75歳以上の高齢者の増加が予想される現状、介護支援専門員をはじめとした介護職の需要が増しています。
しかし受験要項の変化を原因とし、介護支援専門員の受験者数は減少傾向にあります。
今回はケアマネージャーにスポットをあてて、受験者数や社会的評価、仕事の現状などに関して解説していきます。
介護支援専門員について、興味がある方はご参考になさってください。
介護支援専門員の受験者数について
はじめに介護支援専門員の受験者数について、解説していきます。
令和2年度のケアマネージャーの資格試験からさかのぼり、過去5回の受験者数は減少傾向にあります。
受験者数は減少傾向にありますが、過去5回の合格率は10~20%前後で推移しています。
令和2年度から過去5年間の、介護支援専門員の受験者数・合格者数の推移は、以下の表の通りです。
【介護支援専門員 受験者数・合格者数の推移】
※参考サイトもとに筆者が表を作成
【参考サイト:厚生労働省 第23回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187425_00007.html
受験者数の減少が際立っているのが、平成30年度以降です。
これは平成30年度より、ケアマネージャーの受験要項が変更されたためと考えられます。
受験要項の変更前は、介護職員初任者研修(ホームヘルパー2級)等の資格を有しており、5年間の介護等の業務に従事していれば、ケアマネージャーの資格を得ることが可能でした。
また当該資格がなくとも、介護等の業務に10年間従事していれば、介護支援専門員の資格試験を受けられました。
しかし受験資格の要項が変更したことにより、これらの人々は介護支援専門員の受験対象者から除外されることとなったのです。
令和3年現在、介護支援専門員の受験資格は、一定の国家資格に関わる業務、または相談員業務に5年かつ900日以上、従事していることとなっています。
介護支援専門員の資格を持つ事はどういうことか?
介護支援専門員の資格を持つということは、介護に関するエキスパートであることを意味しています。
利用者に適した介護サービスが提供されるかどうかは、ケアプランの内容に左右されます。
介護サービスの性質上、ケアプランに記載されていないサービスを提供することは、原則的に困難であるためです。
そしてそのケアプランの作成や、事業者間の連絡調整を行う職業がケアマネージャーとなっています。
ケアマネージャーは利用者の心身状態を的確に判断し、利用者本人・家族の意向に沿った介護支援プランを計画する必要があります。
平成30年度に介護支援専門員の受験要項が変更された背景には、ケアマネージャーの資質・専門性の向上を図る必要があると、厚生労働省で判断されたためです。
厚生労働省で厳格化した受験要項を満たしたのちに、ケアマネージャーの資格を取得したということは、介護に関する専門家であるということを指し示しているのです。
介護支援専門員の社会的評価や価値について
介護職における到達点の1つであり、介護職員初任者研修(ホームヘルパー2級)や、介護福祉士を取得した人が目指す資格が、介護支援専門員です。
またケアプランに沿って介護サービスが提供されるため、ケアマネージャーは介護サービスを提供する、チームのリーダー的な役割を果たします。
介護支援専門員は豊富な経験と、介護に関する専門知識を有した専門家であり、介護サービスを提供する上で非常に重要なポジションを占めている職種と言えるでしょう。
介護支援専門員の仕事の現状
これまでケアマネージャーは、介護に関する専門家であるとともに、介護サービスを提供する上で、重要なポジションを占めていることを解説してきました。
さらに介護サービスを提供する上で、リーダー的な役割を果たすため、日々の業務に追われ、業務量と給与とのバランスに疑問を感じるケースが見受けられます。
さいごに介護支援専門員の仕事の現状について、確認していきましょう。
その① とにかく忙しい
介護支援専門員の仕事の現状として、1つ目に挙げられるのが、とにかく忙しいことです。
前の項目で紹介したように、介護業界全体で人不足が叫ばれており、ケアマネージャーも例外ではありません。
人不足に加え、突発的な依頼によって、意図せず業務量が増加する可能性があります。
利用者の体調不良や、急な家族の不在により、代替えの介護手段の確立など、時として介護支援専門員は、通常業務とは異なる対応に迫られるのです。
またケアマネージャー本来の業務以外に、市区町村独自サービスへの代行申請や、入退院時の付き添いなどの、業務を行わなければならないケースが見られます。
これらの業務の他にも、介護・環境支援につながらない、相談支援に対応しなければならないことも考えられます。
さらに他の職種と、ケアマネージャーを兼任している場合には、ケアマネージャー以外の業務も行わなければなりません。
所属する事業所にもよりますが、受け持つ利用者や地域の状況によって、とにかく忙しい毎日を過ごすケアマネージャーは珍しくないことを、頭の片隅においておきましょう。
その② 給与が安い
2つ目の現状は給与が安いということです。
介護支援専門員の給与について注意したいのが、ケアマネージャーの給与自体は割安ではない点です。
令和2年2月の平均給与は、介護職が325,550円だったのに対し、介護支援専門員は362,510円でした。
介護職と比較し、ケアマネージャーの平均給与は、36,960円ほど高いことが確認できます。
【参考サイト:厚生労働省 令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要、13ページ】
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/20/dl/r02gaiyou.pdf
しかし前項目で紹介したように、日々の業務がとにかく忙しく、業務量と比較し、相対的に給与が安いと感じるケースがあります。
また他業種と比較して、介護業界の給与が割安であり、他の職業に比べてケアマネージャーの給料が安いと感じることも考えられます。
医療・福祉の業種別平均年収が397万2千円だったのに対し、全業種の平均年収が440万7千円という調査結果が報告されています。
【参考サイト:国税庁 平成30年分民間給与実態統計調査結果について、二 業種別の平均給与】
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2019/minkan/index.htm
その③ 現場でケアマネージャーは足りているか?
令和元年度の調査では、大いに不足、不足、そしてやや不足と答えた事業所が約30.8%でした。
介護支援専門員に関わらず、介護職が不足している理由に、採用が困難であることや、離職率が高いことが挙げられます。
【参考サイト:公益財団法人 介護労働安定センター 令和元年度「介護労働実態調査」の結果、8ページ】
http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2020r02_chousa_kekka_0818.pdf
また受験要項の変更により、新規でケアマネージャーの資格を取得する人が減少したことも、ケアマネージャー不足の要因の1つと言えるでしょう。
まとめ
介護支援専門員の受験者数や、ケアマネージャーの資格を持つことはどういうことか、介護支援専門員の仕事の現状などを解説してきました。
ケアマネージャーが置かれている状況について、理解を深められたのではないでしょうか。
介護支援専門員の現状は?居宅介護支援専門員におけるケアマネは不足傾向?をまとめると
- 令和2年度からさかのぼり、過去5年間、介護支援専門員の受験者数は減少傾向にある
- 介護支援専門員の資格を持つということは、介護の専門家であり、介護サービスを提供する上で、リーダー的な役割を果たすことを意味している
- 介護職と比較し、給与面ではケアマネージャーは厚遇されている。しかし日々の業務の忙しさから、業務量と給与のバランスが保たれていないと感じるケースがある
ということがあります。
介護支援専門員は通常業務に加え、急を要した依頼に対応しなければならず、事業所によっては業務量と給与のバランスが取れていない場合があります。
しかし裏を返せば、多くの人から求められており、やりがいがある仕事と言うことができます。
給与だけでなく、利用者・家族からの感謝の言葉や、安心して生活を送る利用者の姿などをモチベーションにし、日々の業務に取り組みたいところです。