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低栄養を改善して介護予防に取り組もう!

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低栄養を改善して介護予防に取り組もう!

実は低栄養は高齢者に多く、低栄養の高齢者は介護状態になりやすいと考えられています。

この記事では、低栄養と介護予防について解説します。

そもそも低栄養とはなんだろう?

そもそも低栄養とはなんだろう?

低栄養とは、栄養障害の一種で、身体を動かすために必要なエネルギーや、筋肉、皮膚、内臓など体をつくるタンパク質などの栄養が不足している状態のことをいいます。

食が細くなりゆっくりと進んだり、病気で急速に進んだりします。

高齢者の場合は、食欲の低下や、噛む力が弱くなるなどの口腔機能の低下により食事が食べにくくなるといった理由から徐々に食事量が減っていくことが多いです。

低栄養は高齢者に多く、65歳以上の低栄養傾向の割合は、男性12.4%、女性20.7%となっています。

また、85歳以上では、男性17.2%、女性27.9%と、年齢が上がるにつれ増えています。

要介護高齢者においては20〜40%、入院中の高齢者においては30〜50%の割合で低栄養がみられています。

その① 低栄養の症状

低栄養の症状には以下のような症状があります。

  • 体重減少
  • 骨格筋の筋肉量や筋力の低下
  • 元気がない
  • 風邪など感染症にかかりやすく、治りにくい
  • 傷や褥瘡(じょくそう:床ずれ)が治りにくい
  • 下半身や腹部がむくみやすい
  • 脱水症状(食欲がない、口の中が乾いている、皮膚が乾燥し弾力がない、唾液に粘りがある)

その② 低栄養の原因

高齢者の食生活・食事内容は、身体的側面、社会的側面、精神・心理的側面など、様々な要因の影響を受けます。

低栄養はそれらの側面により、食欲低下や食事摂取量の減少、栄養が偏った食事に繋がることによって起こると考えられます。

食事量が減れば体力も減少するため、活動量も減りさらに食欲低下となり低栄養を招きます。

以下に低栄養の原因となるそれぞれの側面をまとめます。

<身体的側面>

筋力の低下や下肢の疼痛などから長い距離を歩いたり、重たいものを運ぶのが難しくなったり、億劫に感じたりします。

そのため、買い物に出かけても即席麺やパン類など軽いものを購入しがちです。

また、腰や膝の痛みなどから、調理のために長時間立つことに苦痛を感じるようになり調理を簡単にするため、調理済みの加工食品などで済ませたり、品数を減らしたり、1日の食事を3食から2食へ減らしたりします。

また、噛む力の衰えや味覚低下などの口腔機能の問題や、下痢・便秘など消化吸収機能の問題からも食欲が低下します。

<社会的側面>

独居や社会的孤立による閉じこもりや、過疎地域など交通手段に制限がある場合などから、買い物に出かける回数が少なくなります。

また、住まいから近くに生鮮食品店がないなどの理由から、腐りやすい生鮮食品の購入を控え、保存がしやすい菓子パンや加工食品、即席麺やレトルト食品などの購入が多くなる場合があります。

また、経済的に困窮している場合も、生鮮食品の購入を控えたり、食べる量を制限したり、食べる食品が偏ったりすることに繋がります。

<精神・心理的側面>

高齢者は、配偶者やペットとの死別による喪失体験から精神的ストレスを受け、食欲が低下する場合があります。

高齢者の喪失体験は、加齢に伴う身体的な衰えから以前できたことが出来なくなったといったことからも生じます。

この喪失体験が原因で、他の人との関わりを閉ざしてしまい、孤立感などから精神的ストレスにつながる場合もあります。

また、認知機能の低下により、買い物に出かけても同じ品物ばかり購入したり、味付けがおかしくなったり、作る料理が限られてきたりするなどといった問題が生じる場合もあります。

その③ 低栄養の診断

低栄養の国際的な診断基準には、以下のものがあります。

  • 意図せずに体重が5%以上減少
  • BMI(アジア)が70歳未満で18.5以下、70歳以上で20未満
  • 筋肉量減少

 
低栄養を確認する方法として、以下のものがあります。

  • 体重測定

 
体重の変化は、低栄養状態を早期に発見するために重要な記録です。

体重は週1回定期的に測定すると良いです。

体重が6ヶ月間に2〜3kg減少、または1〜6ヶ月間の体重現状率が3%以上である場合が、低栄養のリスクの目安です。

また、いつもの食事で1日に2kgも体重の増減がある場合は、むくみの可能性があります。
 

  • BMI

 
BMIは体格の指標ですが、栄養状態の指標としても利用できます。

BMIの計算式は  BMI=体重(kg)÷ 身長(m)2  です。

BMI値18.5未満は低栄養、21.5未満は低栄養リスクとされます。

BMI値20以下は、低栄養傾向とされ、要介護や総死亡リスクが統計的に高くなる値と言われています。

  • 血液検査

医療機関で行われる血液検査では血清アルブミン値が栄養状態の指標として用いられます。

血清アルブミンは、血液に含まれるタンパク質の一種で、食べ物由来のタンパク質の量が反映されます。

基準値は3.7〜5.5g/dlで、3.5g/dl未満は低栄養と判断されます。

ただし、血清アルブミン値は栄養以外の要因にも影響を受けるため、単独では栄養状態の判断には用いられません。

低栄養と介護予防の関係性について

低栄養と介護予防の関係性について

低栄養は介護予防とも関係性があります。

低栄養の中で目に見えてわかりやすいのは体重の減少です。

私たちの体は栄養が摂れない状態が続くと、自身の体の筋肉や脂肪を分解してエネルギーに変えようとします。

筋肉や脂肪が減ると皮膚の炎症や転倒リスクの増加に繋がります。

体重が減ると皮と骨の間でクッションの役割をしている筋肉や脂肪が減り、その結果皮膚の炎症が起きやすくなります。

皮膚の炎症が悪化すると、床ずれの原因にもなります。

体重が減り、筋肉が減った状態だと、立つこと・歩くことなどの運動機能が低下します。

運動機能が低下することで、寝たきりになりやすくなる、転倒のリスクが高まるなどが考えられます。

また、低栄養は体に必要な栄養素が不足し、骨の原料になるカルシウムも不足していることが多く、骨がもろくなって骨折のリスクも高まります。

このように低栄養は介護状態になるリスクが高く、逆に考えれば低栄養を防ぐことで介護予防に繋がると言えます。

低栄養にならないために

低栄養にならないために

介護予防のためには低栄養を予防することが大切だとわかりました。

低栄養にならないための対策を3つ紹介します。

その① 1日3食食べよう!

高齢者は買い物や調理が億劫になり、1日の食事の回数を3食から2食に減らす方がいます。

1回の食事で食べる量も少なくなるため、1日に3食しっかり食事をとらないと1日に必要なエネルギーやたんぱく質が不足します。

また規則正しい食事リズムは生活リズムを整えることにもなり、活動的になることで空腹感も感じられ、きちんと食事をとることに繋がります。

その② 食事を楽しもう!

独居の方は孤食になりがちですが、一人で食事をすると食べるものも適当に済ませたり、美味しく感じられず食欲がわかないこともあります。

家族や友人を誘って一緒に食事をする機会を作ったり、デイサービスなど地域支援事業に参加し、外出する機会をつくり誰かと一緒に食事を楽しむようにすると良いでしょう。

その③ バランスよく食べよう!

調理に時間がかからない菓子パンやカップラーメンや袋麺、レトルト食品や加工食品で食事を済ませてしまうことが増えます。

このような食事を続けていると、栄養が偏りがちになり、必要なタンパク質が摂取できなかったり、野菜不足になることが多いです。

肉、魚、卵、乳製品、大豆製品などタンパク質を多く含む食品を毎食おかずに1品入れるようにしましょう。

主食・主菜・副菜、汁物は多種多様な食品を取り入れ、バランスの良い食事を心がけるようにしましょう。
 

その④ 必要に応じて栄養食品の活用を!

栄養補助食品は毎日の食事だけでは補えない栄養素を補うために便利な食品です。

低栄養の方や、口腔機能の低下から固形物にて十分に栄養を摂取できない方にも栄養補助食品は役立ちます。

栄養補助食品にはゼリータイプやドリンクタイプがあり、味も甘いデザート感覚のものからさっぱりと食べられるものもあり、食べやすく工夫されています。

また、高カロリーのエネルギー補給するものや、タンパク質を補給するもの、ビタミンを補給するものなど、目的や用途に応じて種類が豊富にあります。

薬剤師や医師と相談し、適切なものを選びましょう。

低栄養を改善する方法

低栄養を改善する方法

低栄養の症状がある場合、早めに病院で検査を受けましょう。

低栄養と診断された場合は、すぐに食生活を見直す必要があります。

医師の指導に従い、「食事の頻度」、「時間」、「分量」、「栄養のバランス」に十分注意して食事を作りましょう。

食事のメニューは穀物をはじめ、乳製品や卵など高タンパクで高カロリーのものを中心に、一度にさまざまな栄養が摂れるように食材を細かく刻んで加えてください。

一度に多くの量が食べられない方の場合は、1日3食にこだわらず、一回の食事の量を減らし、その分食事の回数を増やします。

栄養補助食品も有効に使いましょう。

まとめ

まとめ

この記事では低栄養と介護予防について詳しく解説しました。以下にこの記事の内容についてまとめます。

  • 低栄養とは、栄養障害の一種で、身体を動かすために必要な栄養素が不足している状態のことをいいます。低栄養は高齢者に多く、要介護高齢者、入院中の高齢者においては割合が高くなっています。
  • 低栄養の症状は体重減少、筋力の低下、抵抗力の低下、脱水症状などがあり、診断には体重測定、血液検査が用いられます。低栄養の原因は身体的側面、社会的側面、精神・心理的側面など、様々な側面からなります。
  • 低栄養の状態になると筋肉や脂肪が減り、床ずれなど皮膚の炎症や転倒リスクの増加に繋がります。低栄養は介護状態になるリスクが高く、逆に考えれば低栄養を防ぐことで介護予防に繋がると言えます。
  • 低栄養にならないためには、①1日3食食べること、②食事を楽しむこと、③バランスよく食べること、④必要に応じて栄養食品を活用すること、が大切です。
  • 低栄養を改善するには、食生活を見直し、「食事の頻度」、「時間」、「分量」、「栄養のバランス」に注意して食事を作ることが重要です。

低栄養状態の高齢者は筋力の低下によって転倒のリスクが高くなり、栄養不足で骨がもろくなっているため骨折のリスクも高いです。

骨折などをきっけかに寝たきり状態になりやすく、合併症も起こしやすくなります。

このような悪循環にならないためにも、まずは栄養をしっかりと摂り低栄養状態にならないことが重要です。

食事を「3食楽しくバランスよく」食べることを心がけましょう。

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