介護保険サービスを利用し始めると、聞きなれない専門用語を耳にする機会があります。
専門用語がどのような意味なのかわからず、困惑した経験がある方もいるのではないでしょうか。
今回は介護施設やリハビリテーションの現場で用いられる専門用語や、介護保険制度に関わる用語に関して解説していきます。
介護用語について疑問を感じた方や、介護に関わる専門用語の知識を深めたい方は、ご参考になさってください。
必ず理解しておきたい介護用語
まずは主に介護や医療、リハビリテーションの現場で用いられる介護用語について、解説していきます
介護サービスを利用する上で度々耳にする言葉ですので、どのような意味なのか理解しておくことをおすすめします。
その① QOL
QOL(キューオーエル)はQuality Of Lifeの略称であり、生活の質や人生の質と訳されます。
介護や医療の現場では、利用者のQOLを高める援助を行うといった表現で用いられます。
一度きりの人生をどのようにして生きていくか、その人にとっての幸せは何かを、利用者本人の価値観に基づき考え、必要な援助を行っていくことが求められています。
後ほど紹介するADLが自立しており、身の回りのことが自分一人で行える方であっても、QOLが保たれた生活が送れるわけではありません。
一方でADLが低下し寝たきりの方であっても、身近な人とのコミュニケーションが綿密に取れており、QOLが低下することなく日常生活を送れているケースも見られます。
利用者本人が満足して毎日を送れているか、本人の意思を尊重した援助が行えているかなどが、QOLを高める援助を行う上でのポイントになります。
その② ADL
ADL(エーディーエル)はActivities of Daily Livingの略語であり、日常生活動作を意味する言葉です。
食事や入浴、排せつなど日常生活を送る上で必要となる動作群が、ADLに該当します。
上記以外に、移動・更衣・整容、そして移乗もADLに当てはまる動作です。
ADLが低下すると心身の機能が低下し、日常生活を送る上で不便に感じることが増加します。
それだけでなく外出の機会が減り、自立した生活を送るのが困難になってしまう可能性があります。
ただし前項目で紹介したように、ADLが低下したからといって、QOLが保たれないわけではない点に注意が必要です。
ADLだけでなく、QOLにも目を向け、必要な援助を行いましょう。
その③ IADL
IADL(アイエーディーエル)は、Instrumental Activities of Daily Livingの略であり、手動的日常生活動作と訳されます。
買い物や食事の用意、掃除などが、IADLに当てはまる動作です。
ADLが食事や入浴といった単独の動作を指し示す、言葉であるのに対し、IADLは複数の動作を含む介護用語です。
IADLに該当する買い物を例に挙げると、衣類を着替え、スーパーへ外出し、必要な物を選び、会計を行うといった複数の動作が要求されます。
その④ 残存機能・潜在能力
残存機能は疾病やケガなどが原因で、障害を負った人に残された機能を指す言葉です。
障害がある方であっても、残存機能を効果的に活用することにより、日常生活を送る上で感じる不便さの軽減が期待できます。
過剰な介護や不要な補装具の使用は、残存機能が低下してしまい、介護の必要性が増す恐れがあります。
潜在能力は、さらなる向上が期待できる能力です。
声掛けや接し方を工夫し、要介護者のモチベーションを向上させ、潜在能力を引き出せるような介護を行いたいところです。
残存機能や潜在能力に目を向け、行っている援助が適切なものなのか、定期的な見直しを行いましょう。
介護保険に関わる用語
介護保険サービスを利用するには、要介護認定の申請が必要不可欠です。
要介護認定の申請や介護保険サービスを利用する上で、様々な専門用語が登場します。
今回は介護保険制度に関わる7つの用語について解説していきます。
その① 一次判定
一次判定は要介護認定における審査の1つです。
要介護認定の申請後、コンピューターによって要介護度の判定が行われます。
これを一次判定と呼び、後ほど解説する認定調査の結果と、主治医の意見書の内容が判断材料となります。
主治医の意見書は市区町村が手配を行うため、認定を受ける本人や家族が、当該書類を入手しなくとも問題ありません。
その② 二次判定
一次判定の後、認定審査会によって行われる要介護度の判定が、二次判定です。
認定審査会は保健・医療、そして介護の専門家によって構成される機関となっています。
一次判定の結果と、主治医の意見書の内容に基づき、要介護度の判定が行われます。
その③ 認定調査
認定調査は要介護認定の申請後、市区町村の担当者による認定を受ける方の様子確認です。
身体状況やコミュニケーション能力、医療的な処置などの項目に関して、認定を受ける方の状態が担当者により確認されます。
自宅以外にも、医療機関や福祉施設など、認定を受ける方が生活を送っている場所で認定調査が行われます。
【参考サイト:厚生労働省 サービス利用までの流れ】
その④ サービス計画書
サービス計画書はケアプランとも呼ばれ、介護保険サービスを利用するのに必要となる書類です。
利用者・家族の意向や、要介護者の解決すべき課題、課題を達成するために必要な目標などが、サービス計画書には記載されています。
居宅介護支援事業所に所属するケアマネージャーや、地域包括支援センターへ、サービス計画書の作成依頼を行うことが可能です。
強い希望があるのであれば、家族や利用者本人がサービス計画書を作ることもできます。
その⑤ 介護予防
介護予防は要介護状態に至るのを防ぐ、または遅らせることを目的とし提供されるサービスです。
体操やレクリエーション、リハビリテーションを通し、運動能力の低下防止・コミュニケーションの機会向上が期待できます。
要介護状態に至るのを防ぐ・遅らせるという介護予防の性質から、基本的に自立した高齢者を対象とし、介護予防が提供されます。
その⑥ 区分変更
介護が必要な度合いを示す、要支援・要介護度を変更する際に用いられる言葉が、区分変更です。
病気やケガなどを原因とし、心身の状態が変化し、介護の必要性が変わった場合、区分変更の申請が行われます。
また要介護認定の結果が、満足のいくものでなかったケースにおいても、区分変更を行うことがあります。
いずれにしろ、区分変更の申請を行ったとしても、希望する要支援・要介護度の認定がされるわけではない点に注意が必要です。
その⑦ サービス担当者会議(カンファレンス)
サービス担当者会議は、前の項目で解説したサービス計画書の作成にあたり、利用者本人・家族、介護サービス事業者などが参加し、ケアプランの内容を検討する会議です。
利用者の心身状況が変化し、援助内容の変更が求められるケースでも、サービス担当者会議が開催されます。
医療や介護の世界では、サービス担当者会議とカンファレンスは同じものとして扱われます。
しかし厳密には、カンファレンスは幅広い意味での会議を指し示す言葉であり、サービス担当者会議は会議の一種です。
様々なカンファレンス(会議)の1つが、サービス担当者会議であると考えておけば、間違いないでしょう。
まとめ
QOLやADL、IADLなどの覚えておきたい介護用語や、一次・二次判定、認定調査などの介護保険制度に関わる用語を解説してきました。
介護用語について、理解を深められたのではないでしょうか。
代表的な介護用語をご紹介。『QOL』『ADL』『IADL』とはをまとめると
- QOLは生活の質を意味する言葉であり、利用者の考えに寄り添い、本人が望む生活が送れるよう支援することが、QOLを高める介護を行うときのポイントである
- ADL、IADLはともに動作を指し示す言葉であり、ADLは食事や入浴などの、日常生活を送る上で必要な基本的な動作、IADLは買い物・洗濯などの複雑な動作が該当する
- 介護保険サービスに関わる専門用語として、一次判定・二次判定、認定調査、そしてサービス計画書などが挙げられる
ということがあります。
介護に関する専門用語についてわからないことがあるときは、自分で調べる他に担当ケアマネージャーに聞くのも選択肢の1つです。
専門用語だけでなく、介護に関する疑問や不安に感じることは、担当ケアマネージャーや介護施設スタッフ、役所の介護保険担当課へ確認するよう心がけましょう。