護サービスを受けていない場合は、市区町村の役所の窓口に介護保険について相談し、すでに介護サービスを受けていて担当のケアマネージャーがついている場合には、ケアマネージャーに現状を相談し、介護負担を軽減してもらえるようにしましょう。

また、認知症の場合は人によって進行具合は違います。軽い症状でも違和感があるときは小まめに病院へ行き、要介護度が上がるきっかけを見逃さないことも大切です。

要介護度が上がると利用できる介護サービスの幅も広がり、介護負担を軽減することができます。

その② 介護離職に対する解決策

介護離職者が少しでも減少するよう、国はさまざまな取り組みを進めています。

これらの制度をうまく利用し、仕事を持ちながら介護を実現できるような仕組みの構築が必要です。

・介護休業制度

要介護状態にある家族を介護するためにまとまった期間の休みを取れる制度です。対象家族は配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。対象家族1人につき、通算93日までの休みを3回に分けて取ることができます。

・介護休暇制度

介護休業制度がまとまった休みを取るための制度なのに対し、介護休暇制度は単発の休みの取得を目的としています。介護だけでなく、例えば通院や買い物の付き添い目的で休みの取得が可能です。対象家族は介護休業制度と同じ。対象家族1人につき1年に5日、対象家族が複数の場合は1年に10日の休みを取ることができます。

・勤務時間の短縮措置

要介護状態にある家族を介護する従業員は、事業主から次のような措置を受けることができます。
 

  • 短時間勤務
  • フレックスタイム制度
  • 始業や終業時刻の繰り上げ、繰り下げ(時差出勤)
  • 労働者が利用する介護サービス費用の助成、またはこれに準ずる制度

・時間外労働・深夜業を制限する制度

要介護状態にある家族を介護する従業員について、事業主は業務に重大な支障のない限り、1カ月で24時間、1年で150時間を超えて時間外労働をさせてはならないと決まっています。

同様の条件で、午後10時~午前5時の深夜労働についても禁止されています。

・介護休業給付金

介護のための休業をした被保険者に支給されるのが介護休業給付金です。

ただし、介護休業の開始日から過去2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12カ月以上ある人が支給の対象です。

また、介護サービスや相談窓口をうまく活用し、介護者の負担やストレスを軽減することも重要です。
 

その③ 経済的に必要なサービスを受けられないことに対する解決策

経済的に介護サービスを受けることが難しい場合、様々な制度を利用することで、その負担を軽減することができます。

まず、「高額介護合算療養制度」という制度があります。

これは、1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担額を合計し、基準額を超えた場合に、その超えた金額が支給される制度です。

また、「高額介護サービス費制度」というものもあります。

これは、介護サービスを利用して支払った負担額(収入により1割~3割)が、1ヶ月合計で一定額を超えた場合、その超えた分が申請を出すと戻ってくる制度です。

さらに特別養護老人ホームなどの介護保険施設の場合は、「特定入所者介護サービス費」という制度もあり、これは介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)に入所している人やショートステイを利用する人のうち、収入や年金に応じて「利用者負担段階」が定められ、この段階別に特別養護老人ホームの「自己負担上限額」という基準を設け、それを超えた居住費・食費の負担額が介護保険から支給される制度です。

これらの制度を利用することで介護費用の負担を軽減することができます。
 

まとめ

この記事では、在宅介護問題の現状、解決策について詳しく解説しました。以下にこの記事の内容についてまとめます。

  • 在宅での介護問題において「老老介護・認認介護」、「介護離職」、「経済的に必要なサービスを受けられない」という大きな3つの問題があります。
  • 「老老介護・認認介護」に対しては、周囲の頼れる人に相談し、介護者が一人で負担を一人で抱え込まないようにすること、制度やサービスなどの支援を受ることが大切です。また「介護離職」に対しては、国がさまざまな取り組みを進めており、これらの制度をうまく利用し仕事と介護を両立できるようにします。そして「経済的に必要なサービスを受けられない」場合は、様々な制度を利用することで、その負担を軽減することができます。

 
高齢化が進み、在宅介護での問題が増えています。前述した解決策以外にも、「自分の生活はできるだけ自分で行う」を目標に、介護予防に取り組んでいく姿勢が重要です。

介護を必要とせずに自立して行動できる「健康寿命」を伸ばすために日々の暮らしで健康に気をつけること、そして、介護が必要となっても、一つでも良いから自分自身でできることを増やしていく努力を怠らないことこそ、介護の負担を減らすことができるポイントである言えます。

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