介護が原因となり、好きなことに興味がなくなることや寝不足、食欲不振などの症状に悩まされるケースが見られます。
これらの症状が長期間続く場合、介護うつをわずらっていることが疑われます。
今回は介護うつにスポットを当てて、その原因や対策、相談窓口を解説していきます。
介護うつについて、興味がある方は参考になさってください。
近年介護うつが急上昇
介護うつとは介護が原因となり、発症するうつ状態を指す言葉です。
介護うつの具体的な症状には、食欲がなくなることや眠りが浅くなること、疲れがたまりやすいなどが挙げられます。
介護うつになってしまうと回復に時間を要するため、可能であれば症状がひどくなる前に必要な措置を講じたいところです。
誰しも介護うつになるリスクはあるものの、介護うつになりやすい人がいます。
はじめに介護うつになりやすい人について、確認していきましょう。
その① 介護うつになりやすい人
介護うつになりやすい人は責任感が強い方や、完全主義者などです。
責任感が強い方は目の前の問題を、自分だけで解決しようとしてしまい、その結果ストレスからの逃げ道を自分でふさいでしまう傾向にあります。
さらに責任感が強い方は他の人に頼るのが苦手である側面もあり、第三者の力を借りられず、ますます自分を窮地に追いやってしまいます。
一方で完全主義者は、自分が思い描いた計画通りに事が進まないとストレスを感じてしまいます。
慣れない介護で自分が思い描いた結果通りにいかず、その原因が自分にあると思い込んでしまい、最終的には介護うつに至ってしまうのです。
完璧主義者は自分が思い描いた計画を、第三者と共有できないと、よりストレスを感じてしまう傾向にあります。
その② 介護うつになる原因
介護うつになる原因は身体的、精神的、そして経済的な側面に大別されます。
はじめに解説するのは身体的側面についてです。
体を自分で動かせない人間に対して、入浴やトイレの手伝いをすると、身体的な負担が大きく発生します。
身体的に疲れ果ててしまい、そのことが介護うつの原因の1つとなります。
次に解説するのは精神的な側面です。
介護はいつ終わるか、誰にも予想することができません。
また要介護者が認知症を患っているケースでは、意思の疎通が困難になることや夜の徘徊などで、気が休まることなく毎日を過ごすことになります。
さらに認知症の症状に暴言・暴力が見られることから、精神的なストレスがより大きくなってしまうのです。
夫や子ども、親族などの協力が得られないと、自分一人が介護で苦労していて、誰も支えてくれないと孤独感が増してしまい、介護うつを発生させる精神的な要因の1つとなるでしょう。
さいごに開設するのは経済的な側面です。
介護を行うと、それまで必要としなかった物品の購入やサービスの利用が始まり、経済的な負担が増加します。
また介護に携わる人が自分以外いない場合、介護休業・介護離職を迫られるケースが見られます。
その結果収入が減少し、経済的な負担が大きくなる悪循環におちいってしまうのです。
【参考サイト:医療法人東横会 心療内科 精神科 たわらクリニック 介護者がなる「介護うつ」とは】
https://www.tawara-clinic.com/blog/004/
以上が介護うつになりやすい人とその原因についてです。
次の項目からは、介護うつにならないための心構えを確認していきましょう。
介護うつにならないための心構え
介護うつにならないために、日頃から心にとめておきたい心構えを4つ解説していきます。
その① 介護者も健康管理を意識しよう
1つ目は介護をする人の健康管理を意識することです。
健康でなければ、満足して介護をはじめとした日常生活を送ることはできません。
介護が始まると要介護者の健康状態に着目しがちですが、介護者の健康管理も介護を行う上での重要なポイントです。
介護者が健康不安になってしまえば、要介護者へのケアも十分に行えなくなってしまい、介護に関係する人たち全員に良い結果をもたらすことはないでしょう。
体調が思わしくないときには、早めに医療機関への受診を強くおすすめします。
その② ときにはストレスを表現しよう
2つ目の心構えは、時にはストレスを表現することです。
人は一見しただけでは、ストレスを感じているかどうか、判別することは困難です。
特に介護うつになりやすい人で紹介した、責任感が強い方は自分より他者を優先する傾向にあり、ストレスを表に出しにくい特徴があります。
ストレスを言葉や態度で示すだけでも、周りの人間へのサインとなり、状況が好転するきっかけとなることもあるでしょう。
人は心の内を表現しなければ、周りの人間には伝わらないということを胸に留めておきたいところです。
その③ 宿泊をともなう介護保険サービスを利用しよう
3つ目の心構えは、宿泊を伴う介護保険サービスを利用することです。
介護保険サービスには一定期間、施設に泊まり介護サービスを受けるものも存在します。
家族の中には、宿泊を伴う介護サービスの利用に抵抗があることが見られます。
介護を誰かに押し付けて、自分だけ楽しているのではないかと責めてしまうためです。
そもそも介護とは、介護のプロである介護士ですら重労働であり、身内であっても介護をし続けるのは現実的ではありません。
効果的に介護サービスを活用し、定期的にリフレッシュするよう心がけましょう。
その④ 自分のこころを理解しよう
さいごの心得は自分のこころを理解することです。
人は自分で思っているよりも、自分のこころのあり様を理解していません。
毎日の生活に疲れ切っていないか、趣味や好きなことに興味を向けられるかなど、定期的に自分のこころを理解するよう努めましょう。
家族や友人、知人などへ自分の様子が介護に携わる前と変わっていないか、確認するのも選択肢の一つです。
介護でストレスを感じた場合の相談窓口やカウンセリング先
さいごに解説するのは、介護でストレスを感じた時の相談窓口やカウンセリング先についてです。
介護うつの症状が酷くなる前に、余裕を持ってこれから紹介する相談窓口・カウンセリング先へ、問い合わせることを強くおすすめします。
介護うつの症状が進んでしまうと、相談窓口・カウンセリング先へ連絡する活力が失われてしまい、介護状況がより悪化することが予想されるためです。
その① 地域包括支援センター
1つ目は地域包括支援センターです。
地域包括支援センターは、地域に住む高齢者をサポートするために設置された施設となっています。
高齢者の支援以外にも、介護に関する相談ごとの受付を行っています。
地域包括支援センターへの相談内容は、漠然としていても問題ありません。
介護をしていて困っていることや、どのような生活を送れるようになりたいかなどが明らかであれば、相談がよりスムーズに行えます。
地域包括支援センターの連絡先は、インターネットもしくは自治体の介護保険相談窓口で確認可能です。
その② 自治体の介護保険相談窓口
2つ目は自治体の介護保険相談窓口です。
基本的には市区町村の役場内にある、介護保険担当課がそれに当たります。
介護保険の利用を検討している場合には、介護保険を利用する本人が住んでいる居住地の自治体へ相談するようにしましょう。
介護保険の制度上、家族ではなく本人が住んでいる自治体の役場へ、保険の申請を行うためです。
その③ 地域の社会福祉法人(高齢者)
3つ目は地域の社会福祉法人(高齢者)です。
社会福祉法人は特別養護老人ホーム、デイサービス、そしてショートステイなどの介護保険サービスの運営を行っています。
居宅介護支援事業所を併設している社会福祉法人もあり、その場合には介護保険サービスの利用に関するサポートを受けられるでしょう。
施設によっては相談窓口がない場合もありますので、そのようなケースではどこへ相談したらよいか聞き、次の相談窓口の手掛かりとしたいところです。
その④ いのちの電話
4つ目はいのちの電話です。
いのちの電話は、電話で悩みやつらい気持ちの相談に応じてくれます。
介護者の精神状態・想いについての相談窓口です。
全国に相談窓口があり、都道府県によっては24時間、相談の受付を行っています。
相談受付の時間は都道府県によって異なるため、いのちの電話を利用する際には前もって電話番号とともに、受付時間の確認を行いましょう。
【参考サイト:一般社団法人 日本いのちの電話連盟 全国のいのちの電話 ご案内】
https://www.inochinodenwa.org/lifeline.php
その⑤ 心療内科
5つ目は心療内科です。
介護うつそのものに対して、相談・ケアを行います。
心療内科は医療機関・医師との相性が、回復への重要な要素です。
実際に受診してみた結果、診療内容に不安を感じた時には、医療機関の変更を検討するのも選択肢の一つとなっています。
まとめ
介護うつになりやすい人や原因、介護うつにならないための心構えなどを解説してきました。
介護うつとその対策について、理解を深められたのではないでしょうか。
介護うつになる前の心構えは?相談窓口やカウンセリング先もご紹介をまとめると
- 介護うつになりやすい人は責任感が強い人や、完璧主義者である。身体的、精神的、そして経済的なストレスから介護うつになってしまう
- 介護者の健康に気を配るとともに、宿泊を伴う介護サービスを定期的に利用しながら、介護に携わる人たちのストレスの発散を行うとよい
- 地域包括支援センターや市区町村の介護保険担当課などに相談を行い、介護うつの症状がひどくなる前に介護環境の改善を図りたい
ということがあります。
介護に携わる人には誰しも、介護うつを患ってしまうリスクがあります。
定期的にストレスを発散し、介護についてわからないことや困ったことがあるときには、今回紹介した相談窓口へできるだけ早くおもむくよう心がけましょう。