介護支援専門員のアセスメントシートには、様々な書式があることをご存じでしょうか。
アセスメントシートには書式ごとに特徴があり、その持ち味を活かして業務を行いたいところです。
今回はアセスメントシートの種類や、その特徴を解説していきます。
アセスメントシートについて、興味がある方は参考になさってください。
そもそもアセスメントシートとは
アセスメントシートとは、利用者の情報をまとめた書類です。
利用者のバックボーンや人となり、希望しているサービスの内容が記してあります。
アセスメントシートをもとに作成を行うのが、ケアプランです。
原則的に施設や居宅に勤めるケアマネは、事業所が用意しているアセスメントシートを使用することになります。
しかしアセスメントシートについて理解を深めることにより、業務の効率化・業務を行う上での選択肢の増加につながるでしょう。
アセスメントシートには複数の様式があり、様式ごとに特徴が異なるため、利用者の状態に適したアセスメントシートを選択しなければなりません。
今回はアセスメントシートの中でも、5つの様式について解説していきます。
MDS‐HC方式
1つ目はMDS-HC方式です。
6つの領域を総合的に評価することが可能な、アセスメントシートとなっています。
MDS-HC方式で評価できる、6つの領域とは以下の通りです。
【MDS-HS方式の評価領域】
- 機能面
- 感覚面
- 精神面
- 健康問題
- ケアの管理
- 失禁の管理
MDS-HC方式の特徴は、施設・在宅のどちらでも活用できることとなっています。
メリット
MDS-HC方式のメリットは施設・在宅、両方の生活圏をサポートしていることです。
このことから在宅にいながら、施設サービスを利用している方に適したアセスメントシートとなっています。
デメリット
MDS-HC方式のデメリットは、あらかじめ利用者の情報を整理しなければならない点です。
また面接を円滑に進める技術が求められることも、デメリットとして挙げられます。
ケアマネージャーの資質・経験によっては、スムーズな聞き取りが難しいケースが考えられるでしょう。
包括的自立支援プログラム
2つ目は包括的自立支援プログラムです。
包括的自立支援プログラムは29.2%の介護老人保健施設、49.3%の介護老人福祉施設で導入している、アセスメントシートの様式となっています。
この使用率は、平成27年に厚労省によって行われた調査にて示され、調査結果の中で最も高い数値でした。
【参考サイト:厚生労働省 平成 27 年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査、P.10】
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000205427.pdf
メリット
包括的自立支援プログラムのメリットは、認定調査票とリンクしていることです。
また調査内容がプログラム化されており、ケアマネージャーの経験・資質によって、調査内容が変化するリスクの軽減が期待できます。
包括的自立支援プログラムは、利用者の状態をケアマネージャーの主観によらずに、評価できるアセスメントシートなのです。
デメリット
包括的自立支援プログラムのメリットは、施設で主に使用されている様式であることです。
このことは前の項目で紹介した、厚労省が行った調査結果からも確認できます。
そのため在宅で生活をしている方に使用する場合には、他の様式の方が適している場合があります。
日本介護福祉士会方式
3つ目は日本介護福祉士会方式です。
このアセスメントシートは居宅介護の活動によって得られた、実績を基に作られた様式となっています。
調査内容を7つの領域にわけて、聞き取りを行うのが特徴的です。
調査内容は以下の通りとなっています。
【日本介護福祉士会方式 調査内容】
- 衣
- 食
- 住
- 体の健康
- 心の健康
- 家族関係
- 社会関係
調査内容からも確認できるように、利用者の価値観や生活環境、考え方に重きを置かれています。
メリット
日本介護福祉士会方式のメリットは、チェック項目より記述項目が多く、利用者の状態を細かく把握することが可能である点です。
また具体的に記載する必要があり、ケアプランの作成に利用者も携わりやすいことも、メリットの1つとなっています。
デメリット
日本介護福祉士会方式のデメリットは、複数のシートから成り、記述する項目が多いということです。
アセスメントシートの作成に時間がかかり、業務量が増加する恐れがあります。
受け持ちの利用者が多く、限られた時間内でアセスメントシートの完成が求められる場合には、他の様式への変更を検討するのも選択肢の一つです。
日本訪問看護振興財団版方式
4つ目は日本訪問看護振興財団版方式です。
日本看護協会が1992年に作った「訪問看護用高齢者アセスメント用紙」と、アメリカの「施設内アセスメントとケアプラン表(MDS/PAPS)」を合わせ、日本版としてつくられた経緯があります。
日本訪問看護振興財団版方式は、「成人・高齢者用アセスメントとケアプラン」とも表現されます。
名前の通り高齢者だけでなく、成人であっても利用できるアセスメントシートの様式です。
メリット
当該様式のメリットは、チェック項目での記載方式を採用していることです。
ケアマネージャーによって、記載内容に差が発生しないような工夫が取られています。
もう1つのメリットとして、複数回の記載ができることが挙げられます。
そのため日本訪問看護振興財団版方式は、現在の状態に至るまでの流れを把握しやすい、アセスメントシートです。
デメリット
日本訪問看護振興財団版方式のデメリットは、調査内容が細かい点です。
調査内容が多岐にわたるため、アセスメントにかかる時間が増加するという、デメリットを抱えています。
ケアマネジメント実践記録様式
さいごがケアマネジメント実践記録様式です。
当該様式は日本社会福祉会が1995年に創設したケアマネジメント研究会によって、作成されたアセスメント様式となっています。
この様式は、在宅介護支援センターで収集された事例を検討し作られました。
社会福祉士だけでなく、他の職種であっても使用することを想定しているのが特徴的です。
これまで解説してきたアセスメント様式のうち、課題分析が最も細かく、かつ広い範囲である様式となっています。
記述する内容は本人・家族等の意見・要望と、アセスメント担当者が判断した問題に大別されます。
メリット
ケアマネジメント実践記録様式のメリットは、利用者の介護ニーズを総合的に判断するのに適している点です。
調査項目が多いので、実務だけでなく研修用の資料としても活用できます。
デメリット
他の様式にも見られたデメリットではありますが、アセスメントに要する時間が長く必要であることが、ケアマネジメント実践記録様式のデメリットとして挙げられます。
先ほど解説したように課題分析の範囲が広大、かつ細分化されていることが、アセスメントが長時間になる理由です。
まとめ
アセスメントシートの種類やその特徴を解説してきました。
アセスメントシートの種類について、理解を深められたのではないでしょうか。
介護支援専門員のアセスメントシートの種類は?それぞれの特徴をご紹介とまとめると
- アセスメントシートは書式によって特徴があり、その性質を踏まえて、業務に活用する必要がある
- アセスメントシートごとのメリットとして、施設サービスを利用している方に適していることや、調査内容を細かく記載できるなどが挙げられる
- 一方でデメリットは、アセスメントにかかる時間が増加してしまうことや、事業所によっては適していない様式が存在するなどである
ということがあります。
アセスメントシートの種類ごとの特徴を把握し、効果的に活用するのが支援を行う上での重要なポイントです。
日頃から行っている業務を見つめ直し、適したアセスメントシートを利用するようにしましょう。