「食べること」は人間にとって生きるために重要なことです。
高齢者にとっても食事の栄養改善は直接介護予防に繋がり、とても重要な役割を果たしています。
この記事では、高齢者の食事の重要性について解説します。
高齢者にとって食べることとは何か
高齢者にとって食べることとは何でしょうか?高齢者にとっては食べることは、ただ空腹を満たすだけのものではなく、さまざまな目的や効果があります。
高齢者にとっての食べることとは何かを説明します。
その① 社会参加に繋がる
高齢になると趣味や楽しみがなくなり、活動性も低くなってきます。
高齢者にとっては食べること自体が楽しみとなり、生きがいである場合も多いのです。
食べることが楽しみとなると、それに伴う買い物や食事作りを意欲的に行うようになり、結果として社会参加に繋がることとなります。
食事に関わる生活機能の回復のみでなく、高齢者の社会参加への意欲が向上するように支援することが重要です。
その② 生活の質を高めることができる
食べることは買い物、食事作りや後片付けといった一連の生活行為を伴います。
高齢者が食べることを維持するためには、生活行為を通じて日常の身体活動の維持・増大を図ることが重要です。
食べることに伴う生活行為には、高齢者と家族や近隣の人々とのコミュニケーションが伴います。
また、3食の食事を食べることにより、規則的な生活リズム、覚醒リズムを作ることに繋がります。
このように高齢者にとって食べることは様々な効果があり、生活の質を高めることができます。
その③ 生活機能の維持ができる
人間が生命を維持し日常の生活を営むには、タンパク質とエネルギーを十分に食事から摂取することが重要です。
高齢になると、口腔や摂食・嚥下の問題、発熱や病気、身近な人の死などのライフイベントによる食欲低下や、身体機能の低下、買い物や食事作りが困難になることなどにより食事摂取量が低下し、エネルギーやタンパク質が欠乏して低栄養状態に陥りやすくなります。
しっかりと食べることで低栄養状態を改善し、身体機能、生活機能、免疫機能全体の維持・向上に繋がります。
生活機能を維持するためには、まずは食べることが重要です。
栄養改善プログラムについて
栄養改善プログラムは現に栄養状態に問題のある高齢者やその恐れが高い高齢者が、要支援・要介護状態とならないよう、栄養状態の改善を図るとともに、「食べること」の場への参加を通じて家庭内や地域でのコミュニケーションの回復を図り、高齢者の生活機能の維持・向上と自己実現を支援するものです。
その① 栄養アセスメント
個別サービス計画を作成するために必要となる課題を把握するとともに、事業終了後の効果の評価に係る基準値を得るため、スクリーニングと事前アセスメントを行います。
また、個別サービス計画に基づくプログラム終了時に、管理栄養士等により事後アセスメントを行います。
内容はスクリーニング・事前アセスメントと同じです。
その② 個別サービス計画の説明と同意
計画の原案作成にあたっては、高齢者自身が自己実現を果たす一助となるようプログラム終了後に具体的に何を目指したいかなど、対象者のニーズを把握した上で、具体的な生活上の希望とそれを実現するための目標を設定します。
そして、そのために体重などの目標値をどのくらいにするか、何をどのくらい食べるようにするかを設定します。
計画案は計画内容、スケジュール、効果、リスク等について対象者にわかりやすく説明し、同意を得て計画として完成させます。
その③ 実施
特定高齢者及び一般高齢者を対象に、市町及び市町から委託を受けたもの(地域包括支援センター等)がこのプログラムを提供します。
プログラムの従事者は管理栄養士、看護職員等です。
実施期間は1クール6ヶ月を標準としていますが、市町では3ヶ月程度の実施が多いです。
提供するプログラムの構成について、まずは栄養改善に関する基礎的な知識を提供し、利用者に食生活の重要性について理解してもらい、栄養改善への意欲を促します。
そして次に、日常の食生活習慣を見直すきっかけとするため、生活記録表をもとに食生活の検証を行います。
記録表からは、バランスよく、まんべんなく食材を摂っているかなどの全体をチェックします。
最後に、栄養状態に合ったメニューを紹介し、食生活の改善を支援するとともに、簡単で美味しい料理や手間のかからない調理方法を紹介し、調理への意欲や興味を高めることを目的とします。
また、調理実習では「食べること」や「食事作り」の場を提供し、楽しく作って食べることにより、コミュニケーションの回復を図るきっかけ作りを行います。
まとめ
この記事では高齢者の食事の重要性、栄養改善について詳しく解説しました。
以下にこの記事の内容についてまとめました。
- 高齢者にとって食べることとは、①社会参加に繋がる、②生活の質を高めることができる、③生活機能の維持ができる、という効果があります。
- 栄養改善プログラムは現に栄養状態に問題のある高齢者やその恐れが高い高齢者が、要支援・要介護状態とならないよう、栄養状態の改善を図るとともに、「食べること」の場への参加を通じて家庭内や地域でのコミュニケーションの回復を図り、高齢者の生活機能の維持・向上と自己実現を支援するものです。
- 栄養改善プログラムでは、①栄養アセスメント、②個別サービス計画の説明と同意、③実施の順でプログラムを進めていきます。
独居の高齢者が増え孤食も増えています。
一人で食事をとると、食事の回数が少なくなったり、簡単なもので済ませたりすることが多くなります。
楽しくしっかりと食事をすることが高齢者にとって、社会参加や生活の質の向上、生活機能の維持などさまざまな効果をもたらします。