人間機能と障害に関する国際的な分類方法である、ICFという言葉をご存知でしょうか。
ICFに関して理解を深められれば、ケアプランに利用者・家族の希望をより反映できるようになります。
今回はICFとはどのような分類法なのかや、ICFの項目、ケアプラン作成へICFを活用する際のポイントを解説していきます。
ICFについて興味がある方はご参考になさってください。
ICFとは何か?奥が深い?
まずはICFに関して、理解を深めるところから始めましょう。
ICFはInternational Classification of Functioning, Disability and Healthの略称であり、人間の生活機能と障害を分類するための方法論です。
国際生活機能分類と訳され、WHO(世界保健機構)総会において2001年5月に、ICFが採択されました。
国際的な分類法であるため、世界共通の基準として人の健康だけでなく、社会保障や教育、環境整備など、多くの分野でICFが活用されています。
その① ICFの考え方
ICFの考え方は、生活機能というプラス面を評価・分類するということです。
ICFでは生活機能に加え、健康状態、そして背景因子と呼ばれる各機能が影響し合っていると考えられています。
生活機能は心身機能・身体構造、活動、そして参加に細分化されます。
また背景因子は環境因子と個人因子によって成り立っています。
各要素は以下の図のように構成されています。
【ICF 構成図】
※筆者が参考サイトをもとに図を作成。
【参考サイト:厚生労働省 「国際生活機能分類 ―国際障害分類改訂版―」(日本語版)の厚生労働省ホームページ掲載について、5 生活機能と障害のモデル】
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/08/h0805-1.html
上図の各要素を組み合わせることにより、人の生活機能・障害について、約1,500項目ものに分類できます。
分類したそれぞれの項目を評価すれば、その人の状態を理解する助けとなるのです。
ICFを活用する際の重要なポイントである、特定の項目のみだけでなく、すべての要素を評価するということを、胸に留めておくことをおすすめします。
その② ICFが出来た背景
ICFが採択される前は、国際的な障害の分類として、国際障害分類(ICIDH)という考え方が用いられていました。
このICIDHは障害にスポットをあてて、その人のマイナス面を評価・分類するという考え方です。
しかしICIDHには障害が、社会的不利に直接つながると認識されてしまう、恐れがある問題点がありました。
障害がある方が日々の生活の中で、不便を感じるのは本人だけでなく、バリアフリー化されていないや、障害に対する人々の理解不足など、様々な要因が考えられるためです。
そこで障害というマイナス面ではなく、生活機能というプラス面を評価・分類しようという、視点への転換が求められました。
プラス面の分類に加え、環境因子も評価対象とし考えられたのが、ICFなのです。
その③ ICFを活用できる場面
ICFが活用できる場面は、サービス計画の策定やその評価、記録などです。
障害を持った本人やその家族、保健・医療・福祉等の幅広い分野の人々が、国際的な共通指標であるICFを用いることにより、障害や疾病の状態を共通理解する助けとなります。
ICFは障害・疾病に関する調査や統計について、比較検討する際の標準的な枠組みとなるのです。
以上がICFの概要や出来た背景などについてです。
次の項目ではICFを構成する、6つの項目に関して解説していきます。
ICFの項目
それではICFを構成する6つの各項目について、確認していきましょう。
その① 健康状態
ICFを構成する1つ目の項目は、健康状態です。
健康状態には病気・怪我に関する状態、体調変化が該当します。
疾患や外傷だけでなく、肥満や妊娠、加齢なども健康状態において取り扱います。
健康状態が悪化すれば、生活機能の低下を引き起こすこととなるのは、想像に難くないでしょう。
その② 心身機能・身体構造
2つ目の項目が心身機能・身体構造です。
心身機能は身体系の生理的・心理的機能が該当します。
身体機能に該当する具体的な機能は、手足の動きや視覚・聴覚、精神状態などです。
身体構造では、器官や肢体とその構成部位などの、身体の解剖学的部分について取り扱います。
手足の関節や胃・腸などの内臓、皮膚などの人間を構成する部位が、身体構造に該当します。
心身機能・身体構造として評価するのは、人の生命維持に関係する要素であると、認識していれば問題ないでしょう。
その③ 活動
3つ目の構成要素が、活動です。
生活を送る上で目的を持ち行う、具体的な行為が活動に当たります。
移動動作や寝起きといったいわゆるADLだけでなく、家事・仕事、趣味などの、日常生活を送る上で行っている動作が活動となります。
その④ 参加
4つ目が参加です。
参加は家庭・社会に関わり合いを持ち、役割を果たすことが、それに当てはまります。
参加に該当する具体的な行為は、社会活動・地域組織への参加や、職場・同じ趣味同士の集まりに出向くなどです。
その⑤ 環境因子
ICFを構成する5つ目の項目が環境因子です。
物理的な環境や社会環境など、その人を取り巻く物的・人的な状態が、環境因子に該当します。
建物・交通機関の整備状態のほか、自然環境、家族友人・職場の人々との関わり合いが、環境因子になります。
その⑥ 個人因子
最後の構成要素が個人因子です。
年齢、学力、そして人種などの、その人の特徴を指し示す要素が個人因子になります。
個人因子はその人を形作る、パーソナリティと言い換えることもできるでしょう。
ICFをケアプランに活かす方法
さいごにICFをケアプランに活かす方法をご紹介していきます。
ICFの原則に立ち、プラス面に着目しプランニングを行うことが、ICFをケアプランに活かす際の重要なポイントになります。
例えば右片麻痺がある利用者に対し、片麻痺があるから細かい作業が出来ないではなく、片麻痺の方でも簡単な作業が出来るというような、発想の転換が求められます。
ICFをケアプランに活かす際には、ICFを構成する項目ごとに出来ること・課題であることを、洗い出す必要があります。
その後は出来ることに着目し、課題解決につながる援助が行えないか検討します。
このときに本人の希望を加味し、援助内容を作成することをおすすめします。
個人因子として、人と話すのが好きであるという事実が確認でき、本人が社会とのつながりを強く望んでいるケースでは、デイサービスの利用を検討してみるのも選択肢の1つです。
ICFをケアプランに活かすメリットは、利用者を構成している要素を全体的に見える化し、整理把握しやすい点にあります。
年を重ねると出来ないことが増え、マイナス面に目が行きがちですが、出来ること・プラス面に着目し、ケアプランの作成を行いたいところです。
まとめ
ICFとは何かや、ICFの構成要素、ICFをケアプランに活用するポイントを解説してきました。
ICFに関して理解を深められたのではないでしょうか。
【介護支援専門員の基礎知識】ICFの視点とは?ケアプランにどう活かす?をまとめると
- ICFは障害というマイナス面ではなく、プラス面に着目し、生活機能と障害を分類するための方法である
- 健康状態や心身機能・身体構造、活動、参加などが、ICFを構成する項目である。これ以外にも環境因子・個人因子が、ICFの項目として挙げられる
- ICFの基本的な考え方であるプラス面に着目し、ICFの項目ごとに出来ること・課題を洗い出した上で、出来ることを活かすような、ケアプランの作成を目指すようにしたい
ということがあります。
ICFはその人の状態を評価する分類法であり、ケアプランを作成するツールの1つです。
あくまでもICFはケアプランを作成するための手段であり、ICFによる利用者の分析が最終目的ではありません。
ICFを活用しつつ、利用者や家族が最終的にどのような生活を望んでいるかを考えた上で、利用者・家族に寄り添ったケアプランの作成を行っていきましょう。