居宅介護支援事業所を運営するには、行政によって定められた指定基準を満たす必要があります。
この指定基準は居宅介護支援事業を開業する際だけでなく、開業後も遵守し続けなければなりません。
今回は介護支援専門員が働く、居宅介護支援事業所の指定基準に関して、解説していきます。
居宅介護支援事業所の指定基準について、興味がある方はご参考になさってください。
そもそも指定基準とは
指定基準とは居宅介護支援事業を行う上で、満たす必要がある基準類を指す言葉です。
居宅介護支援事業の指定基準は人員基準、設備基準、そして運営基準が挙げられます。
居宅支援事業を始めるには、上記の3つの基準をすべて満たしたうえで、市区町村へ認可申請を行わなければなりません。
なお居宅介護支援事業の指定を受けた後も、指定基準を満たし続ける必要があります。
指定基準の詳細は市区町村ごとに異なるため、注意が必要です。
居宅介護支援事業の認可申請を検討している方は、事前に自治体の担当課に指定基準に関して、確認することを強くおすすめします。
居宅介護支援事業所の指定基準を守らない場合
居宅介護支援事業所の指定基準を守らない場合、新規利用者の受け入れ停止処置がとられる可能性があります。
また場合によっては、居宅介護支援事業所の指定取り消し処分になる恐れがあります。
【参考サイト:東大阪市 指定居宅サービス事業者等の指定の取消し等】
https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000014691.html
なお居宅介護支援所の指定を受けた後、事務所を移転した場合や、レイアウトの変更を行ったケースでは、変更届の提出が必要になります。
事業所の移転やレイアウトの変更を行った際には、指定基準を確認するようにしましょう。
以上が、指定基準を守らない場合に関してです。
次の項目からは、指定基準の具体的な内容について解説していきます。
居宅介護支援事業所の指定基準【人員基準】
はじめに居宅介護支援事業所の指定基準の1つである、人員基準についてです。
人員基準では介護支援専門員(ケアマネージャー)と、管理者に関する基準が定められています。
その① 介護支援専門員
事業所ごとに利用者35人に対し、1名以上の介護支援専門員(ケアマネージャー)を常勤で配置しなければならないと、人員基準で定められています。
利用者が35人を超える場合には、その端数が増加するごとに、介護支援専門員を増員することが望ましいとされています。
なお増員した介護支援専門員は、非常勤であっても差し支えありません。
その② 管理者
管理者は主任介護支援専門員でなければなりません。
また管理者は専ら、当該事業所の管理者の職務に従事する必要があります。
ただし事業所の管理に支障を来さない場合に限り、当該事業所の介護支援専門員の職務に従事することが認められています。
さらに同一条件において、事業所と同じ敷地内にある他事業所の職務に従事することも認められており、他事業所は必ずしも居宅介護支援事業所である必要はありません。
【参考サイト:板橋区 健康生きがい部 介護保険課 居宅介護支援事業の運営の手引き P7・8】
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/740/attach_89573_9.pdf
居宅介護支援事業所の指定基準【設備基準】
つづいて設備基準に関してです。
事業を行う上で必要となる広さを有した、専用区画を設けなければならないと、設備基準において定められています。
同一事業者が事務所内で別の事業を運営する場合は、間仕切りする等の対処を行い、居宅介護支援事業所が別事業と明確に区分されている必要があります。
設備類に関しては施設運営に差し支えなければ、施設内に備え付けられた備品を使用しても問題ありません。
必要備品は帳簿や、サービス計画書等の個人情報を保管できる、鍵付きの書類棚が挙げられます。
事務所または専用の区画には、相談対応・サービス担当者会議等が行える、適切なスペースを確保することとされています。
家族や介護従事者以外に、利用者の出入りが予想されることから、直接の出入りが可能である構造とするよう、配慮することが望ましいでしょう。
【参考サイト:板橋区 健康生きがい部 介護保険課 居宅介護支援事業の運営の手引き P15・16】
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/740/attach_89573_9.pdf
居宅介護支援事業所の指定基準【運営基準】
さいごに居宅介護支援事業所の運営基準についてです。
運営基準は居宅介護支援事業所を運営していく上で、遵守または参考にすべき基準の総称になります。
運営基準の一覧は以下の表の通りです。
【居宅介護支援事業所 運営基準一覧】
※参考サイトを基に、筆者が表を作成
【参考サイト:板橋区 健康生きがい部 介護保険課 居宅介護支援事業の運営の手引き P8~18】
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/740/attach_89573_9.pdf
つづいて上表の各項目に関して概略ではありますが、どのような規定となっているのか、ご紹介させていただきます。
- 手続きの説明・同意
- 提供拒否の禁止
- サービス提供困難時の対応
- 受給資格等の確認
- 要介護認定に係る援助
- 身分を証する書類の携行
- 利用料の受領
- 保険給付の請求のための証明書の交付
- 指定居宅介護支援の基本取扱方針
- 指定居宅介護支援の具体的取扱方針
- 法定代理受領サービスに係る報告
- 利用者に対する居宅サービス計画等の書類の交付
- 利用者に関する市区町村への通知
- 管理者の責任
- 運営規程
- 勤務体制の確保
- 従業者の健康管理
- 掲示
- 秘密保持
- 広告
- 居宅サービス事業者等からの利益収受の禁止等
- 苦情処理
- 事故発生時の対応
- 会計区分
- 記録の整備
サービスの提供に当たり、あらかじめ利用申込者またはその家族に対し、運営規定の概要・その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる、重要事項を記した文書を交付・説明を行い、文書による同意を得なければならない
正当な理由なく、サービスの提供を拒んではならない
利用申込者に対し、サービスの提供が困難と認められる場合には、他の指定居宅介護支援事業者の紹介、またはその他の必要な措置を講じなければならない
サービスの提供を求められた場合には、その者が提示する被保険者証によって、被保険者資格・要介護認定の有無等を確かめる必要がある
要介護認定を受けていない者からの利用申し込みがあった場合には、利用申込者の意思を踏まえ、速やかに認定申請が行えるよう必要な援助を行わなければならない
指定居宅介護支援事業者は、当該事業所の介護支援専門員に身分を証する書類を携行させ、初回時及び求められた際にはこれを提示すべき旨を指導しなければならない
あらかじめ利用者または家族に対し、サービスの内容及び費用について説明を行い、同意を得なければならない
利用料の支払いを受けた場合は、当該利用料の額等を記載した、指定居宅介護支援証明書を交付しなければならない
指定居宅介護支援は、要介護状態の軽減または悪化防止に資するように行われるとともに、医療サービスとの連携を十分に配慮して行わなければならない
居宅サービス計画書の作成やサービスの提供に係る基本的な留意点、利用者自身によるサービスの選択等を遵守しなければならない
法定代理受領サービスとして、位置づけられたものに関する情報を記載した文書を毎月、市区町村に対して提出しなければならない
利用者に対し直接の居宅サービス計画、及びその実施状況に関する書類を交付しなければならない
不正行為によって、保険給付を受けようとしたときやまた受けた時は、遅延なく意見を付してその旨を市区町村へ通知しなければならない
管理者は介護支援専門員やその他従業員の管理、利用者の申し込みに係る調整等を一元的に行わなければならない
事業の目的・運営の方針や職員の職種、員数・職種の内容等を、重要事項に関する規定として定める必要がある
事業所ごとに介護支援専門員、その他の従業員の勤務体制を定めておかなければならない
介護支援専門員の清潔の保持、及び健康状態について、必要な管理を行わなければならない
事業所の見やすい場所に、運営規程の概要や介護支援専門員の勤務体制、重要事項等を掲示しなければならない
正当な理由なく、業務上知り得た利用者またはその家族の秘密を漏らしてはならない
事業所について広告をする場合、その内容が虚偽、または誇大なものであってはならない
公平中立性を保ち、加算等取得のために解決すべき課題に即さない、サービスを位置づけてはならない
利用者またはその家族からの苦情に迅速かつ適切に対応するとともに、その内容を記録しなければならない
事故が発生した場合には速やかに市区町村、利用者の家族等に連絡を行い必要な措置を講じ、行った処置を記録しなければならない
事業所ごとに経理を区分するとともに、指定居宅介護支援の事業の会計と、その他の事業の会計とを区分しなければならない
指定居宅サービス事業者等との連絡調整に係る記録や、利用者ごとの居宅サービス計画・アセスメントの結果の記録等を、その完結日から5年間保存しなければならない
【参考サイト:板橋区 健康生きがい部 介護保険課 居宅介護支援事業の運営の手引き P8~18】
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/740/attach_89573_9.pdf
以上が居宅介護支援事業所の運営基準についてです。
繰り返しになりますが、居宅介護支援事業所の指定基準の詳細は、市区町村によって異なります。
居宅介護支援事業所の指定基準について、疑問を感じることがある場合には、必ず自治体の介護保険担当課へ確認することを強くおすすめします。
まとめ
指定基準とはどのようなものなのかや、指定基準を守らない場合どうなるのか、指定基準の内容を解説してきました。
居宅介護支援事業所の指定基準について、理解を深められたのではないでしょうか。
介護支援専門員が働く、居宅介護支援事業所の指定基準(運営基準)をまとめると
- 居宅介護支援事業所を運営する上で、遵守・参考にすべき基準が指定基準である
- 指定基準は人員基準、設備基準、そして運営基準に分類される
- 居宅介護支援事業所の指定基準を守らないと、新規利用者の受け入れ停止や指定の取り消し処分となることがある
ということがあります。
居宅介護支援事業所の指定基準は、開業後も遵守・参考にし続けなければなりません。
指定基準を違反すると、重大なペナルティが課される可能性があるため、指定基準について不明な点は、市区町村へ随時確認しましょう。