エコマップは要介護者と社会資源の関係性を記した、相関図です。
エコマップを活用することにより、利用者の状態に即したケアプランの作成が、可能になります。
またそれだけでなく、ケアマネの変更があった際に、スムーズな引継ぎが行えるようにもなります。
今回はエコマップの概要や必要性、その書き方に関して解説していきます。
エコマップについて興味がある方は、ご参考になさってください。
そもそもエコマップって何だ!?
まずはエコマップとは、どのようなものなのか確認するところから、はじめましょう。
エコマップは生態地図とも呼ばれ、要介護者と社会資源の関係性を記した地図のようなものです。
社会資源には介護サービスや医療機関だけでなく、家族・兄弟姉妹・友人・近隣住民との関係性も含まれます。
エコマップを活用すれば、複雑な人間関係を総合的に評価することが可能です。
要介護者が置かれた人間関係が評価できれば、日々の生活を送る上での課題や可能性、解決したい家族間の不和などが見いだせます。
エコマップは利用者と組織・人間との関わり合いを、視覚化するツールという認識で問題ないでしょう。
以上がエコマップとは何かについてです。
エコマップのあらましを確認できたところで、次の項目ではエコマップの必要性に関して解説していきます。
エコマップの必要性
前の項目で解説したように、エコマップは要介護者と社会資源との関係性を記した相関図であり、エコマップを完成した後に、効果的に活用する必要があります。
エコマップで具体的に、どのようなことが分かるのかを確認したのち、エコマップの活かし方について考えていきましょう。
その① エコマップで分かる事
エコマップで分かることは、要介護者と家族・友人との人間関係や、介護サービスに関わる人々とのつながりの状態です。
エコマップでは関係性の強弱や、人間関係に対立があるかどうか、介護サービスについてどのようなイメージを持っているかが、視覚的に確認できます。
後の項目で紹介するエコマップの作成例を見れば、エコマップで分かることがよりイメージしやすいでしょう。
要介護者に限らず、私たちの人間関係や関係機関との関わり合いは、日々変化します。
エコマップを作成した後、利用者の人間関係や介護サービス・医療機関との関係性が変化した際には、適宜エコマップに修正を加えることをおすすめします。
時間経過とともにアップデートすることにより、利用者の状態をより反映したエコマップを作成できます。
その② エコマップで全体をイメージできる
エコマップの利点は要介護者と社会資源との関係性を、確認できるだけではありません。
エコマップは利用者が置かれた人々・組織との関係性の、全体図をイメージする助けとなってくれます。
利用者と配偶者、要介護者とヘルパー事業所といった部分的な関係性ではなく、利用者を取り巻く全体的な関係性を、エコマップでは確認できるのです。
さらにエコマップを作成しておけば、何らかの理由によりケアマネの変更が行われた際の引継ぎがスムーズに行えます。
事業所の変更やケアマネの異動により、担当ケアマネが変わることは珍しくありません。
ケアマネの変更が行われるたび、利用者が置かれた状況を確認し、必要な情報を収集し直すのでは、効率的なプランニングを行うのは難しいでしょう。
ケアマネが変わる際に、作成しておいたエコマップをあわせて渡せば、スムーズに業務の引継ぎを行うことが可能です。
その③ エコマップの活かし方
つづいて簡略化した事例を基に、エコマップの活かし方を解説していきます。
【エコマップの事例】
本来であればエコマップに記載するのは、要介護者に関わる人間や事業者、医療機関など多岐に渡ります。
また関係性を強い、もしくは弱い関係性だけ記載するのではなく、普通の関係や対立関係など、人々・組織との関係は複雑なものとなります。
上記のエコマップは解説を行う観点から、簡略化したものを作成しました。
具体的なエコマップの書き方については、次の項目で解説していきます。
さて上記の事例ですが、要介護者とデイサービス事業所Bとの関係性が、弱いことを見て取れます。
主介護者である長男が、要介護者へデイサービスの利用を促した際、当該事業所との関係が弱いことから利用を渋るかもしれません。
しかし主介護者と友人Aさんは強い関係であり、また友人Aさんはデイサービス事業所Bとも関係性が良好です。
そこで友人Aさんの協力が得られれば、デイサービスの利用へとつながるのではないかと考えられます。
エコマップを活かす上で重要なことは、どのようなアプローチを行えば、利用者に適した介護サービスを提供できるか考えることです。
エコマップの書き方
さいごにエコマップの書き方について解説していきます。
エコマップの書き方は決められておらず、いかにわかりやすく作成することが重要なポイントです。
しかし作成者の思いのままエコマップを書いてしまうと、エコマップを共有し介護サービスを提供する人々・事業者は、利用者の状態を的確に把握できなくなってしまいます。
介護サービスに関わる人々・事業者が、利用者を取り巻く人間関係を共有できるよう、一定のルールのもとにエコマップを作成することを、強くおすすめします。
今回紹介する記号や作成方法は一例ですので、線の種類や太さ、色を工夫し、わかりやすいエコマップを作成するよう心がけましょう。
その① 記号例
エコマップの記号例は以下の通りです。
【エコマップ 記号例】
※矢印が向く方向が働きかけの方向
参考サイトの内容もとに筆者が表を作成
【参考サイト:社会福祉法人 鳥取県社会福祉協議会 エコマップの記入方法について】
http://www.tottori-wel.or.jp/system/site/upload/live/383/atc_1462190306.pdf
上表の矢印は※に記載してあるように、働きかけの方向を示しています。
例えば介護支援専門員から要介護者へ矢印が向いていた場合、ケアマネージャーから利用者へ働きかけが行われていることを示しています。
利用者を取り巻く人間関係を、介護サービスに関わる人々・事業者が認識を共有できるよう、一定のルールのもとにエコマップを作成するようにしましょう。
その② 作成例
前の項目で紹介した記号例を用い、エコマップの作成例をご紹介します。
今回は文章で関係性を記したものを付け加えておきますので、文章とエコマップとで全体像の捉えやすさが、どのように変化するかをあわせて確認しましょう。
【利用者と社会資源の関係性】
- 家族関係
- 介護サービス
- 医療機関
要介護者:女性
主介護者:配偶者
子ども:2人(男女1名ずつ)
介護支援専門員:強い関係性
デイサービス事業所:強い関係性
訪問介護:弱い関係性
医師:普通の関係性
看護師:普通の関係性
【エコマップ作成例】
エコマップを作成したことにより、要介護者を取り巻く関係の全体像が把握しやすくなったのではないでしょうか。
まとめ
エコマップとは何かや必要性、その書き方を解説してきました。
エコマップについて、理解を深められたのではないでしょうか。
エコマップって何?書き方を解説しますをまとめると
- エコマップは要介護者と社会資源の関係性を記した相関図である。社会資源には介護サービスや医療機関だけでなく、家族・友人・近隣住民なども含まれる
- エコマップは家族・友人などの人間関係や、介護サービスとの関わり合いがどのようになっているかを、総括的に把握する助けとなる
- エコマップを作成する際の決まりはない。一定のルールのもと、線の種類や太さ、色合いなどを工夫し、自分だけでなく、第三者でも理解できるエコマップの作成を心がけたい
ということがあります。
エコマップを作成すれば、要介護者が置かれた環境を、より的確に把握する助けとなります。
しかしエコマップを作成することに注視してしまい、その活用がおろそかになっては、元も子もありません。
エコマップは利用者の状態を把握するツールであり、重要なことはエコマップによって得られた情報を適切に扱うことです。
要介護者と家族・友人との人間関係や、介護・医療サービスとの関わり合いの全体像を確認し、利用者の日々の生活がより豊かなものとなるよう援助を行いましょう。